豪鬼メモ

一瞬千撃

レンタルバイクのコスパ

原付二種を買って乗り回したいが諸事情でそれができない私のために、レンタルバイクを駆使してバイクを楽しむという方法について、コスパを主眼に検討してみた。


前回CB400SFを借りたのを以ってレンタルバイク行脚は終了して、当面は軽くて小さいバイクで遊べばいいかなという結論になった。ホンダのGrom125とMonkey125とCBR125R、カワサキのZ125、スズキのGSX-S125あたりだ。本当はどれかを購入して乗り回したいのだが、自分の住んでいるアパートにはバイクが置けない。近所に月極駐輪場を借りるという手もあるが、高そうだ。まてまて、結論を出すには、具体的に維持費を算出するべきだ。原付二種のミニバイクを購入して維持していくには以下のコストがかかる。

  • バイク本体=乗り出し諸経費込みで約50万円=3年減価償却で月当たり1.38万円
  • 整備費=オイルや各種消耗品の交換を店に依頼してやって年2.5万円くらい=月当たり0.21万円
  • ガソリン代=年走行5000kmで燃料消費率50km/Lとすると100L*160円で1.6万円=月当たり0.13万円
  • 任意保険=40代、原付二種、走行5000kmまでだと年2万円くらい=月当たり0.17万円
  • 駐輪場代=初期費用償却込みで月当たり0.8万円くらい

となると、合計で月当たり2.7万円くらいになる。本体の償却が最大費目になるのは仕方ないとして、やはり駐輪場代が痛い。目黒区だと、マンション等の空きスペースに備え付けの野ざらしのもので0.8万円くらい、建物の中のバイク駐輪場だと1.5万円からが相場だ。一方で、原付二種なら、整備費とガソリン代と任意保険がやたら安く済むのは素晴らしい。とはいえ、ツーリング行ったら、たとえ高速に乗らないにしても、飯食ったり駐車料金を払ったり各種の遊びをするだろうから、なんだかんだ言って毎回2000円以上は使うだろう。それを月5回やるなら、1万円。そうすると、原付二種を乗り回す趣味には月4万円くらいかかるということになる。当然、今まで通り他にも遊びたいことはあるわけで、追加で2万とかは使うだろう。趣味に月6万円使うのは独身だったら普通だけど、家族持ちには財政規律が必要だ。「お父さんが6万使うなら私も」ってなると困るからね。

話を戻すと、月当たり2.7万円の維持費であれば、レンタルしてもトントンだという説を披露したい。月5回のツーリングをするとしよう。例えばモトオークの原付二種のキャンペーン車種だと、24時間で4900円で借りられる。つまり5回で2.5万円で済む。保険は込みだが、ガソリン代は別なので、0.13万円は別途だ。店舗に行くのに毎回往復交通費500円使うとして、0.25万円も足そう。合計2.93万円だ。自分でバイクを所有するのとそんなに変わらないだろう。初期投資なしで、いつでも始められるしいつでも辞められるのが良い。HondaGoやその他フランチャイズのバイクレンタルの通常料金でも24時間6000円くらいだ。徒歩圏内に店舗があれば交通費を削れるので、コスパはもう少し良くなる。

24時間というプランを使いこなすのがコツだ。24時間プランと1dayプランの違いには注意だ。1dayプランは、その日に借りてその日に返すものだ。店舗の営業時間は10時とか11時とかからなので、それで借りて営業終了時間の7時とか9時とかに返すと、実質8時間とかしか借りられなかったりする。1dayプランは8時間プランと一緒なのだ。それに対し、24時間プランは、1dayプランや8時間プランに1000円くらい追加するだけで使える。であれば、24時間プランにして、前日の閉店間際に店舗に行って借りてきて、それから近所の路駐できるところに置いておくのが良い。そうすれば朝イチから乗り出せて、閉店間際に店舗に戻って返せば、丸一日遊べる。特に冬は昼間が短いので、夜明けとともに乗り出して一日を満喫したい。前日の夜は、ただバイクを停めておくだけではもったいないので、夜の街を流して買い物したり夜釣りや天体観測に行ったりしてもよい。

問題は、夜の間にどこに停めておくかだが、住宅地だと意外に路駐可能な道は多い。駐車禁止の標識がない路地で、交通の邪魔にならない場所は、法的には路駐可能なのだ。あとは地域住民の感情次第で、通報されたり悪戯されたりするリスクが増減する。個人宅の前は避けて、夜の間だけ電信柱の影にひっそり置かせてもらうなら大丈夫そうな場所を予め見つけておくことが必要だ。場所の候補は複数持っておいて、一つの場所に負荷を集中させないようにするとなお良い。車庫以外の同一箇所に長時間(昼間12時間以上、夜間8時間以上)駐車することを禁じる車庫法はバイクには適用されないので、取り締まれられない場所であればいくら長期間停めておいても法的には大丈夫だ。とはいえ、周辺住民の感情を害せば、自分の土地ではないので何が起こるかはわからない。よって、誰にも迷惑をかけないことは必須で、理想的には誰にも気づかれないような置き方をしたい。

