豪鬼メモ

一瞬千撃

ブロンプトンのシートポストスリーブを自分で交換

ブロンプトンのシートポストスリーブを自分で交換する手順について説明する。店に頼むと1万円くらいかかるが、自分でやればその半分以下でいける。


ブロンプトンは折り畳みと展開の際にサドルを上下させる必要があるので、つまり毎日2回はサドルを上下させることになる。これを10年もやっていると、シートポストとフレームの間に挟むプラスチックのスリーブが摩耗してきて、シートポストがうまく固定できなくなってくる。そうなると、スリーブを交換する必要がある。ヤワな部品をつけやがってと思うかもしれないが、シートポストやフレームが摩耗する代わりにスリーブが摩耗することで、交換するのをスリーブだけにしている工夫なのだ。また、プラスチックが柔らかいおかげで、軽い力でシートレバーを操作することができる。

スリーブが摩耗してくると、乗っている間にサドルの位置が微妙に下がるという経験をするようになる。その場合、シートポストレバーのボルトを少し締めてシートレバーの締め込みをきつくすることで、サドルが下がるのを抑止できる。さらに摩耗が進むと、もはやボルトの締め込みでは間に合わなくなる。無理やり締め込んでしまうと、レバーかフレームのどちらかが壊れてしまう。私の場合、レバーが壊れたことでそれに気付かされた。

てことでスリーブの交換をするのだが、その工賃が結構高い。パーツと工賃込みで1万円からといったところだろう。パーツだけなら、Amazonで2個セット3635円で変える。接着剤はゴムボンドG17を100均とかで変えるので、つまり自分でやれば単価2000円以下で交換できる。ちなみに私はスリーブを小径車専門店で買ったのだが2個セット5000円だった。店の人には、「取り付けとか大丈夫ですか?接着とか削るのとかも必要ですよ?」と確認されたが、「大丈夫っす」と根拠もなく答えておいた。というか、部品の仕入れ値は1000円とからしいので、ぼってるわけじゃなくて定価だとはいえ、うぬぬとなった。せめてAmazonで買うべきだった。
www.amazon.co.jp

なお、スリーブは2個セットでしか売られていないのだが、そのうち1個(写真左)は「キー」とかいう名前の出っ張りが削られていて、2002年より古いモデルにも装着できるようになっている。説明書によると、新しいモデルでは出っ張りがついたもの(写真中央)を使うべきらしい。20年以上前のモデルをサポートしているのは偉いが、その部品を抱き合わせで売るのは止めて欲しいところだ。古いモデル用のスリーブもキーの部分に割り箸の破片とかをくっ付ければなんとか使えそうだけど。

店で頼んだ際の工賃が高いのは、手間がかかるからだ。プロがやってもそれなりに面倒なわけで、多少高くても店に頼んでやってもらった方が普通は良い。ただ、私のゴーストが自分でやってみろと囁くので、パーツだけ買ってDIYでやってみることにした。標準的な工程は以下の通りだ。

  • シートポストからサドルを外す
  • シートポストを下から引き抜く
  • 古いスリーブをマイナスドライバでこじって剥がす
  • フレーム内を掃除して古いスリーブの跡地の接着剤を除去する
  • 新しいスリーブに接着剤をつけて、フレーム内に嵌めて、何時間か乾かす
  • 装着した状態のスリーブをリーマーで削って、シートポストの太さと合わせる
  • シートポストを入れる
  • シートポストにサドルをつける

さて、自分でやる場合に問題となるのは、リーマーなる装置を持っていないことだ。太いドリルみたいなものらしいのだが、さすがに素人が買うものじゃない。とはいえ、ブラスチックの筒の内部を削るくらいなら、紙ヤスリでもできるので、太さの調整に試行錯誤は必要になるが、自分でもできないことはない。なお、かつてはリーマー処理済みのQSTSLVという品番の部品が売られていたらしいのだが、現在はQSTSLV-URというリーマー未処理のものしか流通していない。

具体的な作業に入ろう。サドルを外してシートポストを下から引き抜くまでは、説明するまでもあるまい。古いスリーブを外すには、マイナスドライバでグリグリと力をかけて外すしかない。その際に古いスリーブが欠けたりするだろうけど、どうせ捨てるんだから問題ない。

外したスリーブと新しいスリーブを比べると、古い方は確かに微妙に薄くなっている気がする。かなり微妙な差しかない気もするが、この微妙な差がシートポストの保持力に大きな差を生み出すのだから、機械いじりというのは面白いものだ。

