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Lightroomの体験版で現像機能を最大限に使う方法

Adobe Lightroom Classicの体験版でも現像の基本的な機能を一通り使う方法について述べる。凝った画像加工をしないなら、一般的なカメラライフを満足するのに十分な機能が利用できる。トリミングなどの進んだ機能をプリセット経由で使う方法についても解説する。


Adobe Lightroom Classicは多機能かつ高性能で非常に使いやすい写真現像ソフトウェアで、今日現在だと月額1180円のサブスクリプションプランの契約をすることで使える。また、その契約をしなくても体験版なら使い続けることができる。LightroomLightroom Classicの違いは、前者がデータをAdobeクラウド側に保存する一方、後者はローカルに保存する。今回はもっぱらClassicの話である。

体験版は1ヶ月無料で全機能を使うことができるが、1ヶ月経つと以下のようなダイアログが出てくる。ここでバツボタンでダイアログを閉じれば、先に進める。

体験版ではライブラリ(=データ管理)モジュールは使えるが、現像モジュールは使えない。

RAWデータの現像をするからこそLightroomを使いたいのに、現像モジュールが使えないのでは意味がないではないかと思うかもしれないが、実際のところそうでもない。現像の基本的な機能であれば、ライブラリモジュールからでも使えるのだ。画面左下にある取り込みボタンでカメラやSDカードから写真を取り込んで、取り込んだ写真の一覧の中から処理したい写真を選んで、画面右側にあるクイック現像パネルで明るさや色味を整えて、画面右下にある書き出しボタンで現像後のJPEGTIFFのファイルを書き出すのだ。

クイック現像パネルにあるホワイトバランスと露出量だけいじれば、ほとんどの場合でまともな現像結果が得られる。これらをいじるだけでも、JPEGではなくRAWで撮って後で調整する価値がある。というか、JPEG撮影だと、撮影現場でホワイトバランスや露出を調整する作業が必要になって時間が勿体無い。その分だけ構図を工夫したりシャッターチャンスを狙ったりする方が良い写真になるだろう。あるいは、撮影にかける時間をできるだけ短くして、肉眼で風景を見たり同行した人々と楽しく過ごしたりすることに時間を割いた方が良いだろう。そんな調整をせずにフルオートで撮るという人もいるだろうが、フルオートで撮るならスマホで十分だ。わざわざカメラ専用機を持つなら、RAW現像しなきゃ点睛を欠く。

クイック現像パネルで使える主な機能は以下のものだ。これらを使いこなすだけでも、他の多くの現像ソフトウェアを使うよりも良い結果が得られると思う。「シャープ」と「彩度」はオプションキー(Altキー)を押している間だけ出てくる。

  • 切り抜き比(縦横のアスペクトレシオをいじる)
  • 色温度(ホワイトバランスの赤と青の軸をいじる。夕暮れが赤すぎる場合とか日陰が青すぎる場合に便利)
  • 色かぶり補正(ホワイトバランスの紫と緑の軸をいじる。人工光源で緑被りしている場合に便利)
  • 露光量(写真全体の明るさを調整する。これは最初にいじって適正露出を得るべき)
  • コントラスト(写真全体のコントラストを調整する)
  • ハイライト(明るすぎる部分を白飛びしないようにマイナスに振るか、逆をやって敢えて白飛びさせる)
  • シャドウ(暗すぎる部分を黒潰れしないようにプラスに振るか、逆をやって敢えて黒潰れさせる)
  • 白レベル(ハイライトの極端な奴。白飛びギリギリのトーンを調整)
  • 黒レベル(シャドウの極端な奴。フレアや霧などで黒の締まりがない場合にマイナスに振ると良い)
  • 明瞭度(陰影をはっきりさせる。彩度には影響しない)
  • 自然な彩度(彩度を調整する。色潰れしないガンマ補正的な曲線で調整する)
  • シャープ(マイクロコントラストを調整して境界線を強調する)
  • 彩度(彩度を調整する。色潰れするので写真にはあまり使わない)

