豪鬼メモ

一瞬千撃

M.Zuiko 12-100 F4の試用

マイクロフォーサーズの高倍率ズームレンズで最も評判の良いM.Zuiko 12-100mm F4をレンタルして3日ほど使ってみた話。
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12-100mmという焦点距離はフルサイズ換算で24mm画角という広角域から200mm画角という望遠域まで扱えるわけで、日常の記録という用途では十分すぎるほとのズームレンジを備えていると言えそうだ。ポートレート撮影の快適距離で言うと、12mm / 13mm * 1m = 0.92m から 100mm / 13mm * 1m = 7.69m ということになる。子供の全身を収める撮影で1mより近くから撮ることもそうそうないし、10mも離れて撮ることもそんなにないだろう。

ただ、年に何回か、10m以上離れて撮らざるを得ないことがある。その一つが運動会だ。徒競走やリレーのゴールに関しては、そこから10mくらいまでは接近できることが多いし、アップでなくその半分の大きさで写すことにすれば20m離れてもよいことになるので、M.Zuiko 45mm F1.8でも場合によってトリミングすればそれなりの写真が撮れる。事実、去年の運動会はそれで不満はなかった。しかし、玉入れ、綱引き、騎馬戦、組体操、その他ダンス系の種目では、自分が陣取った場所の近くに我が子が来るとは限らず、トラックの中央や反対側にまで行ってしまうこともある。そういう場合には換算200mm画角が便利だ。一周200mのトラックの曲線部分の半径が16mくらいであることを考えると、8mくらいまでをアップで撮れる換算200mm画角までのズームというのは必要十分と言えるだろう。フィールドの反対側に被写体がいるような場合はたとえ画角が合わせられても撮影が難しいから、どんなレンズを持っていようが撮影位置の確保は重要なのだ。

そんなわけで、運動会用にM.Zuiko 12-100mm F4を買うことも考えたのだが、まずはレンタルで使ってみることにした。撮影位置に厳しい制約があって被写体の動きも激しいイベントは運動会くらいしかない。短時間で有益性を判断できる良い機会だ。2泊3日のレンタルで8400円で借りられたので、年に何回かしか使わないというのであれば減価償却を考えるとレンタルの方が安上がりとも言えるわけで、大きさ重さ価格を考えると、おいそれと買うものではない。それ以外のシーンでも使いたくなるレンズかどうかは、使ってみてから判断すべきだ。
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店舗でレンズを受け取った帰りの道中に早速試し撮りしてみたのだが、各所のレビューでも言われている通り、よく映るレンズであった。どの焦点距離でも解像力に不足を感じることはなく、広角端で撮っても画面周辺の流れがなく、望遠端で撮ってもピント面周辺の軸上色収差や画面周辺の倍率色収差がほとんど視認できない。写りに関しては文句のつけようがない。日常使いの全ての画角をカバーできるという安心感とともに、画質を気にして焦点距離や絞りを調整する必要がないという安心感を与えてくれそうだ。大きくて重くて高いのに耐えられるなら、このレンズを選ばない理由はないと思った。換算24mmから換算200mmまでカバーするズームレンズは他にはないし、フルサイズ機で24mm-105mmのズームは同等以上に大きくて重くて高いのだから、その意味では小さめで軽めで安めだと言えなくもない。
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12mm、25mm、50mm、100mmと刻んで遠景を撮ってみると、ズームレンジの広さがよくわかる。これを持っていけば旅行先の撮影で困ることもなさげだ。この日は空気が靄ってたので、遠景だと解像感の判断はできないかな。
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近景でも同じことをやってみた。今度は12mm、17mm、25mm、35mm、50mm、100mm。こうしてみると、12mmの広さは人間の自然な視野を大きく超えていて、また100mmは人間の目の解像力を大きく超えていることがよくわかる。そしてその間を任意に刻めるズームレンズは便利だ。広角の例の画面左の木立にちょっと色収差っぽいフリンジは見えるが、かなりよく見ないとわからないレベルだ。
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しかし、やっぱ大きくて重くて高い。E-M10につけると、カメラにレンズをつけているというよりは、レンズにカメラをつけているみたいになってしまう。値段的にも大きさ的にもカメラ本体を圧倒している。こんなに重いと低い位置からでも落としたらすぐ壊れるだろうし、ストラップが揺れて何かにぶつかっても壊れそうだし、その際の費用も痛すぎるから、日常使いって感じにはなりづらいレンズではある。それに比べるとF1.8単焦点シリーズのなんと可愛らしいことよ。
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散歩しながら子供を撮ってみた。構図が決まっていない時にはとりあえず焦点距離を25mm(換算50mm画角)に設定しておくと、やはり撮りやすい。
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18mm(換算36mm画角)とかにして寄って撮ると、臨場感というか親近感が出る。レンズを付け替えないでもいろいろ試せるのは結構楽しいな。
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密着取材的に状況を描写するには12mm(換算24mm画角)が便利だ。
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単焦点レンズをつけたE-M10をぶら下げて子供と歩いていても、「お父さんなんだな」と周囲に思われるであろうが、12-100のようなでかいレンズを子供に向けているとちょっと不審度が増すような気がする。気のせいだといいけど。35mmと100mm。
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開放F4という絞りはボケを作る上では不向きなんだろうけど、望遠端100mmでもF4を維持しているのはなかなかすごいことだ。背景と被写体が離れていればF4でもそれなりにボケる。
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逆光耐性はかなり良い感じな気がする。さすがに太陽を画面に入れるとちょっとフレアが出るけども、原色系のゴーストがでるわけじゃないので、許容範囲だ。逆光気味の場合のコントラスト低下も穏やかな感じ。
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レンズ内臓の手ぶれ補正がなかなか強力だ。センサー側の手ぶれ補正機構と協調して動作する5軸シンクロ手ぶれ補正に非対応のE-M10でも、広角端ならシャッタースピード2秒くらいで撮ってもシャープな絵が撮れる。
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家の中の生活を撮るにはあんまり向かないかな。F4では蛍光灯光源下では手ぶれ補正があるにしても被写体ぶれを嫌って感度をISO800とかにあげたくなるし、背景に価値がほとんどないから、被写界深度が大きいメリットがない。
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肝心の運動会では、期待通り、大いに役立った。望遠端まで出せばトラックの真ん中くらいまでなら観覧席から撮っても迫力のある写真が撮れる。広角端まで引けば会場全体を写すのも容易だ。レンズ交換なしで画角を変えられるのは、競争や隊形移動の激しい演技でも難なく撮れるので非常に便利だ。ここに挙げられる例は少ないが、リレーも玉入れも騎馬戦もダンスもバッチリ撮れた。
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うーむ。このレンズ欲しいなぁ。旅行とかの時でもあったら絶対便利だ。ズームレンジの広さだけでなく、色収差がほとんど感じられないスッキリした描写が気に入った。でも、今持っているMZ45、MZ25、LS15の組み合わせで幸せに生活していて、それより広角やそれより望遠が必要になることはほとんどないのは事実。その金で別のカメラも買える値段だし、悩ましい。レンズ沼とかいう不健康自慢をするほど余裕はないし、困ったものだ。