豪鬼メモ

一瞬千撃

Prologo Kappa Evo PASの導入と箱根の旅

ロードバイクのサドルをPrologo Kappa Evo PAS T2.0に変えた。期待通りの性能で、坐骨も会陰も痛くならず、脚が動かしやすいサドルであった。箱根峠を越えてロングライドにも耐え得ることも確認した。

製品選定

ブロンプトンでサドル沼に嵌っていたところ、ロードバイクについてたPrologo Kappaの古いバージョンに乗ると脚が動かしやすく、ロードバイクだけではなく、ブロンプトンにつけてもと元気に走れることを発見した。ブロンプトンには結局Selle SMPのVT30Cが良いという結論になったが、無印Kappaも捨てがたいものだった。無印Kappaは脚が動かしやすく坐骨への負担も減らしてくれるのは良いのだが、あたかも鉄棒に跨っているように会陰が圧迫されて、長時間乗ると陰茎が縮んできてしまうほど血流が妨げられるという欠点があった。

元々付いていた無印Kappaはぼろくなり過ぎていたのもあって、ロードバイクのサドルも買い替えることにした。候補としてはVT30Cよりも少し幅が狭いVT20Cを考えていた。ブロンプトンで使っていてVT30Cは非常に良かったし、ロードバイクにつけてみても期待以上に乗りやすかった。坐骨幅が10cmの私は、VT30Cの想定坐骨幅よりもVT20Cのそれに当てはまるが、ブロンプトンでは乗車姿勢が直立気味なのでVT30Cの方が都合がよかった。一方でロードバイクにつける場合には乗車姿勢の前傾がより強いので、前方になるほど狭まる坐骨結節を鑑みて、VT20Cの方が良さそうだ。

なので、VT20Cの状態の良い中古がオークションサイトに出品されるのを虎視眈々と狙って過ごしていたのだが、なかなか出てこなかったので待ちきれなくなった。そんな折、Prologo Kappa Evo PAS T2.0の未使用品が4600円で出品されていた。定価9000円くらいなので、ほぼ半値だ。VT20Cの市場価格は18000円なので、中古でも5000円以下にはなるまい。そして、Prologo Kappaは会陰の負荷に問題がある以外はVT30Cと同じくらい良かったことを考えると、Kappaの新バージョンの中央にスリットを開けた製品であるKappa Evo PASは、私にとってVT30Cと競る製品であることが予期された。よって、ポチった。

比較

製品が届いた。無印KappaとVT30CとKappa Evo PASとを並べてみよう。無印KappaとKappa Evo PASはスリット以外はほぼ同じ形状で、ロングノーズかつ左右セミラウンド型かつ前後フラット型であることがわかる。

VT30Cと比べるとノーズが長く、左右形状はほぼ同じで、前後形状のフラットさがより強いことがわかる。



VT30Cが長さ255mmの幅155mmなのに対し、Kappa Evo PASは長さ273mmの幅147mmで、無印Kappaもほぼ同じだ。幅155mmと幅147mmの間の8mmの差は乗り心地に大きな影響を与えそうだ。幅が広いと圧力を分散させたり骨盤を安定させたりする利点があるが、太腿が動かしにくかったり擦れたりする欠点がある。幅が狭いのはその逆だ。私の坐骨幅は10mmで狭めなので、そこから考えるとKappa Evo PASの147mmの方が適しているっぽい。重さは、Kappa Evo PASの重さは251gで、260gのVT30Cとほぼ同じだ。実測だと両者ともそれより少し重い。

パッドの硬さを比べる。無印KappaとVT30Cを比べるとVT30Cの方が柔らかいことはわかっていたが、意外だったのは、無印KappaよりもKappa Evo PASの方が硬めだったことだ。誰でも弁別できる程度に硬さが違う。無印は粘土っぽいグニグニ感があるが、Evo PASはかなりしっかりしていて、上下方向には沈むが水平方向にはほとんど動かない。Evoになってから明らかにパッドの素材を変えているっぽい。

