豪鬼メモ

一瞬千撃

グロム125で奥秩父ツーリング

小型バイクGrom125を借りて、奥秩父までツーリングしてきた。三峰神社、滝川ダム、小鹿バイク神社など。下の写真は三峰神社で久しぶりに手持ちSTFモードを使ってみた作例。


レンタルバイク行脚をした中で最も気に入ったのがホンダのグロムである。排気量123cc、最高出力10馬力と非力なのだが、車体が軽くて取り回しがしやすく、そしてレンタルのコスパが良く、さらに燃費が抜群に良い。しかし、先々週にCB400SFを乗った後なのもあり、今回グロムを乗り出してすぐ口をついたのは、「軽!遅!安!」であった。中型バイクに比べれば軽くて遅いのは重々承知していたが、改めて感じたのは、タンクカバーのプラスチックの安っぽさだ。まるで幼児が乗るキャラものの自転車の外装のようだ。高級感とか所有満足感みたいなものは微塵も醸し出さない。だが、それがいい。幼児にとってのキャラ自転車のように、児童にとってのブレイブボードやスケボーやキックボードのように、大きいお友達はグロムというオモチャを使い倒すことで価値を見出すのだ。グロメットに由来する名前や、車体の外観がインラインブレードやスケボーを彷彿させるものになっているのは、そのような開発者の意図からだろう。それに、カブと同じエンジンを積んでいるのだ。飾って楽しむものじゃない。

今回借りたグロムにはスマホマウントがついていなかったので、自転車につけているラバー製のスマホホルダをハンドルポストのところにつけてみた。この使い方はなかなかよい。ハンドルポストの台が平坦なのでスマホが見やすい角度に定まる。かなり低い位置に設置されるので、ナビを見ながら運転するには見づらいことになるが、運転中はナビを見ないようにするのにちょうど良い。むしろスクリーンを消しておいて、信号待ちなどでたまに見るくらいが良い。ツーリング中は景色や交通状況を見るべきであり、ナビの奴隷になってはいけない。また、この位置だとバイクの振動がもろにスマホに伝わる形になるが、グロムは単気筒の割には振動が少ないし、高速道路に乗ることもないし、ラバーがクッションになるので、少なくとも私のスマホは全く問題ないっぽい。

24時間プランにして前日夜に店で借りて近所に停めておいたので、朝6:30から乗り出すことができた。21時までに店に返せば良い。たっぷり時間があるおかげで、レンタルでありつつ、寄り道し放題だ。まずは気になっていた東京で最も急勾配の坂とやらに行ってみた。多摩湖の南の住宅街の中にあるのだが、確かにこれはやばい。奥にある階段になっている部分が以前は車道だったからこの斜度の看板があるそうだが、看板がある部分は37%(atan(0.37) = 20.3°)ほどの勾配はない。逆に奥の階段の部分は37%どころじゃない。

気持ちのよい朝だったので、多摩湖狭山湖の周辺を流した。後で気づいたのだが、実は二輪通行禁止の区間を通ってしまっていた。ローリング族的な人々への対策で周遊道路が二輪通行禁止になっていたらしい。筑波山みたいだな。この点では北関東と同じ括りに。ともあれ、狭山湖から見える富士山は素晴らしい。

所沢、入間、飯能を超えて、小学校の遠足で何度か来た高麗駅。天下大将軍・地下女将軍のトーテムポール的なオブジェは昔から変わっていない。高句麗からの渡来人だか帰化人だかの里がこの近辺にあったのが由来だそうな。

遠足で巾着田と日和田山に行ったことも思い出したので、行ってみた。ドレミファ橋がもはや飛石ではなくなっていたのは残念だが、バリアフリーの流れには逆らえないのだろう。

そこからは国道299号をひたすら走って秩父方面へ。道が空いていたので気持ちよく走れた。グロムのパワーでは、法定速度を越える流れに乗って走るのに必要十分でありつつも、急加速できないのでスリリングな走りになり得ないのが逆に良い。秩父を超えたら、209号と140号に乗って大滝村方面へ。ここらの道は山道ではあるが勾配もカーブもなだらかなので、ワインディングを楽しみたい人には物足りないかもしれない。一方で、二瀬ダムを越えると、なんかやたら勾配とカーブがきつい道を通って三峰神社に向かうことになる。ほぼ三峯神社のためだけにこの道が整備されているのが凄い。


三峰神社に到着。立派な鳥居やら本殿やらヤマトタケル像やらがある。驚くべきは、参拝客の多さだ。こんな山奥の奥までよく来ようと思ったものだ。私もだが。幼少の私にとって西武池袋線の終着である西武秩父駅は地の果てという認識だったが、そこからさらに秩父鉄道に乗り換えた終着である三峰口駅からも車で40分という凶悪な位置なのに。