ライブラリの一覧で写真をダブルクリックするとその写真を表示するが、そこから一覧に戻るには画面左の「カタログ」の下の「全ての写真」やら「前回の読み込み」やらをクリックすれば良い。または、「g」ボタンを押すと良い。個々の写真を表示した状態で矢印キーの左右を押すと隣の写真に移動する。

撮影した写真の全部を現像するのは無駄なので、前もって写真の絞り込みをした方が良い。矢印による左右移動で写真を見ながら、捨てたい写真で「x」を押すと除外マークがつけられる。「u」を押すと除外マークが解除される。一連の写真を見て除外マークを付け終わったら、メニューバーの「写真」の中の「除外した写真を削除」を選ぶと、マークされた写真が削除される。

ここまでは、Lightroomを使っている人のほとんどが知っている機能だと思うし、これだけ知っていれば十分とも言える。しかし、Lightroomを使い込んでいる人にとっては、いくつか重要な機能が抜けていることだろう。例えば以下の機能だ。デフォルトでは、これらは現像モジュールからでないと呼び出せない。

  • 任意の位置へのトリミング(単焦点レンズ派には必須)
  • パースペクティブ補正(台形トリミングと引き伸ばし。ティルト・シフト撮影の代用)
  • 回転(水平を取りたい時に便利)
  • テクスチャの強調(細かい模様を強調)
  • かすみの除去(遠景がぼんやりしている時に便利)
  • ノイズの除去(高感度撮影でノイズが乗った時に使う)
  • フリンジ軽減(大口径レンズの開放付近で出るパープルフリンジやグリーンフリンジの除去)
  • 周辺減光(画面周辺を暗くして真ん中を目立たせたい時に便利)

しかし、上記の機能もユーザプリセットとして登録しておくとライブラリモジュールから呼び出せる。Macの場合、ホームディレクトリの中の Library/Application Support/Adobe/CameraRaw/Settings の下にXMPファイルを置くと、それがユーザプリセットとして使われる。Windowsでは AppData\Roaming\Adobe\CameraRaw\Settings らしい。私が上記の機能を使うべく作ったXMPファイルを上げておくので、試しに使ってみて欲しい。

展開すると出てくるディレクトリを元からあるSettingsの中にコピーすれば良い。それからLightroomを立ち上げ直すと、以下のようにプリセットの中に新しい設定が現れるはずだ。

プリセットを使ったトリミングにはちょっとしたコツがある。GUIじゃないので直感的な操作ではない。基本的には、以下の手順で行う。

  • 通常のパネルで切り抜き比を設定する
  • プリセットの01-cropで真ん中を切り抜く
  • プリセットの02-shift で上下左右にクロップ位置を変える

シフト操作には癖がある。例えば、down-05は、画像を下に5%分ずらすという意味だ。クロップする窓の位置をずらすのではなく、画像の方をずらす。よって、down-05をすると、トリミングされた結果の中から下の方の画像が切られて、元々切られていた上の方の画像が結果に追加される。さらにややこしいことに、この操作はEXIFデータによる回転前の画像に対して適用される。したがって、右に90度回転させた縦構図の写真にdown-05を適用すると、結果の中から右の方の画像が切られて、元々切られていた左の方の画像が結果に追加される。最初はこの挙動には混乱するだろう。しかし、慣れれば問題なく操作できるようになる。間違えても選び直せばいいだけだし。

コントラスト(contrast)とテクスチャ(texture)と明瞭度(clarity)とかすみ除去(dehaze)の使い分けにはよく悩むが、以下の動画を見るとわかりやすい。個人的にははっきりした絵が好きだが、色が濃すぎるのはあんまり好きじゃない。よって明瞭度を最もよく使う。彩度にあまり影響せずにミッドレンジのコントラストだけを上げてくれて、白飛びや黒潰れも起こさないからだ。遠景の被写体が空気や水蒸気で霞んでいる場合はかすみ除去を使う。比較的細かい(=高周波から中周波の)模様を強調したい場合にはシャープネスの代わりにテクスチャを使うべきだが、細かい模様で面白くする写真を撮ることがまずないので、どちらもあまり使わない。コントラストもまず使わない。ハイライトやシャドウを調整した方が所望の結果が得やすい。
www.youtube.com

