トキワ荘マンガミュージアムに行ってきた。かつて手塚治虫や石ノ森章太郎などの漫画家が住んでいたトキワ荘という木造アパートを復元した博物館だ。建物は鉄筋コンクリート製で全ては復元なのだが、当時の雰囲気を再現しようとかなり頑張っていて好感。トキワ荘に関しては全例をSTFモードおよびクラシッククローム風仕上げで現像した。
建物の中は、1階は特別展示室で、2階部分は常設展示で当時のトキワ荘の各部屋を再現したものになっている。共用トイレの再現にとても力を入れているのが印象的である。廊下が思ったより広いけど、おそらくこれは来場者の誘導や展示物の搬入の都合でそうせざるを得なかったのだろう。
共用の台所もレトロ感が再現されていて良い。江戸東京博物館みたい。ラーメン大好き小池さんのモデルである鈴木伸一も藤子不二雄とここに住んでいたそうで、ちゃんとラーメンの残骸が再現されている。
漫画家達の作業場も細部まで凝っている。ハイライト煙草、チオビタドリンク。昔はホワイト修正液がなかったからナイフで削って線を消していたのとか胸熱。PC作業が一般化した今では、インクペンで書いたりスクリーントーンを貼ったりする技術すらもうロストテクノロジーになりつつあると思うと、博物館って大事よね。
クラシッククローム仕上げだと古ぼけた感じを強調できるが、STFモードがボケ質を完璧にしてノイズもほぼ完全に消し去ってシャドーもハイライトも粘らせてくれるおかげで、古いんだか新しいんだかよくわからない絵がでてくることになった。被写体が実際に古いわけではなく再現物なのもあって、やたらテーマパークっぽいアルバムになったかな。
1階の特別展示では鉄腕アトムの展示をやっていて、これがなかなか面白かった。60年前に放映されたアトム第1話に大勢の大人が黙って見入っているのが印象的だった。展示に説明があるのだが、手塚が日本のアニメ制作にもたらせた最大の功績は、徹底的なコストダウンでアニメの価格競争力を上げてテレビ放送に定着させたことだそうな。本来24FPSで制作するアニメを8FPSにまで落としたり、口などのパーツだけを動かしたり、キャラクターや背景のセルを何度も使いまわしたり。それなのに、ちゃんと面白いというのがすごい。白黒だし、カクカクな動きだけど、第2話も普通に楽しみになるくらいに。
別の日、横浜の山下公園を歩いていたら、赤い靴はいてた女の子の周辺の工事が完了していた。先日やったSTFモードのボケ方の比較をもう一度やってみた。45mm、25mm、15mmの順で載せる。
やはり効果が大きいのは中望遠の45mmの例で、逆に広角の15mmは効果が少ない。ただ、この例に限って言えば、45mmの背景はボケが大き過ぎる嫌いがある。背景に何があるかわからないほどぼかしてしまうと、どこで撮っても同じということになってしまう。その意味では、25mmの例の方が好ましい。もちろん、どの程度ボケるかは主要被写体の距離と背景の距離の比率が関係してくるので、どのレンズのボケ量が望ましいかは状況によって異なる。でも、なんだかんだ言って標準画角のレンズが私には使いやすいと改めて感じた。
横浜の西洋館にも行ってみた。ここでもSTFモード炸裂。被写体が古くても、クラシッククロームと相性がよくないことがわかったので、普通に今風に仕上げた。
よくレンズのレビューで出てくるタイプライターもSTFモードで。15mm、25mm、45mmの例。このボケが実際のレンズで撮れたら絶賛されるであろう。
大桟橋の飛鳥2もSTFモードで。ほとんどボケ表現がないような絵だが、それでも微ボケが改善されてダイナミックレンジも稼げるので、しっとり感が違う。
おまけ。下北沢のクレープ屋アンドレアに久しぶりに行った。やっぱ食べ応えがあって良い。ところで、Leica Summilux 15mm F1.7はF2.8くらいで撮るとマジでよく写る。
色ノリという概念がいまいちよくわかってない私だが、このレンズは自然光下で撮るとシアンもしくはマゼンタが良く出るような気がする。前にやったLED光の実験だと差がなかったけども、自然光だと違うのかもしれないと思い始めてきた。特に空が入る風景を撮ると、このレンズはスカッと爽やかな写りをしてくれるような気がする。これで軸上収差が少なければ完璧なレンズなんだけどなぁ。
それに比べると、オリンパスのレンズは黄緑が強く出る気がしている。これはM.Zuiko 25mm F1.8の例。
レンズを通過する光の色は分光透過率で決まり、最終的にはRGBの各チャネルの強度になるわけだから、ホワイトバランスを調整して色のりの偏りは相殺できそうなものだ。色温度をちょっと低くして、ティントをマゼンタに傾けてやれば、ほら、ライカっぽい。
逆に15mmの作例の色温度を下げてティントをグリーンに傾けたら、ほら、オリンパスっぽい。オリンパスのレンズはオリンパスブルーとか言って青が強く出るとかいう話もどこかで読んだけど、どっちかって言うと黄緑なんじゃないかと思っている今日この頃。メーカーではなくレンズによるって話だとは思うが。
結局のところ、色のりってホワイトバランスの設定に帰着するのかな。いや、ホワイトバランスやカラープロファイルはグローバルな設定しかできないのでそれは言い過ぎか。被写体毎のスペクトルと分光透過率の相互作用で被写体毎のRGBデータが決まるのだから、RGBになった後のデータに干渉するだけでは分光透過率を完全に相殺することはできないような気もする。まあともかく、レンズの違いを加味してホワイトバランスを調整するのも手だなと思う。