Kappa Evo PASのスリットの幅はVT30Cよりは狭い。よって、会陰の負荷を下げる能力は低いが、スリットの面積が小さい方が穴の周囲に圧力が集中する度合いを少なくするので、どちらが良いかは一概には言えない。少なくとも、スリットがないのよりは遥かにマシだ。スリットがない方が良いという意見もたまに見かけるが、私はそれが信じられない。スリット不要論の論者は会陰やその奥の組織が強靭なのか鈍感なのか、会陰の周囲の骨や筋肉が盛り上がっていて会陰が圧迫されにくい形状なのかわからないが、とにかく不思議だ。

ブロンプトンで検証

まずはブロンプトンにつけてみて、VT30Cとの乗り心地の比較をする。乗ってみてすぐにわかるのは、パッドがVT30Cより硬いことだ。Kappaシリーズの製品説明や各所のレビューではパッドが厚いと説明されることが多いが、それでもVT30Cよりは若干薄く、沈み込みのストローク量も少ない。しかし、シェルにもしなりがあり、硬めのパッドど相まって、強い荷重でも底付きしないで適度に沈み込む粘り強さを感じさせる。VT30Cで衝撃を受けるとボヨンと尻を浮かせるような反発力が働くが、Kappa Evo PASだとトスっと衝撃を受け止めて速やかに減衰させてくれる。VT30Cが楽しい乗り味なら、Kappa EVO PASは落ち着いた乗り味と言えようか。


VT30Cのショートノーズに慣れてしまうと、Kappa EVO PASのロングノーズは邪魔くさく感じる。少なくともブロンプトンではノーズ部分に乗る一時的な前乗りをしない私としては、ノーズが長い必要性を感じない。ダンシングや停止の際に尻を前にずらした後で着座しようとする時に、ロングノーズだと尻にひっかかてうざいと思った。これは単なる慣れの問題なので、ロングノーズが悪いわけじゃない。

Kappa Evo PASのスリットはVT30Cよりも小さいので、会陰の負荷を低減する能力は小さいが、坐骨にかかる圧力はその分だけ小さくなる。VT30Cは平行な2本のレールに尻を乗せているような感覚があるが、Kappa Evo PASだとそれがなく、板に尻を乗っけているような感覚がある。しかし、会陰の負荷が大き過ぎて箒の柄に乗っているような感覚の無印Kappaに比べると、ちゃんとスリットがあるKappa EVO PASは大分マシだ。VT30Cはスリットが大きいだけでなくスリット周りのパッドが柔らかいこともあり、会陰の負荷は皆無だ。それに比べるとKappa Evo PASは会陰に多少の負荷があるので、坐骨の負荷は小さいにしても、乗り心地はVT30Cに微妙に負けている。とはいえ、Kapp EVO PASも合格点だ。

無印Kappaもそうだが、Kappa Evo PASにも特徴的なのは、脚がとても動かしやすいことだ。座面の縁の曲面や、ノーズに向けての幅の絞られ方が絶妙で、太腿の動きをまったく邪魔しない。VT30Cもこの点は合格点だが、Kappa Evo PASの方が良い。跨って漕いでいると、もっと脚を動かしたいという、積極的・戦闘的な気分にさせてくれる。尻の快適さではVT30Cには劣る気がするが、元気に走るという点では負けていない。Kappa Evo PASもかなり良いサドルだ。

無印KappaとKappa Evo PASを交互に使って乗り比べてみたところ、やはりEvo PASは無印よりパッドが硬く、坐骨の圧迫が強い。会陰に関してはスリットがあるEvo PASの方が優しい。ブロンプトンで使う限りにおいては、パッドは無印の方が良かったと思う。会陰の圧迫に私が苦手な私としては、たとえパッドが硬くてもEvo PASの方を好むが、これでパッドがもうちょい柔らかければとも思う。改良版でわざわざ硬くしているのは当然意図的だろうが、このサドルの購買層はロード乗りが多く、硬めを好む人が多いのかもしれない。

