豪鬼メモ

抜山蓋世

ブロンプトンの外装3速化の具体的手順

ブロンプトンを外装3速化するための具体的な手順をまとめてみた。外装2速モデルを対象としているが、内装3速と内外装6速モデルでも似た手順になるはずだ。自転車店に頼まなくても自分で完結でき、自分なりに自由にカスタマイズできるのが魅力だ。

作業の概要

外装3速化で必要となる手順は以下のものだ。前提として、ホイールの脱着やチェーンの脱着やホイールからのタイヤの脱着を行う技術と経験は持っているものとする。

  • リアハブを3速対応にする。
  • リアハブにスプロケットを組み付ける。
  • ディレイラーテンショナーを3速対応にする。
  • チェーンを換装して長さを調節する
  • シフターを3速対応にする。

外装3速化にあたって特殊で高価な工具は特に必要ないが、スプロケットの交換のためのロックリング回しは必要になる。シフターの加工に彫刻刀と丸やすりも使う。アーレンキーのセットとモンキースパナとラジオペンチくらいは誰でも持っているだろう。工具を除けば、費用は15,000円くらいで済む。

リアハブの3速対応

ブロンプトン外装2速モデルの純正ホイールのリアハブ(フリーハブ)は、シマノの9スプライン方式のスプロケットが組み付けられるが、幅が狭いのでスプロケット2枚しかつけられない。よって、そのままだと3速化できない。その対策としては、以下の方法がある。

  • 純正フリーハブの台座を電動ルーターで削る。
  • 純正フリーハブのフリーボディだけを換装する。
  • 純正フリーハブに付くカセットスプロケットに換装する。
  • ホイールごと換装する。

台座を削る方法は、結構な手間と技術が必要なので、ここでは触れない。フリーボディだけを換装する方法は、以下の製品を買えば簡単にできる。費用は65ドル(9千〜1万円)だ。
www.brommieplus.com

純正フリーハブの幅に3枚のスプロケットを何とか入れ込むカセットスプロケットがある。スプロケットの組み合わせは制限されるが、費用が57ドル(8千〜9千円)で済む。
bikegang.ecwid.com

私はホイールごと換装した。Cospaiiという会社のホイールの前後セットを送料込みで30800円で買った。値段は張るが、軽量化と機械抵抗低減もできるのでお勧めだ。
mikio.hatenablog.com

ハブやハブ付きホイールを新調する場合、シマノの9スプライン(9溝)かつロックリング方式のものを選ぶと良い。ロックリング方式だと、シマノカセットスプロケットをバラして組み付けられ、トップギアの11Tや12Tをそのまま使えるからだ。ブロンプトン用として売られているサードーパーティ製のホイールはほとんどそれに該当する。ハブを選ぶにあたっては、フロントのエンド幅は74mm、リアのエンド幅は112mmのものを選ぶ必要がある。また、ホイールを選ぶにあたっては、直径が16インチ ETRTO 349であり、リム内幅が16mmから21mmくらい(純正は18mm)のものを選ぶ必要がある。

リアハブにスプロケットを組み付ける

シマノの11速用スプロケットに互換するスプロケットを3枚買うべし。おすすめは、11T、15T、21Tの3枚だ。11速用のカセットスプロケットを買ってバラしても良いし、バラ売りのを買っても良い。以下のものをバラせば、11-12-13-14-15-17-19-21-23-25-28Tとスペーサが一気に手に入る。分解するにはポンチや釘で留め具を打ち抜けば良い。

しかし、AliExpressでバラ売りのスプロケットを買った方が安い。1枚700円くらいだ。あまり精密な部品ではないので、どこのを買っても性能は同じだろう。

バラ売りで買った場合、スペーサも必要になる。Cospaiiのホイールでは11速用の2.18mmスペーサ4枚と1mmスペーサ1枚を使った。ハブの仕様によるので、事前に何が必要かは言えない。ハブのスプライン部分の長さから概算を出してとりあえず買ってみて、足りなかったら買い足せば良い。

ハブがロックリング方式の場合、ロックリングと工具も必要になる。これらも安いのでOK。

ロックリング方式の場合、スプロケットを取り付ける際には、上からロックリング、トップギア(スペーサ付き)、ミドルギア、2.18mmスペーサ、ローギアの順になり、その下に嵩上げするためのスペーサが必要になる。私は1mmスペーサ1枚と2.18mmスペーサ3枚を嵩上げに使った。1mmスペーサの代わりに純正のスポークプロテクターを使っても良い。

ところで、シマノ11速の仕様上はスプロケットの間は2.14mmであることになっているので、スペーサが2.18mmなのは変な気もする。しかし、スペーサは樹脂なのでロックリングを締め付けると縮むために、2.18mmでも問題ない。言い換えると、ロックリングがスペーサを締め付ける程度の嵩になるようにスペーサを積み上げることが目標になる。とりあえず2.18mmを4枚と1mmを1枚買っておいて、嵩が多過ぎてロックリングが浮くようであれば2.18mmのいくつかを2mmや1.85mmに変えて、嵩が不足してロックリングで締め付けてもガタがあるようであれば2.18mmのいくつかを2.35mmに変えることになるだろう。微調整が必要であれば紙やすりで削っても良いし、文具の下敷きとかの適当な樹脂シートを同じ形に切って挟んでも良いだろう。