盗難のリスクについては別途考えねばならない。バイクが盗難される場所でもっとも多いのは自宅だそうなので、路駐だから特段リスクが上がるわけではないだろう。使う前日の夜だけ置いておくなら、窃盗団が下見する機会がないので、リスクは比較的低いとも言えそうだ。しかし、盗難時には借主が全額補償せねばならないので、油断はできない。バイク窃盗は素人の青少年によるカジュアルな犯行とプロの窃盗団による入念な犯行に分けて考えるべきだ。素人への対策としては、U字ロックや太いチェーンロックで地面や杭にバイクを括る「地球ロック」が有効らしい。油圧カッターやグラインダーがあれば切断できてしまうが、それは素人の所業ではない。プロに対しては、狙われにくい置き場所を探すしかない。引っ込んだ路地で見つけられにくい場所にするか、逆に人通りが多くて犯行が難しい場所にするかだ。いずれにせよ、バイクにカバーをかけて隠す方が防犯の観点では良い。とはいえ、カバーをかけてしまうと、長期的な駐輪である雰囲気が出て近隣住民の感情を害する可能性が増すので、一長一短だ。カバーがかかっていなければ、関係者やウーバーイーツが一時的に停めているのと区別がつかない。

ところで、バイクを夜通し借りておくなら、一泊二日プランでもよさそうだと思うかもしれない。しかし、一泊二日プランは原付二種でも1万円近くかかるので、実質1日しか使わないならばコスパが悪い。実際にツーリング先で一泊して二日間乗りたいならば、一泊二日プランが最適だろう。そうでなく一日だけ目一杯使いたいならば、24時間プランと路駐が得だ。

バイクに金を使っているとしても、バイクを所有していなければ、レンタル等でかかった費用は家計簿上は固定費ではなく変動費として認識される。言い換えれば、家族に見つかって「お父さんだけいつもたくさん金をつかってずるい」となりにくい。頻度と費用を調整しやすいのもレンタルの利点だ。叱責されない程度の頻度から初めて、徐々に増やすことができる。怒られたり飽きたり、シーズンオフになったりすれば、いつでも休止できる。実際のところ、真夏や真冬にバイクに乗るのは苦行でしかないので、春や秋だけ乗るというのは賢い選択だ。

あと、レンタルの運用だと常に最新かつ整備されたバイクに乗れ、車種もとっかえひっかえできるのが良い。所有したバイクはどんどん経年劣化し、また適宜点検して整備しなければならない。ただ、苦楽を共に味わって乗るほどに味が出てくるというのは所有した場合にのみの喜びだし、カスタマイズの楽しみも所有ならではだ。個人的には125ccのミニバイクをさらにローダウンしてミニSLみたいな気持ちで乗り回したいのだが、それはレンタルではできない。いつだって乗れるのも所有バイクの利点だ。しかし、逆に日常の移動モードとしては自転車を使う方が健康には良いので、敢えて普段は乗れない状態にするのはレンタルの良さとも言える。とはいえ、店舗までの往復と、返却時間に追われてツーリングの計画を立てるのは面倒だ。

レンタル料金と排気量の関係が興味深い。例えばHondaGoバイクレンタルの24時間プランだと、50ccで4000円、125ccで6000円、250ccで11500円、400ccで13000円、950ccで18000円だ。数字だけ見ると排気量の対数との相関が強そうだが、実際には車体価格と保険費用に支配されているのだろう。いずれにせよ、125ccと250ccの料金が約2倍になっているのに着目すべきだ。ここでコスパが大きく違ってくる。250cc以上を月5回も借りるのは得策ではない。一方で、125ccのコスパは素晴らしい。確かに125ccのバイクは80km/hくらいしか出せないが、250ccだって下道では現実的にはせいぜい80km/hまでしか出せない。車体が軽いので、街乗りの快適さは125ccの方がむしろ良いくだいだ。とはいえ、ロングツーリングや山道では250ccの方が快適なのは間違いないし、ドバッと加速してキュキュっと減速してグィンと曲がる躍動感は大排気量のバイクならではのものであり、そして高速道路に乗れる利便性も中型以上でないと享受できない。小型には小型の良さがあるが、それだけでは味わえない世界もある。アドレナリンの出る走りを楽しみたい時は中型以上のバイクを借りて、お気軽に楽しみたい時は小型バイクを借りればよいのだ。

まとめ。都会に住んでいてバイクを所有するのに二の足を踏んでいるが、週末にはツーリングしてみたいという紳士淑女には、原付二種を24時間プランでレンタルして楽しむという道がある。ヘルメットさえ持っていれば、気軽に始められる趣味だ。月5回のツーリングでレンタルと所有のコスパが同じくらいになり、それ未満の頻度なら所有するよりレンタルの方が安い。持ち家だったりアパート備え付けの駐輪場が利用できる場合、その閾値は月3回のツーリングくらいになるかな。もちろん通勤通学で乗る境遇であれば所有一択だが、大都市圏だとあんまり現実的ではない。結局のところ、それなりの頻度でバイクに乗るつもりがあり、バイクを所有する余裕があるなら、所有すべきだと思う。ただ、たとえそうでなくても、同程度のコスパでツーリングを趣味にすることは可能であるというのが本稿の結論だ。