豪鬼メモ

一瞬千撃

ブロンプトンの左右差を真面目に測る

ブロンプトンの車体中心線からペダル中心までの距離を測ったら、私の車体では、左右で18mmも差があった。左足が遠いのだ。その計測過程と是正策について述べる。


自転車の形はギア等の機構の関係で左右非対称なのだが、折り畳み機構を備えるブロンプトンでは左右の差がより大きいと思われる。人間の体だって完全な左右対称というには程遠いので、自転車の形に多少の左右差があったって何てことはないのだが、どのくらい差があるのかは知っておきたいところだ。なので、実機でちゃんと測ってみることにした。Q-factorとスタンス幅の測定は以前もやったのだが、今回の方が真面目にやった。

上の写真のように、クランクを敢えて同じ方向に向けてつけて、各所の間隔を物差しで測った。純正クランクと純正ペダルの組み合わせで測ってから、私の今の装備であるスギノRD2と三ヶ島アーバンプラットフォームの組み合わせでも測った。結果をまとめたのが以下の図である。測定作業は車体をひっくり返して行ったが、以下の図は反転して上が進行方向で左右の方向も正しくしてある。

純正の方から考察しよう。まず面白いのは、チェーンリングがある右側ペダルの方が車体中心線に近いことだ。チェーンリングのせいで右側の方が遠くなると思っていたので、これは意外だった。そもそもBBの筒が左に寄っていて、さらにBBのテーパー長も左側の方が長い。結果として、テーパーの先端は左が中心から65mmの位置にあり、右が53mmの位置にある。なお、純正BBのシャフト長の119mmなのが仕様なので、実測で53+65=118というのは妥当な値だ。

クランクの角度は左右で微妙に違うのだが、左はペダルの根本とテーパーシャフトの先端が18mmの差になる突出をして、右は同じように24mmの突出をする。つまりクランクの角度は左の方が浅く、右の方が深い。これはチェーンリングの存在が理由であろう。ここで左右差が6mm縮まる。結果として、左ペダルの根本は中心から83mmで、右ペダルの根本は中心から77mmになる。この二つの値を足したのがQ-factorであり、純正だと160mmということになる。

左ペダルだけに折り畳み機構があるせいで、ペダルの根本から足の中心までの距離で左右差は広がる。左は折り畳み機構のせいで足の置き場までの距離が18mmだが、右にはそれがないので6mmだ。ここで12mmの差がつく。結果として、左足の中心は車体中心から151mmの距離になり、右足の中心は車体中心から133mmの距離になる。その差は18mmもある。

18mmというのは敏感な人には感じ取れる差だろう。右足は垂直に近く下ろせるのに左足は妙に遠くて力が入れにくいという感じだろうか。ちなみに私は今までそんなことは気づきもしなかった。なので、レースに出るのでもなければ気にしなくていいのだろう。以前にキャスター角等のジオメトリについても検討したが、左右差については考えもしなかった。とはいえ、左右差が大きすぎると関節痛などにつながる恐れもあるため、可能であれば是正したい。

左右差を埋めるにはどうするか。理想的には、BBシェルにスペーサを噛ませて、右に9mmほど寄せればいい。そうすれば左のQ-factorが9mm減り、右のQ-factorが9mm増えるので、左右差が完全に解消できる。しかし、左テーパーの遊びが9mmもあるわけじゃないので、これは現実的ではない。まずは、ペダルを左右対称のものに変えるのがよい。そうすると、左右差は12mm減って6mmになる。その6mmを減らしたいなら3mmのスペーサをBBシェルに入れればいい。あるいは、右ペダルの根本にスペーサを入れてもいい。というか、BBシェルのスペーサで左右差を解消することを前提に、BBシェルのテーパー長が左を長めに設定されているような気すらする。その辺りの調整は販売店でやってくれていれもいいのにと思うが、まあ今まで左右差に気づかなかった自分が言うのもおこがましいか。

RD2クランクとMKSペダルをつけた私のケースでも同じ考察をする。テーパー先端の時点で左65mmと右53mmで13mmの差があるところまでは同じだ。左クランクはそこから21mm突出する角度で、右クランクは23mm突出する角度だ。RD2の方がクランクの対称性が高いらしい。で、ペダルは完全対称で、左右とも根本から22mmのところから足を置ける。Q-factorは左が86mmで右が76mmの合計162mmだ。スタンス幅は左が148mmで、右が138mmなので、合計286mmだ。左右差は10mmということになる。純正と比べると、クランクが対称的なおかげでBBの左右差があまり縮まらずにQ-factorの左右差が10mm残るというのが特徴的だ。私の構成で左右差を解消するなら、BBシェルに5mmのスペーサを噛ませればよい。

BBシェルやクランクの位置を調整するにあたっては、チェーンラインの角度のことも考える必要がある。フロントのチェーンリングの車体中心からの距離とリアのスプロケットの車体中心の距離が同じであればチェーンラインがギアの回転面と平行になって機械損失は最低になるが、そこから離れるほどに機械損失が増える。とはいえ、変速の際にどうしてもチェーンラインは傾くものなので、あんまり厳密に考えても仕方がない。自分がよく使うギアの組み合わせのチェーンラインがなるべく平行になるようにしたいというだけだ。BBシェルにスペーサをつけた影響でチェーンリングが外側に来すぎたなら、チェーンリングにスペーサを噛ませて内側に寄せるという手もある。純正はインナー(アームより車体側)取り付けなのでこれが可能だ。アウター(アームより外側)取り付けの場合はこの方法は使えない。

ブロンプトンの純正BBシェルの軸長は119mmとかなり特殊だ。BBの筒が68mmなので、余りの51mmがテーパー部分の左右を合わせた長さとなる。おそらく左が26mmで右が25mmという内訳だが、私の車体では想定より深いところまで捩じ込んでしまったおかげで、左28mm、右22mmという測定値になっている。これを仕様通り左26mm、右25mmに修正するだけでも、左右差は4mm減る。ところで、BBシェルを換装する場合、118mmで代用することができる。その場合、新しいBBのテーパー長は普通は左右とも25mmだろう。それを仕様通りに取り付けた場合、左右差はさらに1mm減る。チェーンリングのクリアランスが問題になるのは右側なので、左が少し短くなるのは問題ない。よって、118mmで全く困らないはずだ。なので、私の構成の場合、BBシェルを118mmに換装したついでに2mmのスペーサをつければ左右差が9mm減って1mmになるはずだ。Q-factorが2mm増えるのは左右ペダルの1mmのスペーサを外して相殺できる。折りを見てやってみよう。

おそらく、個体差が相当あると思う。モデルによっても違うだろうし、製造ロットによっても違うだろうし、組み付け作業をする人の癖もあるだろうし、乗っているうちに変形して変わってくる部分もあるだろう。なので、私の数値を鵜呑みにせず、自分の車体での左右差を測った方がよさげだ。左右差を完全に無くそうとすると過補正になる可能性があるので、左右差を3mm以下にするのとかが現実的な気がする。個人的なおすすめは、MKSのEasy Superiorペダルにするのがまず第一で、欲が出てきたらBBシェルをタンゲかトーケンに変えてついでにスペーサも入れるって感じかな。なお、BBシェルの筒の直径はリアスプロケットの内径とほぼ同じなので、リアスプロケット用のスペーサが転用できる。

まとめ。ブロンプトンの車体には左右差があり、純正の構成だと左足が右足より12mmから18mmほど遠いことになる。それを解消するには、BBシェルにスペーサを噛ませればよい。BBシェルやクランクやペダルを買い換えたなら、その実測値に基づいて調整をすべきだ。