スプロケットの構成は自由に変えられる。11-15-21の代わりに、よりクロスレシオの11-14-18にしてもいいし、よりワイドレシオの11-16-23にしてもいい。12-15-19とかでもいい。なお、フレームとのクリアランスの関係で、スプロケットの大きさには制限がある。私の個体ではミドルは17Tまでで、ローは23Tまでだ。それらをつけるとクリアランスが本当にギリギリになる。

ディレイラーテンショナーを3速対応にする

外装2速の純正のディレイラーテンショナーでは、ディレイラープーリーとテンショナープーリーの双方とも、移動幅が2速分しかない。ただし、ディレイラープーリーを動かすプッシャーにはギリギリ3速分の移動幅がある。よって、各プーリーを支えるネジを長くしてやれば、3速対応できる。両方とも5mm長くすれば良いはずだ。プーリーを支えるローラーパイプはプーリーと一緒に勝手にスライドしてくれるので、そのままで良い。

私の場合、ディレイラーテンショナーをLiteProのものに換装している。プーリーとローラーパイプは純正のものを再利用して、ネジだけ変えた。M4径の35mmネジをディレイラープーリー用に、M4径の45mmのネジをテンショナープーリー用に使うのが良い。それらはホームセンターのネジバラ売りコーナーで買える。

装着すると以下のような感じになる。なお、テンショナープーリーのローラーパイプの可動域を調節するために、M4のボルト2個とやワッシャー3枚を使っている。これはやらなくても大丈夫だとは思うが、ローラーパイプとプーリーがずれすぎるリスクを減らすためと、ネジがチェーンの張力で曲がるのを防ぐためにやっている。

チェーンを換装して長さを調節する

外装3速化するには11速用のスプロケットを使うわけだが、そうするとチェーンは11速用のものに換装する必要がある。シマノのCN-HG601が3000円弱で入手できる。アンプルピン方式とクイックリンク方式が選べるが、クイックリンクにしておくと便利だ。

チェーンカッターを持っていなければ、買う必要がある。どこの製品でも良い。

チェーンの長さを決めて切る。その際に、最大のギアできちんと回る長さにすべきだ。フロントダブルにしている場合にはチェーンをアウターチェーンリング(大きい方)にかける。スプロケットはロー(1速=最大のもの)にかける。その状態で、以下の写真のように、ディレイラープーリーとテンショナープーリーが1cmくらい離れている状態になるのが望ましい。

チェーンは長過ぎても短過ぎてもいけない。長過ぎると張力が低くなって走行中の振動でチェーン外れが起きやすくなるし、折り畳んだ際にチェーンが弛んで絡まってしまうことがある。少なくとも、折り畳んだ状態で以下のようにテンショナーがチェーンを引っ張ってチェーン同士が接触しないようにすべきだ。また、フロントダブルの場合、インナートップで最も小さいギアの組み合わせでもテンショナーがチェーンを引っ張れることを確認すべきだ。フロントダブルで折り畳む際にはインナーにチェーンが掛けてあると必ずチェーンが絡むので、必ずアウターで折り畳むと決めて、インナーでの折り畳み性能は考えなくてよい。

チェーンが短すぎると、ディレイラープーリーとテンショナープーリーが近くなり過ぎて、その間をチェーンがうまく通れなくなる。また、チェーンの張力が強いほど、チェーンのインナーリンクとアウターリンクの間の圧力が高まるため、抵抗が大きくなる。よって、走行中のチェーン外れと折り畳み時のチェーン接触の問題が起きない範囲で、できるだけチェーンを長くして張力を低くしたい。最適なバランスは個々人の趣向に委ねられる。私の今回の設定では、アウタートップでのプーリーの配置は以下のようになる。アウタートップを使っている時間が最も長いので、そこでの張力が適切であることが私にとって最も重要だ。

クイックリンクのチェーンだと、クイックリンクを引っ掛けるだけで締め込まなければ、また外してやり直せる。ちょっと長めに切った状態でチェーンをクイックリンクで軽く引っ掛けて繋げてみて、仮に装着して回してみると良い。それで長すぎれば2リンク分だけ詰めて、また試してみる。それで所望の長さになったら、クイックリンクを本締めすれば良い。クイックリンクを閉めるための専用の工具があるのだが、ペダルを踏んでチェーンに張力をかけるだけでも締め込める。クイックリンクがチェーン上側でチェーンリングとスプロケットの間にある状態で、ブレーキをかけつつペダルに体重をかければ良い。

チェーンの長さと張力に相関があるのは、チェーンテンショナーがバネを使っているからという機械的都合に過ぎない。理想的には、チェーンの長さを最適化にした上で、張力も別個に調整して最適化すべきだ。私の場合、チェーンの長さを最適化した結果、ちょっと張力が上がり過ぎた嫌いがある。バネを弱めることで張力を下げることができるはずなので、それについては追って対処するつもりだ。

シフターを3速対応にする

(追記:以降の手順は2017年モデル以降のシフターを使った手順に置き換えるのを推奨)
スプロケットとチェーンを3速化したら、シフターは2速設定のままで、まずはトップとローの間で変速ができるようにプッシャーを調整する。プッシャーの付け根にある二つのボルトを回して、外側(トップ側)の押し幅と内側(ロー側)への押し幅を変えるのだ。3速化した場合、双方ともほぼ最大の押し幅になるだろう。理想的には、変速が完了してペダルを回している際にプッシャーの壁とプーリーの壁が接していないことが望ましい。接していれば摩擦抵抗が生じるからだ。

