豪鬼メモ

一瞬千撃

Shewalbe MarathonとShewalbe Kojakの耐久性

ブロンプトンのタイヤを換装し、前輪をShewalbe Marathon、後輪をShewalbe Kojakにしてみた。Marathonの耐久性は圧倒的だが、走行性能に関しては最善とは言えない。後輪をKojakにするだけでも乗り味が若干だが軽くなる一方、Kojakの耐久性はMarathonの4分の1くらいなので、コスパを考えると微妙かなというところだ。結局のところ、間をとってMarathon Racer最強説に至るのだが、コスパの良いワイヤービード版はなかなか手に入らないのが難点だ。


スラローム走行を日常的にするようになって、摩耗したタイヤを交換する頻度が増えてきた。ブロンプトンのタイヤの規格(35-349 = 太さ35mmの内径349mm)だと、ドイツのSchewalbe社とContinental社が定番的な位置付けになっている。今までは特に深く考えずに、耐久性に定評のあるShewalbeのMarathonを選んでいた。以下の動画は各種タイヤをブロンプトンにつけた場合の性能について解説しているが、これを見ると、もうちょいちゃんと考えて選んだ方が良いような気がしてきた。
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最も面白い主張はこれだ。成人男子の平均的な持続入力である100Wで走行すると、Shewalbe Marathonだと20km/hの速度になり、Shewalbe Oneだと22km/hの速度になるという。タイヤの違いがここまでの速度の違いになるというのは驚きだ。ならば万人がOneを使うべきかというとそんなことはなく、耐久性やコスパを考えるとOneを選ぶべき人はむしろ限られるだろう。タイヤは、重量、転がり抵抗、耐久性(耐摩耗性、耐パンク性)、グリップ、そして価格を総合的に考えて選ぶべきだ。動画で言及されたスペックを表にしてみた。価格はネット通販の最安値だ。

重量 転がり抵抗 耐パンク性 グリップ 価格
Shewalbe One (Kevlar) 180g 36W 59g 9000円
Shewalbe Kojak (Kevlar) 180g 49W 67g 8800円
Shewalbe Kojak (Wire) 230g 49W 67g 3740円
Shewalbe Marathon Racer (Kevlar) 230g 48W 97g 5940円
Shewalbe Marathon Racer (Wire) 265g 48W 97g 5000円くらい?
Shewalbe Marathon (Wire) 420g 54W 124g 3580円
Shewalbe Marathon Plus (Wire) 480g 54W以上? 129g 7700円
Continental Contact Urban Reflex (Wire) 280g 48Wくらい? 105g 5000円

ケブラーとワイヤーはビードの種類であり、ケブラーの方が軽くて柔らかいし折り曲げて持ち運べるので性能と性能で有利だが、価格が高い。私はスペアタイヤを携帯しないので、重量50gの差でコスパが上がるのであればワイヤービードのもので構わない。その中で選ぶと、重量と転がり抵抗と対パンク性にバランスの取れたMarathon Racerのワイヤー版が良さそうだが、16インチの新品は現時点では流通していないので、中古を狙うしかない。次善は、走行性能と価格だけから考えるとKojakが良さそうだ。価格を無視して耐久性と走行性能を追求するとMarathon Racerのケブラー版、価格と耐久性を両立させるならContinental Contactということになろうか。

ところで、スラローム走行をすると、前輪がやたら摩耗するが、後輪はあまり摩耗しない。私の乗り方で前後輪ともMarathonを装着している場合、前輪は3ヶ月に1回くらい交換する必要があるが、後輪は6ヶ月に1回くらいでOKだ。前輪の方が後輪のだいたい2倍くらい摩耗すると思っている。定期的に前後輪のスワップをすれば寿命を均等に近づけられるが、面倒臭い。一度の交換作業で前輪も後輪も一気にやってしまうと割り切るなら、後輪の寿命はもっと短くてもいい。となると、前輪は耐久性とコスパに定評のあるMarathonを使い続けて、後輪だけはより走行性能に振ったものを使うのも良さそうだ。

普通の乗り方をしていれば、後輪の摩耗の方が早い。よって、前輪に低耐久低抵抗、後輪に高耐久高抵抗のタイヤを履かせるのが率直な考え方だろう。リアの方が減りやすいということは、普通に乗っている際の前後荷重比はリアに偏っているということだ。つまり、転がり抵抗への寄与は後輪の方が大きい。よって、走行性能を考えるなら、むしろ後輪にこそ低抵抗のものを履かせたい。しかし、低抵抗の製品は低耐久な傾向にあるので、ジレンマに陥る。一方で、スラロームジムカーナ的な乗り方をする場合、フロントの減りの方が早い。その場合、フロントに高耐久高抵抗、リアに低耐久低抵抗のタイヤを履かせるのが率直な解になる。幸か不幸か、ジレンマがない。

