豪鬼メモ

一瞬千撃

ブロンプトンで群馬・長野・山梨の旅 前編

長野県東御市の両親の家に帰省するついでに、ブロンプトンで北関東と甲信地方をツーリングしてきた。その前半の、東京からに東御に至るまでの行程の記録。1回目は快活クラブと碓氷峠の話をする。


私の両親は引退してから東御市の山奥で暮らしている。自然豊かなのは良いのだが、何せ山奥なので行くのが大変だ。いつもは新幹線やらレンタカーやらレンタルバイクやらで行くのだが、今回は自転車で行くことにした。それも小径車のブロンプトンでだ。ブロンプトン総集編の記事でも述べたが、旅の足としてはブロンプトンの方がロードバイクより優れている。速度は劣るが、取り回しが良く、各種施設に持ち込んだり他の交通モードと組み合わせたりするのが楽だからだ。

旅の始まりは衝動的なものだった。父に用があったので帰省すること自体は決まっていたのだが、新幹線のチケットを取ろうとした時に、「つか、自転車でもいけんじゃね?」と思ったのが契機だ。東御市の家までは200kmほどあるが、途中で一泊すれば楽勝だろうと。一泊ならば、荷物も特別なものは必要ない。二日くらいなら同じものを着ていても問題ないので、歯ブラシだけ持っていけば乗り切れる。ということで、日帰りサイクリングの装備に歯ブラシだけ加えて普通にでかけた。

埼玉方面のサイクリングでは定番だが、適当に北向きに走っていると17号にぶつかるので、それに沿ってひたすら北進する。途中で荒川やら利根川やらを渡るのだが、ひたすら平野なので特に難しいことは何もない。ジョギングよりも軽い、早歩きくらいの運動負荷を続けていると、いつの間にか何十キロも走ってしまう感じだ。

で、浦和やら上尾やら桶川やらを通過して100kmくらい走ると高崎駅に着いた。ここがその日の宿泊地だったのだが、快活クラブに泊まることにした。というのも、コスパ最強と名高い快活クラブに今まで一度も泊まったことがなかったので、ここらでやってみようと思ったのだ。

快活クラブは店舗ごとに値段が違うのだが、高崎高関店は鍵付き個室の12時間プランで3300円である。個室と言っても普通のブースと大して違いはなく、広さも受けられるサービスも変わりはない。漫画が読めて、PCが使えて、ソフトドリンクが飲み放題なだけだ。居室の構成も広さも大して変わりはなく、ベッドがついているわけでもない。しかし、個室だと、鍵が付いていることと、ちゃんとした壁で区切られているため、眠るために必要な安心が手に入る。1.5倍ほどの割高になるが、選べるなら鍵付き個室の方が良さそうだ。あと、個室であろうとなかろうと、シャワーが無料で使えるのもでかい。シャンプーとボディソープも備え付けで、タオルもタダで使える。これなら、数日なら普通に住めるレベルだ。旅慣れた者たちの間では「実家」などと呼ばれるらしいが、確かに頷ける。

実際に宿泊してみたところ、普通に眠れた。漫画を読みつつシャワー室が開くのを待ち、シャワーを浴びてさっぱりしてからまた漫画を読む。ブランケットもタダで借りられるので、それをかけて、そのままごろ寝すればいつの間にか寝てしまって、もう朝だ。個室であれば防音は比較的しっかりしていて、隣室のいびきが聞こえることもない。朝6時からは無料のパンが提供されるので、それをコンポタに浸して食べると美味い。その後、普通にまた自転車を漕ぎ出した。前日の疲れもほぼ完全に取れていた。これは良い施設だ。QBハウスが床屋業界に革命を起こしたように、快活クラブは宿泊業界を変えるだろう。高い金を出して高いサービスを受ける自由と、金をかけずにそれなりのサービスを受ける自由の両方があることは良いことだ。

