豪鬼メモ

一瞬千撃

三浦半島一周の旅 おかわり

またも三浦半島一周してきた。今回はブロンプトンに乗ったが、乗り方を工夫したら意外に高速に、かつ疲れも少なく走行できた。今週末は結構肌寒かったので、もうサイクリングシーズンも終わりだと実感して、長い冬の訪れを覚悟するのであった。


読書するつもりで出かけたら三浦半島一周のロングライドになったという話を以前の記事で書いた。ロードバイクならロングライドも楽勝という話だった。今回も同じノリなのだが、ブロンプトンでロングライドすることとなった。前日に夜更かししたので朝起きたのが11時くらいで、あまり遠出をするつもりはなかった。The Saga of Tanya the Evilの12巻が出ていたので、大黒埠頭あたりで海でも眺めながら読書しようと思って出かけた。前日にも所沢近辺を80kmくらい走っていたので、この日は60kmくらいにしておこうと思っていたのだ。しかし、例によって「もうちょい行けんじゃね?」を繰り返していたら、いつの間にか150km走っていた。ロードバイク並みとは言えないが、ブロンプトンでも普通にロングライド行けるよ。

ブロンプトンのジオメトリについて前回の記事で検討したが、多少設定に工夫をしたところで直立気味でサドル荷重が大きい乗車姿勢になることは宿命的であることが確認できた。ならば、無理やり前傾姿勢を作ったりペダル荷重を増やしたりするのではなく、サドル荷重が大きい「どっかり乗り」でも快適になる方法を模索した方が良い。その手段は単純で、サドルをちょっと下げるというだけだ。

ブロンプトンでは折り畳みを展開する度にサドルの高さの調整をするわけだが、今までは、「下死点で膝が伸び切らない範囲でギリギリに高くする」という方針を取っていた。サドルが高いと股関節や膝関節の角度が浅くなり、その方が筋力を発揮しやすいからだ。この方法だと、下死点ではそれ以上踏み込めない。通常走行時は下死点で踏み込む必要などないので良いのだが、実際にはこれだと不都合があると最近気づいた。旋回時には、内側のペダルを上死点付近、外側のペダルを下死点付近にして、外側の足を踏ん張るのが定石だ。そうすることで車体が内側に傾いても地面につかないですむし、重心を内側に寄せて旋回力を高めることができる。その際に、サドルが高すぎると下死点で踏ん張りにくい。試してみるとわかるが、サドルが低いほど旋回時の姿勢制御は楽になる。サドルが高すぎると、旋回する度に脚と尻に負担がかかってしまう。さらに、通常走行時にも、下死点で踏み込める余地があった方が良い。サドル荷重をしにくい「どっかり乗り」であっても、わざと下死点でほんの少し余計に踏み込んで尻を浮かせながら漕ぐことで、尻を休ませられる。ロングライドではたまにダンシングしたり停車時に地面に立ったりすることで尻を休ませることが重要だが、シッティングのままでも尻をちょっと浮かせたまま漕ぐのをたまに入れてあげると、尻の持ちがかなり変わってくる。これをするためにも、サドルはちょっと低くして下死点で過剰に踏み込める余地を持たせた方がよい。余地があるだけでよく、普段は過剰に踏み込まずにペダリング効率を優先させる。てことで、新しい方針は、「下死点で膝が伸びきらず、しかもその状態で踏み込んで尻をサドルから浮かせられる範囲でギリギリに高くする」だ。以前の方針と比べて結果的な高さは10mmくらいしか変わらないかもしれないが、その違いが重要なのだ。

サドルの前後位置と角度は全て「ど標準」を徹底するのが私には合っているっぽいことにも気づいた。前後位置はクランク角3時で膝の皿の裏がペダル軸の真上に来るように、錘をつけた糸を垂らして確認した。結果として、VT30Cサドルではレールの前寄り限界から5mm程度余裕を持たせることとなった。角度は、波型断面の最も前上がりの部分が水平になるようにした。サドルの前後二つの山を基準にすると全体的には前下がりであっても、坐骨結節が乗る部分が水平であれば、尻を前に滑らせる力は働かない。今まで、ほんの少し前乗り気味にしていたり、ほんの少し前下がりにしていたのは、ペダル荷重の割合を増やすためであった。しかし、ブロンプトンではペダル荷重を大きくするのはすっぱり諦めることにした。パワーゾーンで大腿四頭筋を使って踏み込む際の効率を追求するのではなく、リカバリゾーンで他の筋肉をうまくつかって、大腿四頭筋を登坂時のために温存する乗り方の方が、ロングライドには適している。