シフターの中身を見てみよう。アーレンキーでネジ1本を回せば簡単に蓋が開く。内部にはケーブルの根本をひっかける溝が4本あって、それでケーブルの引き具合を微調整できるようになっている。元来どの溝にケーブルの根本がひっかけてあったかを覚えておきたいので、最初にシフターを開く時はケーブルを指で押さえながらやるといい。

外装2速の純正シフターは2段のインデックス方式だ。トップの位置ではレバーが完全にバネに押されている状態で、ローの位置では内部の棒が切り込みに引っかかって留まるようになっている。よって、ミドルの位置に切り込みを入れれば、3段のインデックス方式に改造することができる。

新しく作るべき切り込みの位置や形は、Ti Partsという会社から出ているBTP-27AまたはBTP-28Aという3速化キットに同梱されているシフタープレートを見るとよくわかる。

プレートを削る作業は、ワイヤーと繋げたでもできる。外してもできるだろうが、そうすると長さ調整をやり直すのが面倒なので、繋げたままの方が無難だ。元来あるロー用の凹みから2mmほどずれた位置に凹みを作るのだが、直径1.5mm程度の半円形の凹みにしたい。そのためには、彫刻刀の三角刀の90度の山を壁側に向けて45度の坂を2つ作ってから、細い丸型やすりで形を整える。この凹みにも最適な位置や形状があるはずだが、微妙な調整をするのは正直言って難しい。とりあえずミドルに変速できる位置にさえなっていれば良しとしよう。彫刻刀と丸やすりはダイソーの110円ので良い。三角刀は上から打ち込むので、木槌や金槌もあった方がいい。スパナとかで代用してもいいけど。

なお、切れ込みを入れる作業は、失敗し得る。失敗すると、シフターが駄目になるので、別のシフターを買わねばならない。上述のBTA-27A等を買うという手もあるが、絶番になっている。よって、作業には慎重を期すべきだ。削り過ぎないのがコツで、削って取り付けて変速させてみてという繰り返しの中で詰めていった方がよい。また、切れ込みを入れる作業に電動ルータを使ってはならない。樹脂を電動ルータで削ると熱で溶けてしまうからだ。私はそれで失敗しかけたが、早々に気づいて止めて、三角刀と丸型やすりでなんとか復旧させられた。

もし結果の挙動が気に入らなければ、フリクション式のシフターを導入するつもりだった。それならシフターの調整は不要だからだ。その代わりに変速する度にレバーの角度を微調整することになる。しかし、3速の場合、トップとローはレバーを振り切って倒せば良く、その場合のプッシャーの角度はプッシャー側のボルトで調整できる。ミドルに変速する際にはレバーを一定範囲で止めることが求められるが、インデックス方式でもミドルに変速する際には力加減が求められるので、難易度はさほど変わらない。

最終的なプッシャーの挙動を確認する。上下逆の写真だが、トップとミドルとローの各々で、変速が完了した状態で、プッシャーの壁がプーリーとギリギリ接していない状態であることが確認できる。変速が適切にできて、壁とプッシャーの接触がない状態が実現できれば、完全勝利だ。



内装3速や内外装6速を外装3速化する際には、おそらく内装3速用のシフターを転用できると思う。内装3速の場合はプッシャーとディレイラーテンショナーを導入してワイヤーを張る作業が必要になるだろう。内外装6速の場合は外装2速のシフターと内装3速のシフターを入れ替えることになるだろう。それらの方法を私は知らないが、ネット上の情報だけでも何とかなりそうな気はする。

2速の場合はアウタートップとインナーローのチェーンラインがそれぞれ車体中心と平行だったが、3速化すると、全てのギアの組み合わせで斜めになる。私はアウタートップを最もよく使うので、アウタートップが最も平行に近くなるように、アウターチェーンリングに1mmスペーサを噛ませて少し外側に寄せた。それでもまだ多少斜めだが、アウタートップで完全に平行にするとアウターミドルやアウターローのチェーンラインの角度が増すので、トレードオフだ。1mmくらいがちょうど良いだろう。インナーはトップとミドルとローを満遍なく使うので、ローに寄せることはしない。

実走

3速化したブロンプトンで各所を走ってきた。平坦ではフロントはアウターの楕円52Tのみを使い、そしてトップの11Tでほとんどの区間を走ることとなる。この組み合わせは2速の時でも同じなので、乗り味は同じだ。強いて言えば、チェーンの張力を上げた結果、若干抵抗が上がった。3速化するとローの大きいスプロケットに合わせてチェーンが長くなって張力が低くなるのが普通だが、私の場合、以前の設定でチェーンが緩過ぎてたまにチェーン落ちするくらいだったので、今回ギリギリまで詰めた結果としてこうなった。これは癪なので、バネを弱くすることで対応した。その件については別の記事でまとめる。

