豪鬼メモ

一瞬千撃

渡瀬橋

ブロンプトンで栃木県まで北上して、渡瀬橋で夕日を見てきた。北方の栃木や群馬に自転車で来ることは今まであまりなかったのだが、普通にいけるな。


今回の旅は110kmくらいだ。足利市関東平野の北端付近で、目黒区は南端付近なので、関東平野を縦断した形になる。道中で坂が全然なかったあたり、さすが日本最大の平野だ。

今回の旅の目的の一つは、Selle SMP VT30Cサドルとパールイズミのコミューターインナーパンツの組み合わせを試すことだ。前回の旅で、VT30Cをうまく使いこなせば、クッションなしの普通の短パンでも130kmの旅に耐えられることはわかっている。その上で、クッション付きのパンツを履いたなら、めっちゃ快適だ。クッションなしでも快適に乗れる方法を編み出しているのだから、一番下のクラスのクッションでも全く問題ない。少なくとも尻が原因で走行距離が限られることはないだろう。改めて、VT30Cは良い買い物だったと思った。

自宅を出て、山手通りを北上して、国道17号に乗り換えてさらに北上。荒川を渡ると、長い長い埼玉縦断の旅になる。

栃木や群馬の方向に向かうときはいつもこのルートになってしまうのは、荒川を渡る橋が限られているせいだ。なので、北上する他のサイクリストの背中をずっと追いかけることになり、勝手に親近感を感じる。最近の自分の体力だと巡航速度で大抵のクロスバイクには負けないが、人間観察がてら、ドラフティングにならない程度に離れて他人に追従することが多い。まあ大体は普通のオッサンとか兄ちゃんなんだけど、たまに、すげー腰をクネクネさせて骨盤漕ぎする人とか、ふくらはぎが寄生獣みたいに発達している人とか、めっちゃ太っているのにやたら速い人とかがいて面白い。

上尾、桶川、北本を抜けて鴻巣に入ると、武蔵水路に出会う。それに沿っていくと、さきたま古墳公園がある。そこでたまたま出会った爺ちゃんと話したのが結構楽しかった。高橋英樹の同級生で梅宮辰夫の友達で、戸越銀座の映画館で働いていたとか何とか。そういや私の知り合いで有名人なんて全く居ないな。

小学校の社会のテストで名前と説明文を結びつける問題がよく出るが、「稲荷山古墳」と「金錯銘鉄剣」を選ぶのは鉄板だ。その稲荷山古墳だが、確かに鍵穴の形をしていてなんか格好良かった。

さらに北上すると、利根大堰がある。以前にわざわざ目的地として来たところを単に通過するのはなんか釈然としないが、利根川を渡る橋も限られているので同じルートになるのは仕方ない。

群馬県に入ると、北風がびゅーびゅー吹いて来て途端に速度が落ちた。山のすぐ南に広大な平野が広がっている地形なので、風を遮るものがない。これが上州の空っ風というやつか。ちっぽけな俺の心にも空っ風が吹いている。

足利市に入ってからさらに進んで市街地に入ると、目的の渡瀬橋がある。もっと懐古的で小ぢんまりした橋を想像していたのだが、普通に近代的で立派な橋だった。

ここに来ようと思い立ったのは当然、森高千里の同名の曲を聞いたからだ。本当に夕日が綺麗なのか知りたいじゃないか。到着時には夕日には早かったので、歌に出て来る八雲神社と、床屋の角にポツンとある公衆電話も見て来た。昔懐かしい感じが残っていて良い感じだった。


で、夕日。残念ながらこの日は雲がかかっていたが、そうでなければ多分綺麗に見える立地だと思う。真西が開けているとともに、八王子山という山の際に沈むので、日没の瞬間が見られる確率が高いだろう。その渡瀬橋の歌を聴きながら夕日を眺めようと思っていたのだが、気づくと曲が進み過ぎていてロックンオムレツを聴いていた。森高の詩はメタファをほとんど使わず、敢えて平易な言葉を選択することで、あたかも身近にいる女子が歌っているような「等身大」の演出をする意図があるのだと、大人になってから気づいたものだ。

日が暮れてもまだまだ脚が残っていたので、佐野まで行って佐野ラーメンを食べることにした。有名店にわざわざ並んで入ったが、まあ美味かったかなってくらいだ。やはり、私の味覚はラーメンの旨さに反応するように育っていないのかもしれない。澄んだスープとコシのある麺であることは弁別でき、そのために各種の努力と工夫をしているだろうことも想像できる。ただ、同じカロリーと塩分を甘受するなら、カレーの方が好きだ。カレーに比べてしまうと、名店のラーメンも霞んでしまう。そのようなバイアスを取り払う努力をして味わうと、たぶん美味かったのだと思う。

東武伊勢崎線湘南新宿ラインを乗り継いで輪行で帰った。東京近辺に住んでいる欠点はどの方向の郊外へも遠いことだが、どの方向の郊外からも簡単に電車で帰って来られるという利点もある。ところで、走っている時はTシャツ短パンで全然OKだったが、夜になって運動していない状態だとかなり冷え込むので、そろそろ秋冬用の衣服を準備せねばなるまい。

まとめ。渡瀬橋は夕陽が見易いロケーションであることが確認できた。東京から北方への移動は坂がほとんどないので、それほど体力を使わずに到達できる。海も山もないけども、平坦な田園風景の中を走りたいならこの方面は良さそうだ。