認知バイアスの疑い

というか、値段2倍のVT30Cの漕ぎやすさが負けているってのは何だよと思った。もちろん値段の問題じゃなくて、幅が広いのとパッドが柔らかいのが原因であって、それらによって脚が回らないのは安定性や圧力分散とのトレードオフに過ぎない。しかし、ブロンプトンには走行性能よりも快適性能が大事だとはいえ、体感できるほど脚の動きが劣る形状を使い続けるのはなんか悔しい。それは置いても、なんか腑に落ちない。取っ替え引っ替えして何度試しても、VT30CよりKappa Evo PASの方が速く漕げるような気がしてしまうのだ。より正確に言えば、同じ力で踏んでもペダルがより機敏に反応して自転車が推進していく気がしてしまうのだ。これは、変だ。高いケイデンスにしやすいとかならまだしも、じわっとゆっくり踏んでも推進力が高まりやすいと感じてしまうのは、脚が回るとか回らないとかいうのとは別の事象を認知しているのではないか。

そこで、仕事の帰りに夜の世田谷公園を30周くらいしながら、いろんな仮説を検証してみた。VT30CとKappa Evo PASを交互に乗り換えつつ、各々で、サドルの位置を前後させたり、上下させたり、前傾後傾させたりする変化をさせた。結果としては、どちらのサドルでも、ほぼ同じ設定が最適であった。つまり、前後位置は膝関節の皿がペダル軸の真上にくるくらいで、上下位置は下死点で膝が伸び切らないくらいで、傾きは2度くらい前下がりというものだ。いずれにせよ、どの設定でも、Kappa Evo PASの方が推進しやすいように感じた。サドル形状と設定の相性の違いを認知しているわけじゃないらしい。では、幅が問題だろうか。それを確かめるためには、VT30Cを少し後ろに設置して、サドル上の着座位置をちょっと前にして乗ってみれば良い。それでもやはり、Kappa Evo PASの方が推進しやすく感じた。では、パッドの柔らかさで尻が上下するのが問題だろうか。それを確かめるためには、上下の踏み込みを禁じて、上死点付近と下死点付近の前後の動きだけで入力をして乗ってみれば良い。それでもやはり、Kappa Evo PASの方が推進しやすく感じた。

Kappa Evo PASの方が細いし硬いので座りながら脚が動かしやすいのは認めるが、「踏んだ力に対して推進しやすい」って感じるのは奇妙だ。それをよく考えたところ、こんな仮説に至った。自転車の速度は路面からの振動で感知している部分が大きく、パッドが硬い方がそれを強く感じるので、速く進んでいるように感じるのではないか。特に夜に検証していたので、視覚情報が限られていて、振動に意識が向いていた結果、そう強く感じたのではないか。これは単なる仮説に過ぎないし、心理現象なので簡単には証明できないのだが、そう考えるとしっくりくる。パワーメータや心拍計を使えばKappa Evo PASとVT30Cの間で生理現象として優位な差がないことは確認できるかもしれないが、そこまでやるつもりもない。それを確認したとしても、なぜKappa Evo PASの方が速く感じるのかの説明にはならない。

「(特に夜は)硬いサドルは速く感じる」という仮説を補強すべく、やたら硬いと私の中で評判の中華カーボンサドルRyet Aircode 3D Honeycombを同じ条件で試してみた。結果としては、やはり速く感じた。Aircodeは幅150mmなのでKappa Evo PASの147mmよりも幅広であり、しかもシェル縁の形がイマイチすぎて太腿の付け根がめっちゃ痛くなって、とても脚が動かしやすいとは言い難いサドルなのだが、それでもペダルを踏んでみるといい感じに加速して推進していくように感じた。