プリセットによる加工だとマスキングが使えない。つまり、全ての調整は画面全体に適用され、特定の部位だけに適用することはできない。これはGUIじゃないとできない芸当なので、マスキングが使いたければサブスクリプション契約をして現像モジュールを有効化するしかない。とはいえ、16ビットTIFFで書き出してGIMPで加工する手段もあるので、特定部位の処理を頻繁にやるのでなければ、現像ソフトにマスキング機能が無くても生きていける。

11-profileというグループには、カメラ毎のプロファイルが入っている。AdobeのプロファイルはどのRAWデータにも適用できるが、それ以外のプロファイルは個々のメーカーのカメラで撮ったRAWデータにしか適用できない。富士フイルムのフィルムシミュレーションは人気があるが、それをオリンパスのRAWデータには適用できない。そこで、富士のフィルムシミュレーションを模倣した設定を自分で作った。

  • z-fuji-provia : カラーリバーサルフィルムの標準的な立ち位置
  • z-fuji-velvia : 風景用に彩度が高いもの
  • z-fuji-astia : ポートレート用に温かみがある色合い
  • z-fuji-etherna : 昔の映画みたいにあっさりした色合い
  • z-fuji-classicchrome : ドキュメンタリー的な古ぼけた風合い

クラシッククロームの模倣版を作った時の苦労話はここに書いた。こいつはカラーでありつつ時間感覚が薄れた表現になって結構使えるのでおすすめだ。
mikio.hatenablog.com

99-specialというグループは、私が日々の現像作業を楽にするためにいくつかの調整項目をまとめたものだ。不要であればディレクトリごと消してしまって問題ない。自分の設定を作ってここに入れるのも良いだろう。体験版の期限が過ぎる前に現像モジュールからプリセットを保存するのだ。

  • 01-oly-standard : オリンパス機の色味を再現しつつ私好みにはっきりした陰影にする
  • 02-oly-natural : オリンパス機の色味を再現しつつ自然な陰影にする
  • 03-oly-bcl0980 : 魚眼レンズBCL0980で撮ったものの色収差を消しつつoly-standardを適用

最近のバージョンだと、AI関連の機能も便利だ。その一部もデフォルトのプリセットから使えるようになっている。私は以下のものをたまに使う。

  • アダプティブ:背景をぼかす:強く (その名の通り、背景だけAIが選択してぼかす)
  • アダプティブ:被写体:光彩 (逆光等で暗くなった被写体がフィルライトを当てたように明るくなる)
  • アダプティブ:空:ストームクラウド (PLフィルタで空と雲のコントラストを上げたような効果)

まとめ。Lightroom Classicで、現像モジュールの多くの機能はライブラリモジュールのクイック現像パネルから利用できる。トリミングなどの進んだ機能もプリセット経由で利用できる。よって、現像モジュールが使えない体験版でも、クイック現像とプリセットを駆使すれば素人レベルの現像作業は問題なく行える。

私はかつてはサブスクリプション契約をしていたが、ほとんどライブラリモジュールしか使っていないことに気づいて、1年で解約した。以後ずっと体験版を使っているが、日常の写真生活に全く支障がない。これはハックでもクラックでも何でもなく、Adobeがそうしてくれているのだ。体験版を使った何割かがサブスクリプションに移行してくれれば彼らの事業は成り立つし、他社製品を使われるよりは囲い込みたいからだろう。私もマスキングなどの機能を頻繁に使いたい時はサブスクリプションを復活させるだろうが、常にその必要があるわけじゃないので、毎月1180円払うことはない。