シマノのロードバイク用の11Tのスプロケットを削って外装2段のブロンプトンにつけられるようにする方法についてまとめた。市販されているものはこのように鍔がついているので、削って溝を貫通させる必要があるのだ。
ブロンプトンで重いギアを使いたい場合、フロントスプロケット(チェーンリング)を大きいものに換装するのが常套手段だ。外装2段モデルのデフォルトではフロントスプロケット54Tのリアスプロケット12T/16Tという構成だが、フロントを56Tや58Tに変えることになる。56Tなら車体を折り畳んだ際のクリアランスには問題ないが、58Tだとちと怪しい。58Tを超えると無理だ。私はO.Symetricの52Tの楕円スプロケットを使っているのだが、長径が56T相当であり、それでクリアランスがギリギリだ。
平地での高速巡行が多かったり、足腰を鍛えたい場合には、もっと重いギアを踏みたい。フロントスプロケットはこれ以上大きくできないので、リアスプロケットを小さくするしかない。となると、12Tのリアスプロケットを11Tにしたくなる。しかし、外装2段モデルのリアホイールの軸に装着できる11Tの製品は、私の知る限り、市場に存在しない。シマノとかから11Tのスプロケットは出ているのだが、11Tはどれも「鍔付き」であり、溝が途中までしかないのだ。外装4段モデル(Pライン)のだと元々11T/13T/15T/18Tの構成らしいので11Tがついているのだが、その11Tも鍔付きだ。なので、市販の11Tスプロケットを削って、無理やり外装2段モデルにつけられるようにするしかない。その方法について解説する。
以前にも同様のことを試みたのだが、その際には削り過ぎてしまい、完成はしたのだが、走っているうちにスプロケットが破壊してまった。今回はそうならないように、慎重に作業をする。
まず、シマノの8速用11Tの鍔付きギアを買う。Amazonだと820円で買える。他の製品でもよいが、歯の形状が均一のものがよい。最終的に削って厚さを調整するので、11速用の11Tのギアでも良いかもしれないが、私は試していない。
持っていなければ、電動ルーターを買う。2000円台の安物でよい。さすがに手動で削るとやっていられないので、電動ルータで荒削りしてから、手動で形を整えるという工程になる。
そして、3本組くらいのチタンダイヤモンドヤスリを買う。500円くらいの安物でよい。ダイヤモンドヤスリは金属を削るとすぐダメになるので、使い捨てと思っていい。
さらに、100円均一ショップ「セリア」の「精密ダイヤモンドヤスリ」を3本くらい買う。このヤスリの太さが、偶然にもシマノのギアの溝の太さと全く同じなので、これで仕上げると調整が非常に楽になる。
持っていなければ、60番などの荒目の布ヤスリを買う。これはギアの厚さの調整に使う。紙ヤスリではなく丈夫な布ヤスリが使いやすい。
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作業に入る。鉄粉がいっぱい出るので、どこぞの工作室か、屋外で作業するのがよい。まず、電動ルーターで、溝がない部分を上まで貫通させる作業を行う。その際、元々あった溝の部分は全く削らずに、溝がない部分だけを削り、元々の溝と同じかちょっと浅いくらいの深さにする。電動ルーターは丸っこくしか削れないので、溝の角は削れないが、そこは残しておいてよい。
次に、3本組のチタンダイヤモンドヤスリを使って、形を整える。ここでも元々の溝は削らないようにして、新たに削った溝の部分と元々の部分の深さを合わせるとともに、削り残していた角の部分をヤスリの角で削る。角の部分を削る際には、角形ヤスリを立てて使うとよい。元々の溝と新たに削った部分が区別がつかなくなるまで削る。ヤスリはすぐダメになるので、へたったら次のをどんどん投入すべし。