視覚が優勢な昼に再検証もした。振動を感じにくいように、パッド付きのインナーを履いて行った。噴水の脇でサドルを取っ替え引っ替えして世田谷公園を何周もしていた奇人は私だ。結果としては、ケイデンス70程度で漕ぐにあたっては、どれも速度感に差はなかった。足を動かした時の心地よさはやはりKappa Evo PASに分があるが、だからって別に速くなるわけじゃないっぽい。認知バイアスへの対策という点では購入者である私が検証している時点で全く不十分なのだが、主観的評価が信用ならないという一例にはなった。結論としては、直立気味の乗車姿勢の場合、Kappa Evo PASよりはVT30Cの方が明らかに尻に優しい。そして、両者の間で明確な走行性能の違いはない。強いて言えば、硬めのパッドのサドルを少し前下がりにつけると骨盤が自然に前傾して、その結果踏ん張りやすくなるのかもしれないとは思った。ただ、パッドが柔らかい方と乗車時に骨盤の角度を自由に調整できるだけであって、柔らかくても前傾は適宜させられる。それを意識してVT30Cに乗ってみれば、Kappa Evo PASと同等に速く走れた。

ロードバイクで検証

さて、本題は、ロードバイクにつけた場合にどうかだ。まずはクッションパッド付きのパンツではなく、普通の短パンで乗って乗り心地を確かめた。結論としては、VT30Cと同じくらい、Kappa Evo PASはロードバイクには向いていると思う。デザインもシックで良い。色は白でも良いと思ったが、白は汚れが目立つので黒にして良かったかも。

ロードバイクの方が高ケイデンスで走ることが多いので、脚がより動かしやすいというKappa Evo PASの利点が生きてくる。パッドが硬めで軽い荷重では沈み込まないという性質も、踏み込みの際にサドルの変形と復元に力が使われないという利点につながっている。ロードバイクの方がペダルに荷重を乗せる割合が高いため、サドルが硬めでも快適性に問題は生じにくい。無印Kappaで問題であった会陰の負荷も全く問題ない程度になっていて、それでいて坐骨の負荷は全く感じない。

サドルを変えたなら、位置決めをしっかりやりたい。といっても、無印KappaとKappa Evo PASの形状はほぼ同じなので、そんなに変えることはない。サドルの高さと前後位置は同じだ。下死点で膝が伸び切らずに、尻をずらさないで回し切れる高さと、クランク角3時で膝関節の皿がペダル軸の真上になるような前後位置にする。一方で、無印Kappaで前傾させていた度合いは、Kappa Evo PASでは緩めて、VT30Cと同様に少しの前傾に留めた(といってもブロンプトンでの前傾よりはかなり大きいが)。無印に比べて会陰に優しくなった結果、会陰が痺れないように前傾を強める必要はなくなった。前傾を弱めると坐骨の負荷が小さくなり、よりロングライド向きになる。

実際のロングライドでどうなのか試すべく、箱根峠を越えて沼津に至る130kmの行程を組んでみた。これまでの検証との比較のために、敢えてレーパンもパッド付きインナーも履かずに、普通の短パンとトランクスで挑んだ。

日が短くなってきたことを鑑みて、朝9時半に家を出た。今回は最短距離の経路を選択し、246をひた走る。すずかけ台の手前あたりは相変わらず坂が多くて長いが、ロードバイクなら余裕だ。会陰が痛くないってだけで快適で、すいすい走れる。

厚木を過ぎたあたりで、129号に乗り換えて、ほぼ相模川に沿って南下し、1号にぶつかってからはそちらに乗り換えて西進し、湘南平を横目に見つつ、平塚や大磯や二宮を通り抜ける。


1号の途中では、この松並木が結構好きだ。たった1分間くらいだろうが、なんだか新鮮な気分にさせてくれる。

家を出てから3時間くらいで小田原についた。ブロンプトンで来た時よりもかなり速く走れた気がしていたが、そうでもなかったっぽい。40km/hとかもバンバンだして走っていたけど、平均しちゃうと25km/hくらいになっちゃうか。ロードだと足つきに不安があるから、すり抜けや歩道乗り上げをほとんどしないのもある。