二日目は、国道17号から18号に乗り換えて、ひたすら西に進むことになる。前日はほぼ完全な平野だったが、ここからはずっと緩やかな登り基調の道を進むことになる。ところで、今回の旅ではいつもの52T/11Tではなく、より軽い15T/12Tをつけている。ギアが軽くなったおかげで、多少の登りならば巡航ギアでずっと走っていられる。日帰りサイクリングなら足を使い切ってもいいので重めのギアが良いが、泊まりがけの場合には多少軽めのギアの方が良いと思ったが、それが奏功した結果だ。


だんだんと標高を上げていくと、えげつない形の妙義山が見えてくる。群馬と長野との県境に近づくほどに、だんだんと傾斜もきつくなってきて、緊張感が増してくる。とはいえ、まだ巡航ギアで登れる程度だ。横川の釜飯の本店の横に来て、久しぶりに釜飯を食べたくなったが、快活クラブで節約しているのに昼飯で浪費するのも一貫性に欠けるので我慢して通過した。代わりに、持ってきていたプロテインバーを何本か食って頑張る。

さて、群馬と長野の県境と言えば、碓氷峠である。ここを越えるには、旧道とバイパスの二つから道を選択できる。旧道の方が長いが緩やかで、バイパスの方が短いが急だ。交通量はバイパスの方が圧倒的に多くて、旧道はほとんど交通量がないとのこと。当然、サイクリングに向いているのは旧道の方なので、迷わずそちらを選んだ。

旧道の方は本当に交通量が少なく、ほとんど四輪車も単車も通らないし、そしてサイクリストも一人も見なかった。つまり私しか居なくて、世界が滅びたんじゃないかと思うくらいだ。

旧道は長さ11km、標高差500m、平均勾配4.5%なので、ロードバイクなら楽勝に登れるだろうし、ブロンプトンでも何とか登れるレベルだ。私は外装2段の軽いギアを52T/18Tにしているので、立ち漕ぎすることもなく、息を切らせることもなく、のんびりと登ることができた。おそらく標準の54T/16Tだと苦労したと思う。なお、私のブロンプトン39T/18Tの乙女ギアも装備しているが、それを使う必要はなかった。旧道には184個のカーブがあるのだが、その各々に看板が付いてて、それを数えながら登るのが煩悩落としっぽくて結構楽しい。旧国鉄廃線と並走するのだが、その遺構も趣深い。


この峠道はイニシャルDでも取り上げられていて、公道レースをする連中がいるらしい。そう思って路面を見てみると、確かにセンターラインを無視したライン取りのブレーキ跡があって胸熱だ。

で、ひたすら登ると峠に着いた。ここから先は長野県だ。

普通は、峠を越えるとひたすら長い下り坂を堪能してからどこぞの市街地に辿り着くのだが、碓氷峠は違う。峠を過ぎたらすぐに軽井沢の街があるのだ、如何に軽井沢の標高が高いかが分かる。1000m超えだ。なので、寒い。登坂でかいた汗がすぐに引いて凍えるくらいだった。浅間山はまだ雪がかぶっていた。

東信といえば、ツルヤ。ここで一服して英気を養う。ツルヤのおやきは安くてうまいので、おすすめだ。

あとはひたすら西進して、両親の家に着いた。そこも標高1000mくらいなのだが、東御市街からそこに登るのが碓氷峠を登るよりきつかった。まあとにかく着いたので、八ヶ岳を眺めながら読書などした。心地よいつかれもあり、やたら満足感のある一日であった。

両親の家では農作業を手伝ったり近隣の宿場やら城跡やらを探検するなどして数日過ごした。やはり漫画喫茶と実家とは安心感が違う。有名な上田城小諸城もいいが、そこそこの山の上にある砥石城跡が野生味があって結構おすすめ。


親父に先祖代々の墓がある場所を聞いて、山の中のその地を探検したのだが、全て土に還りかけていた。時の流れは無常なり。

後編に続く。