ミドルへの変速操作は、ちょっと慣れが必要である。トップからミドルにする時も、ローからミドルにする時も、2速の時の勢いでレバーを動かすと、ミドルを通り越して一気にローやトップに行ってしまう。ミドルに入れたい時には、あたかもフリクション式シフターであるかのように、そろーっとレバーを押し引きすべきだ。ゆっくり押し引きしていると、音や足の感触でミドルに切り替わったことが分かるので、そこで操作を止める。インデックス式なので、その状態で放っておけばレバーは最適な位置に収束し、それに応じてプッシャーもプーリーの左右の壁に触れない最適な位置になる。

ミドルは15Tだが、正直言ってまだ慣れない。今までずっと11Tと18Tのワイドレシオで走ってきて、多少の坂なら11Tのダンシングで済ませて、急坂でのみ18Tを出すようにしていた。今までトップのダンシングを必要としていたような坂でミドルを使うべきことは分かっているのだが、坂になると脊髄反射的にダンシングしてしまって、ミドルの出番がなかなかない。なので、しばらくミドル主体で走って感覚を矯正しているところだ。ミドルで高ケイデンス気味に漕ぐのを基本として、たまにトップで速度を伸ばしたり、ミドルで対応できない坂があればローに頼ったりする運用だ。トップ主体の運用よりは速度は落ちるが、その分だけ楽なので、長く走れる。

長野の家の近くに軽井沢から上田まで抜ける浅間サンラインという坂の多い幹線道路があってそこを良く走るのだが、それくらいであればミドルだけで走り抜けられる。特に秋冬は速度を上げると寒いので、平坦はゆっくり漕いで、登りは頑張らずに漕ぐことで、外出の苦労が緩和される。トレーニングを念頭に置くならトップ主体の方が良いが、日常生活の足としてはミドル主体が選択できることは嬉しいことだ。

ローの21Tは新鮮だ。従来のローは18Tで、それもずいぶんと軽いギアだったが、それに輪をかけて21Tは軽い。アウターローで大抵の峠は走破できそうだ。街乗りではミドルのでダンシングすれば大抵の坂は登れてしまうのだが、そこを堪えてローを出すように癖付けたい。街乗りでローを出すと多くの場合で高ケイデンスになるが、乳酸を溜めずに坂を乗り切るにはその方が良い。ブロンプトンのアウターローの52/21=2.47という変速比は700x25cロードバイクの1.56に相当し、それはコンパクトクランクのインナーの34/22=1.54よりも軽い。ダンシングすれば勾配20%の富士見坂でも踏破できたので、街乗りで出会う坂で困ることはまずないだろう。

前回の記事で、フロントダブルのインナーチェーンリングにSugino Super HIll Climbの32Tを導入した話を紹介した。それと今回の3速化を組み合わせると、従前に比して圧倒的な登坂能力が得られる。
mikio.hatenablog.com

特筆すべきは、インナーローの32/21=1.52という変速比だ。これは700x25cロードバイクの0.92に相当し、コンパクトクランクのインナーの34/36=0.94の超乙女ギアよりも軽い。1.0を下回る超乙女ギアは、素人でも暗峠を含む最難関も越えられると言われるチート級の装備だ。今回の3速化でそれに相当する装備を獲得したので、理屈の上では私とブロンプトンの組み合わせでも国中の峠を走破できることになる。試しに、最大勾配29%のまぼろし坂を登ってみたところ、シッティングのみで難無く越えられた。アウターローでもダンシングすればギリギリ行けたが、チェーンが切れそうなほどトルクをかける羽目になった。

なぜシッティングに拘るのかと言うと、シッティングで超えられないならば持続可能でないからだ。「坂」ではなく「峠」を冠する道は、短くて3kmくらい、長くて20kmくらいの道のりがある。それを走り切るには、無酸素運動で頑張って進む方法では駄目だ。無酸素運動有酸素運動の3倍の力を出せるが、本気の無酸素運動は1分も持たないので、峠でそれに頼るわけにはいかない。1時間以上続けても大丈夫な強度の有酸素運動だけで走らねばならない。ダンシングを1時間以上続けるのは不可能ではないにしても実践的ではないので、多くの行程をシッティングで走れる運動強度に抑えるべきだ。ゆえに、ある坂をシッティングで無理なく走れないならば、その勾配の峠を越えることはできないと考える。さて、暗峠は、距離2.63km、平均勾配15.1%、獲得標高397mらしい。今回得たインナーローを使えば勾配15%程度なら喋りながら走れるので、おそらく暗峠も走破できると思う。まあ実際にやってみないとわからないし、いつ行けるかどうかもわからんけども。

アウターミドル主体の訓練期間が終わったら、アウタートップ主体の運用に戻す予定だ。低ケイデンス高トルクの方が筋肉への刺激が強いから足腰の維持強化に良いし、直立気味の乗車姿勢のブロンプトンでも尻が痛くなりにくいし、頑張るつもりがなくても頑張って速く走ってしまうからだ。2速(フロントダブルと掛けると4速)の時は、アウタートップで95%の行程を走って、アウターローで4%を走って、インナーローで残り1%を走るような使い分けだったが、3速化(フロントダブルと掛けると6速化)した今では、もうちょい細かく変速することになるだろう。アウタートップ72%、アウターミドル16%、アウターロー8%、インナートップ1%、インナーミドル1%、インナーロー2%といったところか。要は、アウターミドルがアウタートップの一部を食って楽できるようになり、飛び道具のインナーで細かく変速できるようになって実用性が上がったということだ。もっとクロスレシオにすればアウタートップ以外のギア組の出番が増えるのだが、インナーに切り替えるのが面倒なのが悩ましい。総合的に考えると、現状の52-32Tと11-15-21Tの組み合わせか、もしくはリアを11-14-18Tにするくらいが最適だろう。