最後に、セリアの精密ダイヤモンドヤスリを溝に嵌めて、スムースに動くようになるまで削る。元々の溝の部分が少し削れても構わないが、強度を保つためにはできるだけ削らない方が良い。ヤスリがスムースに動かない場合、ヤスリを立てて、ひっかかった部分を削る。一つだけ幅が狭い溝があるのだが、そこだけはこの方法は使えないので、ヤスリを立てて目分量で削る。ここでもヤスリがへたったら交換する。
だいたい削れたら、ホイールにつけてみる。引っかかってうまくつけられなかったら、引っかかった部分を覚えておいて、精密ダイヤモンドヤスリでその部分を整える。ひっかからずに軸の奥までギアを差し込めるようになったら、溝の掘削作業は完了だ。
シマノの8速のスプロケットのトップはブロンプトンの2速モデルのスプロケットとスペーサの組み合わせよりも分厚いので、少し削る必要がある。布ヤスリの上にスプロケットを置いて、回す様に動かして削る。10秒削ったら、ギア1枚分だけ角度をずらして持ち替えて、また削る。それを繰り返すことで、均一に削れる。
最終的に、デフォルトの12Tとスペーサの厚さと同じくらいになるようにする。音楽を聴きながら削って、ポップス5曲分くらいでできる気がする。ホイール軸に組み付けてからストッパーのCリングをつけた時に、Cリングの隙間がデフォルトのギアをつけたと同じくらいになることを確認する。ギアが厚すぎると、ディレイラーテンショナーの腕にチェーンが当たってしまうので、もしそうなったらさらに削る必要がある。逆に、ギアが薄すぎると1速のギアとチェーンが擦れる可能性があるので、削り過ぎないようにも注意だ。
接触危険箇所についてちゃんと理解しておくことは大事だ。以下の図のように、3箇所ある。まず、ギアが厚すぎると、Cリングが完全に閉まらなくなって外側に広がることになり、それがチェーンと接触する。また、Cリングを薄いものに置き換えたとしても、チェーンとチェーンテンショナーが接触する。なのでギアを削らないといけない。まずは上述したようにギアの下側(車輪側)を削る。しかし、そこを削りすぎると内側のギアと接触するので、できればあんまり削りたくない。そこで、代替案としてはギアの上側を削る案がある。しかし、これはギアの強度を著しく落とすので、やるにしてもほんの少しにしなくてはいけない。そこでCリングを削る案が出てくるが、これもCリングの強度を落とすので、ほどほどにしなくてはいけない。結局のところ、ギアの上側と下側とCリングを少しずつ削って調整することになる。11Tで漕いでいてギア飛びする時はだいたいCリングとチェーンが接触しているので、念入りに調整することが必要だ。
鍔付きにして強度を稼いでいるギアの鍔を削っているのだから、強度がある程度落ちるのは仕方がない。とはいえ、削る量を最低限に留められれば、通常使用ですぐに破壊するほど弱くはならない。自作のギアがちゃんと組み付いて問題なく動作すると、ちょっとした満足感が味わえる。
フロントが56T相当で、リアが11Tだと、変速比は5.09にもなる。ブロンプトンの16インチリアタイヤの外周が1.34mだとすると、ペダル1回転で6.82m進む推進力になる。ケイデンス70rpmで回せば時速28.6km/h相当の推進力ということになる。私の楕円スプロケットの実際の歯数は52Tなので、70rpmだと実際の速度は26.6km/hになるが、真円56Tの時と同じ力で踏めば自然に75rpmに上がって28.6km/hになる。小径車だと平地巡行するにもなかなかの重みだと思うが、街乗りではなく遠出するならこのくらいの重みが欲しい。重いと言っても、タイヤ外径が2.1mのロードバイクの変速比3.4くらいに相当する重さだ。フロントアウター52Tのセミコンパクトクランクだとリア14Tで変速3.46なので、4段目くらいになることが多いだろう。つまり、ブロンプトンの56T/11Tの重さはロードバイクだったら52T/14T相当であり、特段重いってわけじゃない。