私にとっての地の果てを更新するという目的は達成された。ツーリングは心の地平線を広げるのだ。あとは適当に峠を走ってから帰ろうと思ったが、小鹿野町にバイク神社があるということで、寄ってみた。行ってみると、確かにバイクの参拝客で賑わっていたが、神社自体は普通の中規模の神社だった。なんか霊験あらたかな伝説でもあるのかと思いきや、そういうわけでもないらしい。

ここで唐突に、もう一つ目的地があったことを思い出した。滝沢ダムに至る雷電廿六木橋(らいでんとどろきばし)なるループ橋を走ってみたかったのだ。大滝村方面にかなり引き返すことになって二度手間だが、初志貫徹で同じ峠道を戻って向かった。苦労の甲斐あって、このループ橋をバイクで通り抜けるのはなかなか新鮮な体験だった。モノレールの線路に侵入したみたいな気分になる。惜しむらくは、グロムにパワーがなさすぎて、上りはゆっくり走る感じになってしまうことだ。


滝沢ダムは、まだ完成して10年ちょいと新しいこともあり、なんだかモダンで巨大で立派な構造物であった。エレベーターや階段でダムの下まで行けるので、見学しがいがある。

山間地域は、山に遮られて日没が早い。そして、標高が高いので、その後は猛烈に寒くなる。かなり厚着して出かけたのに、夕方になると寒くなってきてしまったので、即座に帰路についた。秩父に戻った時にはもうすっかり夜で、あとは芯まで凍えながらひたすら209号を走って下山した。クラッチを握る力が怪しくなるくらい手が凍えたけども、休んでいてはさらに気温が落ちて寒くなるので、走るしかない。ツーリングは人を成長させるのだ。やっとのことで所沢くらいまで戻ると、妙に暖かいと感じた。ついでに、もはや実家はそこにはないが、幼少時によく遊んだ団地で記念撮影。お母さん、息子はバイクでここに来られるようになりました。レンタルだけど。

そして高円寺のバイク屋まで戻ってバイクを返却。その前に恒例の燃費チェック。今回は313km走って、燃料消費率は78.1km/Lだった。前回乗った時の83.2km/Lには及ばなかったが、それでもさすがはグロムさんという結果だ。山道バンバン走ってもカタログ超えの燃費の低さで、このガソリンがクソ高いご時世でも、711円の支払いで済んだ。ギアをガンガン上げて低回転(3000RPMとか)に徹するのが低燃費走行のコツだ。インジェクションの燃調プログラムが多少の調整をするとはいえ、基本的に燃料消費量は回転数に比例するからだ。前に車が詰まっていて速く走ろうとすることが全く無意味になる場合、低燃費走行を徹底するのも一興だ。低回転でゆっくり加速して、速度が十分に上がったらクラッチを切って、アクセルもエンブレもかけずに惰性走行する。信号等で停止することが察知されたら、その瞬間に惰性走行に切り替える。ただ、他の車種で低燃費走行をやってもグロムほど低燃費にはならないので、やはり新型のグロムやカブに使われているロングストロークの新エンジンが優れているように思う。グロムに乗るなら、大抵の場所に行くのに、電車より遥かに安く済む。おそらく自分でギアを選べる分、慣れればカブより低燃費走行がしやすいだろう。

今回は一日で300km以上の距離を走ったが、ケツが痛くなることはなかった。旧型のグロムはシートの形状が悪かったらしいが、新型(JC92)のシートは普通にケツに優しい。ただ、幅広な分だけ足つきが悪くなっているのはイマイチかな。エンジン由来の振動で手が痺れることもなかった。単気筒だから振動は大きいはずで、グロムの振動はひどいというレビューも見かけるが、燃費向上のための低回転走行をしている限りは、振動は全く問題にならない。そして、法定速度には余裕で達しつつも、道中で出会う走り屋っぽい人々と張り合う速度は全く出ないので、安全だ。よって、グロムは下道ツーリングには最適なマシンだ。タイヤが太めだからか、軽い車体でトレール量も小さい割には、旋回性と直進安定性のバランスがちょうど良い。今回はむしろ安定しすぎて曲がりにくいと感じたのだが、多分私の運転技術の問題だろう。グロムにすらちゃんと乗れなかったら他のバイクでもどうしようもない。

まとめ。グロムは改めて良いと思う。車体も比較的安いし、レンタルしても安いし、燃費もいいし、車重が軽い。それでいて普通に走って山方面のツーリングもこなせる。スポーツ走行もできる高コスパ実用車だ。グロムは客観的に見れば遅いバイクなんだけど、しばらく乗っていればそれが普通になって、遅いなりにうまいこと工夫して走るのが楽しくなってくる。街ではATのスクーターに抜かれまくり、峠では中型や大型に抜かれまくるわけだが、彼らを追いかけるのが楽しいのだ。