3速化した経緯

以下の文章は、3速化の手順をまとめるまでの調査や試行錯誤と、3速化でどのような恩恵があるかについて、徒然なるままに綴ったものだ。暇な人だけお読みいただきたい。

私は外装2速のブロンプトンスプロケットを11T/18Tにワイドレシオ化し、さらにチェーンリングを楕円52T/楕円36Tのフロントダブルにして運用していた。
mikio.hatenablog.com
mikio.hatenablog.com

スプロケットの11Tと18Tにはそれぞれ無理があった。11Tを純正ホイールに付けるには鍔付きスプロケットの鍔を削る必要があるが、耐久力が著しく落ちるので、5000kmも走ると割れてしまうし、運が悪いと作った初日に割れてしまう。18Tはフレームに干渉するのでスプロケット刃先を削る必要があるが、摩耗に弱くなるので5000kmも走ると歯飛びが発生するようになる。保守性の観点でこれは良くない。よって、11Tに関してはロックリング式のハブを持つCospaiiのホイールに換装して対応した。また、18Tは歯を削るのではなくフレームを削るという手もあったが、それは後戻りできなくなるので思い止まった。

父のいる長野東部に東京から行くには必ず1000m級の峠を越える必要がある。特に最短距離の碓氷バイパスで18Tが使えないのはちょっと困る。インナーチェーンリングだと軽すぎるが、アウターチェーンリングと17Tの組み合わせだとちょっと重くて疲れるのだ。そこで、3速化を決断した。スプロケットを増やすとロー側のスプロケットは内側に引っ込むので、フレームとの干渉が緩和され、より大きなチェーンリングが付けられるようになる。

Cospaiiのホイールのハブは6速まで対応できるので、あとはシフターの3速化だけが問題となる。調べたところ、外装2速の純正シフターに切り込みを入れることで比較的簡単に3速化できることが分かった。私の状況では、11速用スプロケットと11速用チェーンだけ買い足せば、3速化に必要な部品は揃う。あとは手を動かすだけだ。

変速比の検討

変速の自由度が欲しいなら、そもそも内外装6速モデルを買えば良かったという話もある。6速モデルではクランク1周で1速が2.64m進み、2速が3.25m、3速が4.14m、4速が5.09、5速が6.49mが6速が7.98mとのことなので、タイヤ外周長1.33mで割ると、変速比は1速が1.98、2速は2.44、3速は3.11、4速は3.82、5速は4.87、6速は6.00ということになる。5速と6速はそもそも変速比が大きすぎるし、さらに2速と3速以外は遊星ギアによって機械効率が落ちるので、重すぎて踏めない人が多いだろう。一方で、1速と2速は峠道や激坂を攻める変速比だが、重くて遅い内装ギアでヒルクライムをしたい人もあまりいないだろう。そうすると3速と4速を主に使うことになるが、3.11と3.82は平地巡行には軽すぎるし、急坂を登るには重すぎる。よって、6速モデルよりは外装2速モデルの方が実用的だ。変速比は1速(54T/16T)が3.37、2速(54T/12T)が4.50であり、平地巡行と緩斜面に対応できて使いやすい。急坂は登れないが、その時は降りて押し歩きすればいい。

3速構成は実用的だ。平地巡行・緩斜面・急斜面みたいな使い分けができる。外装2速の構成に21Tの変速比2.57を足せば、勾配5%を超える坂でもシッティングのまま登れる。10%を超えるような急坂でもダンシングすれば登れる。それ以上の勾配の激坂だったり、やたら長い坂道だったりすると厳しいが、街乗りでそのような状況になることはまずない。

私はチェーンリングを52Tと32Tのフロントダブル構成にしているので、その上でスプロケットを11T-15T-21Tの3速にして、掛け算で6速を実現する。変速比や速度は以下のようになる。

F歯数 R歯数 変速比 1周進行 50rpm速度 70rpm速度 90rpm速度
outer top 52T 11T 4.73 6.29m 18.86km/h 26.41km/h 33.95km/h
outer middle 52T 15T 3.47 4.61m 13.83km/h 19.36km/h 24.90km/h
outer low 52T 21T 2.48 3.29m 9.88km/h 13.83km/h 17.78km/h
inner top 32T 11T 2.91 3.87m 11.61km/h 16.25km/h 20.89km/h
inner middle 32T 15T 2.13 2.84m 8.51km/h 11.92km/h 15.32km/h
inner low 32T 21T 1.52 2.03m 6.08km/h 8.51km/h 10.94km/h

11Tと15Tの比は1:1.36で、15Tと21Tの比は1:1.40なので、ワイドレシオの範疇ではあるが、均整が取れている。純正2速の12Tと16Tの比率1.33と同じくらいで済んでいるので、変速ショックは少ないと言える。従来は11T-18Tの構成で乗っていて、その比は1:1.63もあったので、それよりは遥かにマシだ。レース等でケイデンスを一定に保ちたいならもっとクロスレシオの方が良いのだろうが、街乗りやロングライドでは1:1.4で問題ないだろう。