てことで、後輪だけにつけるタイヤを検討したのだが、ちょっと悩んだ末に、Kojakを使うことにした。Kojakのレビューをいくつか見る限り、走行性能は良いが耐久性に難ありという評判だ。私としては耐パンク性よりも耐摩耗性が重要なのだが、耐摩耗性に関する実験はしづらいので、客観的・定量的なレビューは見かけたことがない。自分の体格や乗り方で実際にどの程度の耐久性になるのかは、自分で使ってみないとわからない。上記の製品群の中ではKojakはMarathonと並んで最も安価なので、とりあえず使ってみて判断することにした。

Kojakは空気圧を115psiとかなり高くできるのが利点だ。東京のように良質の舗装路が多い地域を走るならば、タイヤ跳ねによるインピーダンスロスの影響は小さいので、空気圧を高めにしてヒステリシスロスを低減する設定にして、総合的な転がり抵抗をより小さくすることが目論める。リアサスペンションブロックを比較的よく動くジェニーサスのソフトに換装していることも、インピーダンスロスの緩和や乗り心地の改善に寄与すると期待できる。また、スラロームしている際のグリップ限界はフロントの方が先に来るので、リアの空気圧が高くてグリップが多少落ちていても問題ない。私はリアもフロントも適正空気圧の範囲の上限にするのが好きだ。体に受ける衝撃は大きくなるが、路面状況をつぶさに感じられるのが良い。それにタイヤの接地面積が小さい方が摩耗が減ってタイヤが長持ちする。

てことで、前輪はMarathon、後輪はKojakという組み合わせでタイヤを一気に交換してみた。空気圧は前輪後輪とも推奨空気圧の上限にした。その走り心地は如何に。いつもの通り、264号を西進して二子玉川まで行き、多摩川サイクリングロードを疾走する。

正直なところ、乗り味が劇的に変わったというわけではない。ただ、意識してみると、多少軽くなった気がする。走行音が小さくなり、また漕がずに惰性で走行した時の速度低下が若干緩やかになったのを感じる。転がり抵抗が低くなったということだろう。前輪はMarathonのままだが、スラロームで尾根状に削ったおかげで接地面積が減っているのも路面抵抗の低減に効いているのかもしれない。下り坂などで全く漕がないで進んでいると、前を走る自転車に追いつくことが多い。先行車がブレーキをかけている風でもない状況でも追いつくので、転がり抵抗が低いのだと感じる。

ガス橋の南のいつもの場所でスラローム走行もしてみた。コースを往復しつつ、向かい風では切り返し感覚を短くした高速スラロームで走り、追い風では旋回角を大きくしたオフセットスラロームをして走った。スラローム中の転がり抵抗においてはタイヤが変形することによるヒステリシスロスの寄与が大きいだろうが、後輪だけでもそれが低減すると、連続スラローム中の失速が緩和されて、快適に走れるようになる。切り返しで一漕ぎで加速する際の応答が機敏になったおかげで、よりスポーティな感覚が味わえるようになった。グリップも十分で、小石を踏んだ時以外は後輪が滑り出すことはなかった。

さて、耐久性に関して考察してみよう。下ろし立てでリアに装着したKojakはこんな感じ。

渋谷→二子玉川多摩川大橋→五反田→渋谷の33kmの街乗りと多摩川河川敷道路の1.2kmのスラローム6本を含む約40kmのサイクリングをした後はこんな感じ。やはりスラローム走行のおかげでサイドウォールの近くの摩耗が目につく。やっぱりMarathonに比べるとKojakの寿命は短そうだ。とはいえ寿命までにどのくらいの距離を走れるかはまだわからない。

リアをKojakに変えた時点でのフロントのMarathonの摩耗具合はこんな感じだ。スラロームのおかげで山形になっているが、グリップ性能は十分だ。というか、この形だと機敏に曲がれて気持ちが良いし、直線走行の際の抵抗も低くて、むしろいい感じだ。鉛筆を削るが如く、むしろこの形に積極的に整形したいくらいだ。

ちなみに、私が寿命が来たとみなしたMarathonのリアとフロントの状態はこんな感じだ。緑の部分は耐パンクベルトが見えているところで、その下にカーカスがある。Marathonの耐パンクベルトの厚さは3mmもあるので、これがちょっと見えているぐらいではまだパンクはしない。これでも走れるとは、Marathonの耐久性はマジですごい。とはいえ、ここまで来ると耐パンク性能もグリップ性能も徐々に落ちてくるはずなので、事故る前にタイヤを交換するのが吉だ。


