妻の父の実家が長崎だそうで、そこでの話をよくされるので、いつかまた行こうと思っていた。東京から長崎に行くとなると飛行機を使うことになるわけで、わざわざ飛行機に乗るとなるとどうしても沖縄とか海外とかに行きたくなってしまう癖がある当家としては、今まで長崎に行く機会がなかったのだ。しかし、手持ちのマイル的に丁度良いということがわかり、機会が巡ってきた。春休み4泊5日の旅。結論としては、長崎ばりよかとこ。
港と坂の町だということは知っていたが、稲佐山にある展望台から見下ろすとそれがよくわかる。持っててよかったBCL0980。
街の俯瞰図を残したいなら、換算30mm画角のSummilux 15だと狭い。こういう時は、換算24mm画角かより広いのを持ちたくなる。ちなみにこの旅行の間はずっと強い春霞がかかっていたので、抜けの良い遠景を撮るのは厳しかった。しかし、raw撮りしておいて、かすみ除去をかけた上で、ブラックを下げて黒を締めると、そこそこ見られる絵になる。
稲佐山の展望台は高さ333mだそうで、風を直に感じつつ街や港を見渡せて気持ちがいい。長崎に来たら必須の場所だ。
夜までいると、夜景も楽しめる。今回は霧であまりよい絵にはならなかったが、モナコと香港に並ぶ世界三大夜景だそうな。人工灯の光量から言えば六本木ヒルズの方が上だし、高さは東京スカイツリーの方が上だが、333mもの高さから窓越しでなく直で見られるというスリルはここでしか味わえないだろう。
長崎の市街地はいわゆるコンパクトシティで、徒歩や公共交通機関を利用して短時間で名所を巡れるのがいい。チンチン電車が縦横に走っていて趣がある。
眼鏡橋。下に凸の台形の石を並べることで荷重を水平の圧縮力に変えるアーチ構造に関して蘊蓄を語るための場所である。
平和公園。ここははしゃぐところではないので、子たちに原爆の恐ろしさを真面目に語る。
説明員のボランティアの方によると、この平和記念像に至る前に、爆心地公園の方を先に訪れるべきとのこと。そこで破壊の壮絶さと犠牲者の方々の心情に思いを寄せてから、噴水やその他のモニュメントによるある種の追体験を経た上で、最後にこの祈念像の前で何を感じるか、という枠組みだそうな。ちなみにこの像の正面は爆心地の方向なので、噴水の方向からではなく、この写真のようにちょっと右から撮るのが最善らしい。
世界遺産、大浦天主堂。250年振りの「信徒発見」のエピソードは信者でなくてもぐっとくるところだ。
グラバー園。残念ながらグラバー邸は修復工事中だったのだが、近代の長崎の歴史が身近に感じられてよかった。
今回の目玉。世界遺産、軍艦島の上陸ツアー。まずは軍艦島ミュージアムで蘊蓄を身につけることから。長崎に来る前から軍艦島とはなんたるかを軽く語っておいたのもあって、子達の食いつきもよかった。世界最大の人口密度だった炭鉱の島。シムシティ好きの私としてはアルコロジー的な雰囲気があって胸熱だ。
そして、船で長崎港の景色を見つつ現地に向かう。途中で見られる造船所の一部も世界遺産である。
女神大橋の下を通過。別に女神はいなかったが、美しい橋だ。
そして見えて来た軍艦島。確かに遠目だと軍艦に見える。ちなみにこの時も春霞がかなり濃かったが、現像でカバー。ブラック下げ下げ。
天候が許せば、周遊して島の反対側も見せてくれる。この角度がもっとも軍艦らしいそうな。あまりに軍艦っぽいから米軍が間違えて魚雷を打ち込んだという都市伝説もあるらしい。
廃墟が、美しい。ここに5千人以上住んでいて、学校も病院もデパートも赤線地帯もあった。そしていまは誰一人いない。
上陸できるのは波が高くない時のみらしいが、この日はベタ凪だったので余裕でいけた。ラッキー。
島の上で行動できる範囲は極めて限られていて、もちろん建物の内部には危なすぎて侵入できない。それでも、マッドマックスやら猿の惑星やらの世界に来たみたいで不思議な気分になるには十分な廃墟だ。ガイドの人が説明してくれる炭鉱事故のエピソードが悲しい。
港に戻った後、軍艦島ミュージアムに再入場して見て回る。午後だとかなり空いていて、元島民のスタッフの人に当時の話を聞くこともできた。その方に、単身労働者だけ受け入れれば妻子の分の生活空間や資源を節約してもっと効率化できたのではないかと聞いたところ、面白い答えが返って来た。炭鉱の過酷な労働環境では、背負うものがある人たちでないと長続きせず逃げ出してしまうことが多く、妻子持ちを受け入れるのが必然であったと。やっぱりどんな仕事でも覚悟って大事なんだなあと考えさせられた。
あ、なんか知ってる装置が。同じ部屋で展示されている高橋昌嗣という写真家の作品がめっちゃ良かった。
諫早市の白木峰高原にも行って来た。菜の花と桜の組み合わせは今だけ。
10万本のアブラナの黄色が目に焼きつく。遠くに諫早湾の干拓地も見える。
上の子がムツゴロウを見たいというので、干潮を狙って佐賀の道の駅鹿島にも来て見た。ここは潮位が6mも変動するらしく、干潮時には広大な干潟が出現する。
しかし、待てども待てどもムツゴロウは出てこない。事前の調べによると4月からは出るとあったのだが、道の駅の人に聞いたところ、まだ水温が低いからいないかもということらしい。残念。桜とムツゴロウは同時には味わえないというのが今回の教訓。
諫早湾干拓事業の水門にも来てみた。反対派が政府を訴えて福岡高裁は水門を開けるように命令し、賛成派も政府を訴えて長崎地裁は当面開けてはならないと命令したが、どちらが優先されるかは規定がない、という蘊蓄が私の大変なお気に入りなので、もう3回くらい子に語ったような。ある意味、社会の失敗の聖地。
出島。周りが埋め立てられてもはや島じゃなくなっているが、ここの資料もかなり楽しい。「この橋のたもとには天草四郎の首が晒されていたのだよ」と嬉々として語るスタッフのおじさんが印象的だった。
おまけ1。妻の祖父の墓参りと掃除をした。子達にとっては初の体験だが、意外にせっせと働くのに感心した。私も自分の一族の墓参りはしたことがなかったので、掃除するなんて知らんかった。こりゃなかなか大変だ。
おまけ2。茂木港の猫。地元の釣りのおじさんにもらった生きた魚をあげたら、バリバリと音を立てて喰っていて、やっぱ猫には魚だなと。
長崎には独身のときに二度来ているので、知っている場所もあったが、新たな発見も多かった。今回の旅程が妙に社会科見学っぽいのは、そう意識したからである。いろいろな場所を旅すると社会に興味を持って得意になると真面目に塾に言われているのだ。成績のことは別にしても、世界を知りたがる好奇心旺盛な子には育てたいので、ちょくちょく国内旅行に出るのは賛成である。リゾート地に行くばかりが旅じゃない。廃墟や防空壕や干潟や水門を見るのもまた楽しい。
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