アウターチェーンリングはO.Symetric 52Tで、形状が楕円(非真円)であるおかげでケイデンスの適用範囲が広いのが気に入っている。ワイドレシオのスプロケットとの相性がとても良い。私は基本的にアウタートップばかり使うが、70rpmの平地巡行で26.41km/hで走れるのがとても気持ちが良い。頑張って回して90rpmにすれば33.95km/h出るので、街中でクロスバイク勢や電動アシストバイク勢に負けることは稀だ。めちゃめちゃ頑張って110rpmにすれば41.15km/h出ることになるが、疲れるし、空気抵抗が増すだけ損なので、まずやらない。それ以上重いギアをつけても私の脚力では回しきれないので、変速比4.73が私には最適だ。アウタートップでも勾配8%くらいの坂ならダンシングすれば乗り切れるので、都会ではアウタートップ縛りで生活できる。シッティングで楽に走る場合、勾配5%くらいの緩斜面でもアウターミドルに切り替えるが、70rpmで19.36km/hくらい出るので丁度良い。それ以上の急坂ではアウターローに切り替えるが、その50rpmで9.88km/hは徐行速度の領域であり、大抵の峠はアウターローで登り切れると言える。つまり、山奥に住んでいてもアウターだけ何とかなるのが楕円52Tの強みだ。

インナーチェーンリングはO.Symetricの36TとSugino Super Hill Climbの32Tを使い分けている。両者とも楕円(非真円)で、同じくケイデンスの適用範囲が広い利点があるが、特に後者の32Tという小ささは珍しい。ブロンプトンの32T/21Tの変速比1.52は700*25Cのロードバイクの0.95に相当する軽さだ。インナーチェーンリングは実際のところほとんど使わないのだが、ふじあざみラインやら暗峠やらの超難関コースでも走破できる登坂性能が欲しくて32Tを選んだ。36Tや32Tをお守りとして備えておくことで、旅程を組むのに難所を避ける必要がなくなり、旅の自由度が上がる。というか、この設定は暗峠都道201号のためにある。それらを攻略せねば、「ブロンプトンなら(オンロードの公道なら)どこでも行ける」と主張できなくなるからだ。

どんな峠でも走破したい旅路では上述のワイドレシオが適切だが、普段の街乗りではもう少しクロスレシオ気味の設定の方が使いやすい。具体的には、インナーチェーンリングは36Tにして、スプロケットは11T-14T-18Tにする。トップの11Tは同じなのでアウターローでの平地巡行が使いやすい。ミドルの14Tは少し高速化してアウターミドルでちょっとした坂や逆風時に使いやすい。ローの18Tはアウターローでも街乗りでのほとんどの坂を難なく登れる変速比だ。インナーを使えばインナーローの36T/18Tで渋峠や乗鞍くらいなら行ける。要するに、暗峠都道201号のような例外を除けば、インナーチェーンリングは36Tで、ローのスプロケットは18Tで十分だ。

チェーンとスプロケットの互換性

外装2速モデルでは、シマノの8速(6速から8速共通)用チェーンと9速用チェーンの両方が使える。丈夫で安いのは8速用チェーンの方だが、軽いのは9速用チェーンの方なので、どちらを使うかは好みの問題だ。私は8速用を使っていた。外装3速化では11速用スプロケットを使うので、チェーンも11速用を使うのが普通だが、シマノの11速用スプロケットには実は10速用チェーンも使えるらしく、その旨の報告はネット上に散見される。しかし、それを鵜呑みにせず、仕様についてしっかり確認しておくべきだ。ピッチ(チェーンのコマ間の距離)は全て12.7mmで共通なので、スプロケットとそのスペーサの厚みと、チェーンの外幅(アウターリンクの外壁に突き出るピンの外側の間の距離)と内幅(インナーリンク内壁の内側の間の距離)を把握する。ピンのアウターリンクからの出っ張りを0.1mmとすると、その2倍を外幅から引いて内幅との差を4で割ると、チェーンの壁の厚みの概算が出せる。

スプロケ厚み スペーサ厚み チェーン外幅 チェーン内幅 チェーン壁厚
8速 1.80mm 3.00mm 7.10mm 2.40mm 1.13mm
9速 1.78mm 2.56mm 6.60mm 2.20mm 1.04mm
10速 1.60mm 2.35mm 5.88mm 2.20mm 0.87mm
11速 1.60mm 2.14mm 5.62mm 2.20mm 0.80mm

外装3速化で11速用スプロケットを使わねばならないのは、外装2速モデル純正のチェーンプッシャーとディレイラーの可動域の制限から来ている。つまり、8速スプロケット2枚とスペーサ1枚の合計である1.80*2+3*1 = 6.60mmくらいは最低でも動くということだ。8速用スプロケットのまま3速化すると1.80*3+3*2 = 11.4mmの可動域が必要になるが、それは無理だ。11速用スプロケットで3速化すると1.60*3+2.14*2 = 9.08mmの可動域が必要になり、それはギリギリ何とかなる。

スプロケットとチェーンの互換性は、以下のモデルで考えると分かりやすい。理想的なチェーンラインを想定すると、通常走行時には、チェーンの中心とスプロケットの中心が揃うことになる。その場合、AよりもBが小さければ良い。この条件は必須であり、これが達成されていないとまともにチェーンがかからない。Aはスプロケットの幅の半分にスペーサの厚みを足した値になる。Bはチェーン外幅の半分の値になる。