上記の撮影をしてから、40日ほど経った。Kojakの耐久性は実際にどの程度か、しばらく乗って答えが出た。結論としては、私の使い方ではKojakは45日間の寿命であった。100kmくらいの長距離サイクリングを5回くらい、30kmくらいのご近所散策を10回くらい、往復8kmの通勤を30回くらいしているだろうか。とすると、走行距離は840kmくらいだ。そのうち、スラローム走行を40kmくらいしていると思う。45日目にスラローム練習をしている最中に、「パンッ」と激しい破裂音がしたと思いきや、突然後輪が滑って、転んでしまった。後輪タイヤの状況を確認してみると、見事にバーストしていた。バーストなんて中学の時にママチャリでドリフトやってた時以来だ。

他所のレビューを見ると、16インチのKojakは普通に乗っていれば3000kmくらいでトレッドが摩耗してひび割れが出たり内部構造が露出してきたりするらしい。私の乗り方では1000kmも行かずに寿命が来たが、やはりこれはスラローム走行のせいだろう。前輪についているMarathonの減り方はこんな感じだ。こちらもだいぶくたびれてはいるが、まだ耐パンクベルトが見えていないので、普通に使える。

前輪のMarathonは後輪のKojakをつけるかなり前からつけていて、そしてスラローム走行での前輪の摩耗は後輪の摩耗よりも2倍くらい激しいことを考えると、Kojakの耐摩耗性はMarathonの半分に満たず、おそらく4分の1くらいであること推測される。特にサイドウォールが脆弱そうであり、白い糸が見えてきたら寿命が近いと判断すべきだろう。バーストすると転んで危ないしチューブも駄目になるし出先から歩いて帰る羽目になるしで、碌なことがない。徐々にグリップが落ちて終わるMarathonよりも突然バーストして終わるKojakの方がより安全マージンを大きく取ることになるため、その点でも寿命が短くなる。障害時にも致命的な損害を出さないことをフェイルソフトと言うが、その観点でもMarathonシリーズを高く評価すべきだ。

前後輪ともMarathonだと年に前輪4回、後輪2回を交換することになるため、3580*6=21480円かかる。月額1790円だ。後輪だけKojakに変えると、前輪は4回、後輪は8回変えることになるため、3580*4+3740*8=44240円かかる。月額3686円だ。つまり、後輪だけでもKojakを使うと決断すると、タイヤ代は2倍近くになってしまう。これは、わずかに乗り味が軽くなるという代償としては割に合わない。こうして計算してみると、タイヤが消耗品だというのがよくわかる。16インチタイヤは27.5インチタイヤに比べて同じ距離で1.72倍の回転をしなければいけないので、その分だけ摩耗も早い。にもかかわらずタイヤの値段は16インチでも27.5インチでもそんなに変わらないので、コスパが悪い。なので、できるだけ安くて長持ちするタイヤを使いたいのが本音だ。だったらスラロームなんてするなよという話もあるが、楽しいんだから仕方がない。そんな中でタイヤを選ぶとしたら、やはりMarathonが最適ということになりそうだ。


ヤフオクでKojakの2本セットが5580円、メルカリでMarathon Racerのワイヤビード版が1本2200円で出品されていたので、どちらも落札した。そして、前輪にMarathon Racer、後輪にKojakという組み合わせにしてみた。Marathon Racerの耐久力はMarathonの3分の2、Kojakの耐久力はMarathonの4分の1と仮定すると、この7780円の組み合わせで3ヶ月は持つかな。

Marathon Racerの乗り味はMarathonより軽く、後輪のKojakとの相性も良い。なので、走行性能だけ考えれば、この組み合わせはとても良い。結局のところ、前後輪ともMarathon Racerにするのがいいんだろうけど、惜しむらくはMarathon Racerのワイヤビード版は絶版になっていることだ。定期的に中古サイトを見て買い溜めておきたいところだが、今となってはなかなか出品されない。再販してくれないかなー。

まとめ。ブロンプトンのタイヤを選択するにあたり、耐久性重視のMarathonをフロントに、走行性能重視のKojakをリアにしてみた。両方をMarathonにしていた時に比べると、乗り味は若干だがKojakをつけたの時の方が良い。平地巡行時には軽く効率的な走りができ、加速時にはキビキビした反応が味わえる。その代償は耐久性の低下だが、これは正直言って予想以上に駄目だった。Kojakの耐久性はMarathonの4分の1くらいであり、コスパが悪すぎる。できれば、Marathon RacerかContactを入手して、それが無理なら大人しくMarathonって感じの運用が良さそうだ。

追記:メルカリでさらに別のMarathon Racerのワイヤビード版を3000円で落札したのだが、同じ16インチ表記でもブロンプトンに適合する349サイズではなく、DAHON等に適合する一回り小さい305サイズであった。ちゃんと確認すべきだったが、下手こいた。どなたかコメント等で連絡くだされば、送料着払いでよければ無料で差し上げます(この文がここに記載してある限り、まだ手元にある)。