さて、そんな設定と心持ちで今回は出かけた。横浜方面に行くには素直に国道1号を通るのが最短最速なのだが、今回はそれに素直に従った。気持ち低めのサドルとリカバリゾーンを重視した乗り方が期待以上に心地良く、すいすいと走ることができた。大黒埠頭に行くには鶴見を過ぎたあたりで海側に行くべきなのだが、もうちょいこの乗り味を堪能しようと走っていたら、いつの間にか藤沢にいた。これはもう湘南サイクリングでしょということで、南下して江ノ島まで行って休憩。いつもは江ノ島は対岸を通り過ぎるだけなのだが、今回は上陸して本州側を眺めながら昼食を取った。対岸がすぐ近くにあると湖や箱庭を眺めている気分になる。


Tシャツに薄手のウィンドブレーカーだけで出かけていたので、ちょっと休むと体が冷えてくる。走行している間は体が熱っているからちょうど良いくらいなのだが、休むと寒くなってくる。よって、休憩は短めにしてさっさと走った。海を眺めつつ漕いでいたら早々に七里ヶ浜由比ヶ浜を抜けて材木座海岸イカ娘の海の家は由比ヶ浜が舞台という説が巷では言われているが、実は材木座の方なんじゃないかと私は思っている。トウクリップで車体を自立させる技はこういう絵を撮るのに便利だ。

家を出たのが遅かったのでもう日が傾く時間になってしまったが、幸いにも晴れてきたので、逗子や葉山まで行って夕焼けを見つつ三浦半島を回ってみるという案が浮かび、即実行。やっぱ134号はいつ走ってもどこを走っても良い。

先端の三崎港まで着いた時にはもう完全に夜。周囲の施設を回っても暗いとそんなに面白くないし、コスパの悪いマグロ丼とか食う気分でもなかったので、さっさと撤収。身も蓋もない話をしてしまうと、三崎港では世界各国の漁場で採れて運ばれてきた冷凍マグロを荷揚げしているだけなので、三崎で食っても東京で食っても鮮度は全く変わらない。気分だけの問題なのだ。

三崎周辺の道はやたら坂が多いので良い運動になるのだが、ここまで温存していた大腿四頭筋を開放してガンガン登って降りた。登坂で無酸素運動をして限界まで溜まった乳酸が筋肉から除去されるには60分かかるらしいので、虎の子は適宜使って適宜休ませるのが大事だ。そうして夜の三浦海岸や久里浜を通り過ぎたら、もう横須賀。ここまでにして輪行で帰ろうかと思ったのだが、尻がどこまで持つか試したかったので、もうちょい走ることにした。

前回来た時とは逆回りだし、夜なので、同じ道を走っていてもちょっと新鮮な気分になる。ぼっちざろっくでお馴染みの金沢八景でも同様に小休止。即時に行軍を再開できる体制で短時間休むのが小休止で、隊列を完全に解いて食事等を取るのが中休止で、仮眠まで取るのが大休止だったっけ。

横浜近辺まで来たらもうかなり寒くなってきたので、ここまでにした。途中、みなとみらい21に寄った。三浦半島先端の暗い道を走り抜けてから、横浜近辺の喧騒の光の中に包まれると、人間の営みの暖かさみたいなものを感じてしまう。

旅を終えて、脚も尻もまだまだ健在であった。ブロンプトンで150kmは普通に行ける。サドルと乗り方の工夫がどれだけ効いていたのかはよくわからないが、以前に渡瀬橋真鶴九十九里浜に行った時よりは楽だったので、効果はあったと思う。ただ、コースも違うし、自分の体力が向上しているのもあるので、単純比較はできないかな。

まとめ。サドルを気持ち低めにして、パワーゾーンで踏み込み過ぎないように漕ぐようにしたら、ブロンプトンでのロングライドがさらに楽になった気がする。150kmは全く苦ではない。反時計周りの三浦半島一周も楽しかった。寒くなってきたので、今後も走るなら防寒対策を考えなきゃいかん。