加えて、チェーンラインが斜めになった場合も考えるべきだ。チェーンが左右どちらかに寄ってスプロケットの歯に押し付けられている状態で、チェーンの外壁が隣のスプロケットにギリギリ触れるくらいが望ましい。その場合、CがよりDがちょっと大きいのが良い。この条件は曖昧なもので、近すぎると通常走行時にも接触して異音が出てしまうし、遠すぎると変速性能が悪くなるが、最適値や許容範囲は実際のギアの構成によって変わる。Cはスプロケットとスペーサの厚みを足した値になる。Dはチェーン外幅からチェーン壁厚2枚分を引いてスプロケット歯の後退を足した値になる。

11速用スプロケットに11速用チェーンをつけることを想定しよう。単純化のために、スプロケットの歯の厚みはスプロケット基部の厚みの80%ということにする。歯の後退は1.6*(1-0.8)/2 = 0.16mmだ。Aは1.60/2+2.14 = 2.94mmで、Bは5.62/2 = 2.81mmだ。AはBの差であるクリアランスは0.13mmだ。一方、Cは1.60+2.14 = 3.74mmで、Dは5.62-0.80*2+0.16 = 4.18mmだ。つまり0.44mmほど重複がある。まとめると、チェーンライン真っ直ぐの場合のクリアランスが0.13mmで、チェーンライン斜めの場合の重複幅が0.44mmならば、通常走行と変速性能の両立ができるということだ。

10速用スプロケットに10速用チェーンをつけることを想定しよう。スプロケットの厚みは11速と同じなので、歯の後退は1.6*(1-0.8)/2 = 0.16mmだ。Aは1.60/2+2.35 = 3.15mmで、Bは5.88/2 = 2.94mmだ。AはBの差であるクリアランスは0.21mmだ。一方、Cは1.60+2.35 = 3.95mmで、Dは5.88-0.87*2+0.16 = 4.30mmだ。つまり0.35mmほど重複がある。まとめると、チェーンライン真っ直ぐの場合のクリアランスが0.21mmで、チェーンライン斜めの場合の重複幅が0.35mmならば、通常走行と変速性能の両立ができるということだ。

では、11速用スプロケットに10速用チェーンをつけるとどうなるか。Aは1.60/2+2.14 = 2.94mmで、Bは5.88/2 = 2.94mmだ。双方の値が同じなので、クリアランスは0mmだ。一方、Cは1.60+2.14 = 3.74mmで、Dは5.88-0.87*2+0.16 = 4.30mmだ。つまり0.56mmほど重複がある。変速性能はともかく、通常走行でチェーンと隣のスプロケットが擦れる状態になるので、一応走れるにしても潜在的に多くの問題を孕んでいそうだ。そもそもクリアランスが皆無なのになぜ動くのかが不思議だ。おそらく、トップ側の何枚かではチェーンに隣接するスプロケットの位置が奥まった歯の部分になるので大丈夫で、ロー側になるとチェーンラインの関係で隣接するスプロケットと逆側にチェーンが寄るので大丈夫なのだろう。とはいえ、何らかの拍子にチェーンがずれれば摩擦音が出るだろうし、それを聞き逃したとしてもチェーンピンやスプロケの歯の摩耗が早くなるだろうし、機械抵抗が増すだろう。てことで、結論としては、11速用スプロケットには11速用チェーンを使うべきで、10速用チェーンは使うべきでないということだ。ブロンプトンの3速化においても同じで、3速化するなら11速用のチェーンを使うべきだ。

ところで、ギリギリであっても敢えて10速用チェーンを使いたくなるのには理由がある。11速用チェーンは壁厚が0.80mmしかないが、10速用チェーンは0.87mmあり、その分だけ丈夫で長持ちだ。チェーンが伸びて寿命を向かえるのは、ピンと壁の接合部が摩耗して遊びが大きくなることでチェーンが伸びてしまうからだ。接合部の摩耗は壁が薄いほど早くなる。よって、11速用チェーンの寿命は10速用チェーンよりも短くなる。8速用に比べると半分くらいしか持たないらしい。この寿命の問題も3速化を躊躇する理由になっていた。とはいえ、3速化の利便性を考えれば多少の維持費用の増加は甘受すべきと考えた。

シマノの11速用チェーンには105グレードのCN-HG601とアルテグラグレードのCN-HG701とデュラエースグレードのCN-HG901がある。値段はAmazonでぞれぞれ2718円、3664円、4700円だった。フッ素被膜で摩擦低減をするSILTECなる加工の範囲が違うらしいのだが、具体的に抵抗がどれくらい違うのかの資料が見つけられなかった。主観評価で「全く違う」と言う人もいれば、「全く同じ」と言う人もいて、どちらも信用できない。ロードバイクにはHG701を使っているが、今回はHG601にした。リンク数の設定などで間違った時に安いものの方が傷が浅い。次に交換する時があればHG901にしてみてもいいかもしれない。なお、AliExpressだと異様に安い模倣品や若干安い偽物を掴む可能性が高いので、普通にAmazonで買った。