街乗りだと軽めギア設定の方が快適で、遠乗りだと重めのギア設定の方が快適であることは以前に述べた。最近は所沢方面にサイクリングに行くことが多いのだが、その際に11Tを使うと結構楽しい。渋谷を出て井の頭通りを進むと、最初はいくつか坂があるのだが、永福町をすぎるとほぼ平坦なので、かなり快適に走れる。井の頭公園を過ぎて五日市街道にぶつかると井の頭通りは終点なのだが、そこから始まる多摩湖自転車歩行者道を流して走るのがまた良い。特に夏場だと日陰を走れるのはマジで快適。
女子高生の無駄づかいに出てくる八坂駅の前の地蔵。この近辺というか、東大和、東村山、所沢あたりの風景は何だか落ち着く。特に何があるというわけでもないのだが、都市近郊農業ができる都市側ギリギリの領域で、都会すぎず田舎すぎずというのが良い。
多摩湖自転車歩行者道の終点は多摩湖である。そこから多摩湖周遊もできる。ここはサイクリングロードとして整備されている割には路面の舗装状態が良くないのだが、一周走ってから堤防の上で休憩するとなんだか満足感が高い。
休憩ついでに酒でも飲んで帰りは西武多摩湖線で輪行して帰ってもいいし、体力が余っているなら立川の方に南下して多摩川沿いを走っても良い。多摩川沿いのサイクリングロードもやはり平地巡行のギア設定で快適そのものだ。
街乗り用の13T+17Tを左列に、遠乗り用の11T+15Tを右列に、デフォルトの12T+16Tを真ん中に並べてみた。なかなか壮観だ。行き先や目的に応じてこれらを切り替えるのが楽しい。
有酸素運動をたくさんした方が痩せるという話は、真でもあり偽でもある。1時間を超える長時間の有酸素運動は筋肉の分解を早めるので、習慣的に運動している限りは痩せるのだが、結果的に代謝が下がって、運動をやめた途端に太りやすくなる。代謝を高めるという観点では有酸素運動の時間は1時間以内に留めるのが良いわけだが、サイクリングに出かけるとそれは余裕で超えてしまう。毎日のようにサイクリングするならば運動によるエネルギー消費で痩せるのでそれでもよいのだが、週末とかにしか運動しないとなると逆効果にもなり得るということだ。とはいえ、代謝を高めるためだけに自転車に乗るわけではなく、心肺能力を高めたり、ストレス解消したり、何より楽しいからやるのだ。それに、乗っている時間の全てでジョギング並みの負荷をかけているわけではない。私の場合、むしろ早歩き程度の負荷しかかけずに数時間乗り続けることが多い。
自分にとって快適な負荷で走っていても、そこそこ脚力のトレーニングにもなる設定は何かと考えたら、重めのギアの方がよかろうという結論に至った。軽いギアで速度を出そうとするとペダルを速く回すことになるが、それには頑張ってそうするための意識が必要だ。一方で、重いギアで速度を出そうとするなら、ペダルにしっかり体重をかけるだけでいい。これは階段を登るようなものなので、意識的に頑張る感じにはならない。実際、軽いギアで走るよりも重いギアで走る方が、だらだら走っているつもりでも速度が高まりがちになる。速度が一定以上になると、風が気持ちいいし、高速移動するだけで発生する純粋な興奮が味わえるので、多少負荷が高まっても苦にならないのが自転車の良い所だ。なので、週末サイクリングには重いギアを使った方がトレーニングの観点で効率的であり、結果的に痩せると思われる。軽いギアでも自転車に乗れば痩せる傾向にあるだろうが、同じ距離を走るなら重いギアで速く走った方が効果があるということだ。ブロンプトンの場合、疲れるまで行きたい方向に走って、疲れたら輪行で帰ればよく、筋肉疲労の限界を心配する必要はない。なので、週末は11Tを積極的に使っていこうと思う。
まとめ。820+2500+500+300=4120円と数時間の手間をかければ、11Tのスプロケットを削ってブロンプトンに装着することができる。仕上げにセリアのヤスリを使うと、確実かつ綺麗に仕上げることができる。変速比5より重いギアを踏みたかったら、11T化は必須だ。そしてブロンプトンでそれをやるには手作りしかない。多少の苦労は伴うが、フロント56Tにリア11Tを組み合わせると、ブロンプトンでもロードバイク並みに重い変速比が達成できる。街乗りには向かないが、週末の遠乗りで重いギアを踏むとなかなか楽しめる。