フレーム内部の掃除をする。チェーン清掃用のブラシにチェーンクリーナーをつけて適当に内部を擦ってからボロ切れで拭き取る。ボロ切れが奥まで届かない場合、ブラシや適当な棒に巻きつけて作業すればよい。ところで、ボロ切れのことをウエスという場合もあるが、調べたら「waste cloth」が語源らしい。英語だと「rag」というのが普通らしいけども。

その後、私の場合ならではの事情として、締め込みすぎて歪んだフレームを元に戻す作業を行った。スリーブが摩耗しているのにボルトを締め込んでだましだまし使ってきたおかげで、フレームの口が狭くなってしまっていた。この状態に合わせてスリーブを削ってしまうと、以前と同じ症状が早晩に再発する可能性が高い。よって、まずはフレームの口を広げてやる必要がある。たまたま手元にあった波型ワッシャーを何枚か重ねてフレームのスリットに楔として打ち込んで、さらにペンチと万力でこじ開ける方向に力をかけた状態で一晩置いた。そうしたら、口が少しは広がった状態になった。

レバーを絞めない状態でシートポストが動くようになるまで、スリーブの内側を削っていくことになる。スリーブの内側を削るには、シートポストに紙ヤスリか布ヤスリを巻いて、その上にスリーブを巻きつけて、回して削る。ヤスリの番号は60番などの粗目が良い。

削りすぎると意味がないので、状況を確認しながら作業を進める。古いスリーブもシートポストに通しておいて、手で押さえた状態でのスリットの隙間を比較する。何も削っていない状態でのスリットの隙間と、古いスリーブのスリットの隙間の中間くらいまでは削って大丈夫だ。

ある程度スリーブを削ったら、スリーブとシートポストをフレームにつけてみる。力一杯捻ればなんとか動かせるというくらいが理想だ。そうしたら、またシートポストを外して、接着作業に移る。

接着剤にはボンドG17を使う。専用接着剤もあるらしいのだが、金属と硬質プラスチックに対応した汎用のボンドで十分だ。スリーブには出っ張っている部分と凹んでいる部分があるが、接着剤は出っ張っている部分にだけ塗ればよい。外した古いスリーブの接着剤の跡を見ると参考になる。

接着剤をつけたスリーブをフレームに嵌め込んだら、すぐにシートポストを上から逆向きに嵌めてスリーブとフレームを密着させる。この際に奥まで嵌めると取り外しが大変になるので、スリーブを圧着するのに必要最低限の深さに留めておいた方がよい。その状態で、シートレバーを装着して、レバーを締め込んだ状態で、数時間乾かす。

逆につけたシートポストを外して、今度は普通につけてみる。この状態で、シートポストは力一杯捻るとギリギリ動くらいのキツさになっている。レバーを締め込んで乾かしている間に、スリーブが多少潰れて、シートポストの動きが多少は良くなっているはずだ。それでもおそらくキツすぎて使いにくいので、仕上げの削りを入れる。紙ヤスリか布ヤスリを円筒状に巻いて、筒に出し入れしながら削る。できれば、100番、600番、2000番といったくらいに粗目から細目に変えつつ仕上げる。ある程度削ったらシートポストをつけてみて、普通の力で動くようにする。削りすぎないように注意しつつ、普通の力で動くギリギリを狙うのだ。

あとは、サドルをつけて、完成だ。スリーブを変えると、今までの問題は直った。軽い力でレバーを絞められるようにボルトを調整したとしても、きちんとシートポストが保持できる。折り畳みや展開の所作が楽になったし、乗っている途中に「グググッ」とサドルが微妙に沈み込む気持ち悪い現象も起こらなくなった。満足だ。

まとめ。ブロンプトンのシートスリーブの交換は、自分でもできる。総作業時間は5時間はかかっただろうか。工数コスパの計算に入れるなら、自分でやるのは明らかにコスパが悪いので、プロに頼んだ方がいい。でも、自分でやれば地平線が広がるわけで、結果としては自分でやってよかったかなと思う。

余談だが、猛暑の季節は昼に走るのは危険というか、汗だくになって不快だ。そこでおすすめしたいのが、夕涼みのサイクリングである。夕暮れになると幾分涼しくなるので、そこで遅めのペースで街を流すのだ。汗はかくけど走行風による蒸発でバランスがとれて汗ぐっしょりにならなければ、快適に走れる。座ったり歩いたりしているよりはむしろ涼しい。私はついでに各所のスーパー銭湯に行って帰るのが好きだ。せっかく風呂で汗を流したのに帰りにまた汗をかくのが難点ではあるが、運動するとよく眠れるのでおすすめだ。