10速用スプロケットと11速用のスプロケットの違いはスペーサの厚みだけなので、バラ売りのスプロケットを買う際には、10速用を買っても11速用を買っても同じだ。というか11速用として売られているものがほとんどなので、それを普通に買えば良い。スプロケットには特に特殊な性能が求められないので、安物で十分だ。AliExpressで500円とか700円とかのものを見繕えば良い。カセットスプロケットを買う場合には10速用を買うとスペーサの厚みが違ってしまうので注意が必要だ。

4速化以上にも興味はあるが

フロント2速とリア3速で6速化したと言っても、フロント変速の操作は足変速で面倒なので、日常では実質3速だけの運用になる。それでも、52Tと11-15-21Tの組み合わせで全く十分だ。それで平地巡行から登坂までこなせる。一方で、4速化や7速化に利点があるのも理解できる。

ブロンプトンのPラインは4速モデルが標準だ。フロントが54Tで、リアが11-13-15-18Tの構成だ。私に言わせれば、4速しかないのにこんなにクロスレシオなのは勿体無い。私だったら11-14-18-23Tとかにするだろう。しかし、Pラインの4速モデルは「Urban」モデルであり、山岳地での登坂性能を追求していないので、最大歯数が18Tなのは妥当な気もする。また、チェーンラインは2速目である13Tで真っ直ぐになるように最適化しておけば、11Tや15Tでも機械抵抗は少ないし、登坂でしか使わない18Tでは登坂抵抗に比べて機械抵抗の割合は少ないので、どんな状況でも最適な走行環境になりそうだ。

Minimodsの7速化キットだと、11-13-15-18-21-24-28Tにできるらしい。11-13-15-18まではPラインの4速と同じだが、それに21-24-28が加わった形だ。後半は明らかに登坂向けのギア構成だ。スプロケットが多くなるとチェーンラインがどんどん斜めになって機械抵抗が増えるのだが、登坂では登坂抵抗に比べて機械抵抗の割合は小さくなるので、問題ない。峠も走破できるブロンプトンが欲しいなら、フロントダブルにするのではなくリアのスプロケットを増やすというのも妥当な考えだ。

リアのスプロケットを増やした方が便利なのに、なぜ私はフロントダブルにしたのか。それは、単に実装が簡単だったからだ。サードパーティのクランクは大抵フロントダブル対応で、フロントディレイラーを使わないで足変速にすれば、チェーンリングを買うだけでフロントダブル化が完了する。そして足変速だとフロントの比をいくらでもワイドにできる。現状では52-32Tだが、58-32Tとかにもできる。また、フロントダブルだとチェーンリングが最適化しやすい。アウタートップとインナーローの両方でチェーンラインをほぼ完全に真っ直ぐにできる。平地巡行で最もよく使うアウタートップと、峠の最終手段であるインナーローで、機械抵抗が最小化される。

個人的に最強だと思うのは、Pラインと同等の11-13-15-18Tに、フロントダブルの58-32Tを組み合わせることだ。そうすると変速比の美しい階段が描ける。チェーンラインは、アウターとインナーでそれぞれ13Tと15Tに最適化すればいい。

問題は費用だ。MiniModsの7速化キットが88000円で、チェーンとケーブルを合わせると10万円くらいかかる。Pラインと同様に4速化したいならリアトライアングル13万にディレイラーやらケーブルやらシフターやらで15万円コースだ。さらにチェーンリングも買うと2万円足すことになる。そこまでしてギアの段数を増やしたいとは現状では思わない。レースでケイデンスを厳密に管理したいならクロスレシオが必要かもしれないが、そうでないならワイドレシオで十分だ。むしろ段数が少ない方が考えることが少なくて良い面もある。実際、2速だった頃の、基本的にアウタートップ縛りの運用から、3速になってアウタートップとアウターミドルに悩む運用になると、昔の単純なモデルが懐かしくなってくる。

余談だが、ネットや書籍やテレビ等のメディアで「自己責任でお願いします」みたいな文言をよく見かけるけれど、あれって必要なんだろうか。メディアで得た情報を実践して損害が起きたとして、自己責任じゃない場合があるのか知りたい。また、その場合に「自己責任でお願いします」と断りがあるなら著者の責任じゃなくなるのかも知りたい。それはさておき、多段化などの派手な改造をするとおそらくメーカー保証対象外になるので、買ったばかりのブロンプトンでは止めておいた方がいいかもしれない。1年くらいは純正の乗り味を楽しんでからカスタマイズしても遅くはない。そうしないとカスタマイズの有り難みが薄れるし。私はもう8年も乗っているので全く躊躇なく如何なるカスタマイズもしてしまうけれども。

まとめ

ブロンプトンの外装2速モデルを外装3速化する改造は、難しそうに思えたが、やってみれば簡単だった。ハブの選定とスプロケットとスペーサの組み合わせがまず複雑に思えるが、適当に並べてみればだいたいうまくいく。チェーンは11速用を買ってクイックリンクで仮付けして長さを調整すればまず失敗しない。シフターの加工もやすりて少しずつ削りながら変速の様子を見ればまず失敗しない。必要な部品と工具を予め用意してあれば、作業は半日で済むだろう。こんなに簡単にできるなら、もっと早くやっておけば良かった。11Tで平坦を速く走り、15Tでほとんどの道を楽に走り、21Tで急坂を走破する。これ最強。