小田原で昼飯休憩してから、箱根湯本に向かった。大名行列をやっていて、やたら混んでいた。ゲストで柳沢慎吾が来ていたが、有象無象の観客と友達みたいに会話していて面白かった。大変な仕事だ。


で、いよいよ峠道に入る。13kmくらいずーっと上り坂が続くので、さすがに辛い。とはいえ、最も軽いギア34T/28Tを出せば、止まりそうになる不安は全くない。地道にクルクル回していけば、着実に登っていける。ブロンプトンでは死にそうになって登ったのに、さすがはロードバイクといったところだ。他のサイクリストがもっといるかと思ったけど、意外にも一人しか見かけなかった。

ブロンプトンで街乗りをする際にはショートノーズの方が良かったが、ロードバイクで峠道を走る際にはロングノーズに利がある。シッティングで長い坂を上り続けると、確かに着座位置を前にずらしたくなってくる。その際には荷重の大部分はペダルに乗っているので、尻を支える座面は存在していればよく、細くても構わない。ロングノーズはその自由度を高めてくれる。ショートノーズでサドルを前にずらしておくと前乗りになりすぎて登坂以外で漕ぎにくくなるので、標準位置のロングノーズで一時的に前乗りするのがやはり一般人には良いと感じた。

えっちらおっちら登っていたら、国道1号最高地点に来た。学生の時に京都から所沢に自転車で帰った時もここを通ったが、20年振りくらいか。懐かしいというか、最近の自転車修行で体力と精神力が当時の自分に戻りつつあるのが嬉しい。

で、芦ノ湖。湖と富士山と箱根神社の鳥居と大涌谷を入れた構図。本当はここに遊覧船を入れる予定だったのだが、時間が合わなくて断念。日没が迫っているので、キビキビ行動しなくては。

箱根峠。ここを過ぎたら静岡県だ。バイクのレビュー動画でよく出てくる箱根熱海線も見える。バイクにも乗りたくなってきた。

ここで、クリートが外れまくることに気づいた。どうやら芦ノ湖で写真を撮るために歩いていたらクリートを削り過ぎていたらしい。その状態で、三島側への13kmの下り坂に突入。楽ちんに下っていけるのはいいのだが、足が固定できてないとまじで怖い。ビンディングはパワーを出すためだけのものじゃないと改めて認識した。というか、減ったクリートの付け替えはこまめにやらないとダメだな。むしろ減らないようにクリートカバーを買うべきか。

静岡に入ると富士山が見放題でいいな。幼少の頃は所沢に高い建物が全くなかったので実家からも見えたもので、富士山大好きっ子に育った私だ。老後は富士山がよく見える場所に住みたいとか思っているところだ。だったら山梨でもいいことになるが、海が近い方がいいので、そうすると静岡一択じゃないか。

ゴールは沼津駅ラブライブの看板を見つつ、先日調達しなおしたPekoの輪行袋輪行準備をしてから、サラダチキンとモヒートで一服。尻も脚もまだまだ持つ感じだったがので、夜の駿河湾でも眺めに行こうかと思ったが、クリートが不安なのでやめておいた。

ロングライドを終えて、尻はどうかというと、痛いっちゃあ痛いが、まだまだ耐えられるって感じだ。Kappa Evo PASは私にとっては硬めのサドルだが、ロードバイクの前傾姿勢で乗ると、坐骨にも会陰にも負荷が集中しないので、どこかの部位が痛んで耐えられなくなることはない。200km乗ってもおそらく耐えられそうだ。ただし、レーパンもパッド付きインナーも使わずに普通の短パンで乗ると、皮膚がヒリヒリしてくる。この問題はどんなに柔らかいサドルを使ってもダメで、履くパンツを替えるか、我慢するしかない。Kappa Evo PASは、負荷が集中して痛くなる弱点部位を作らない点で合格点に達していて、その基準内で高い走行性能を実現しているので、文句のつけようがない。もっと柔らかいパッドにすれば短期的には快適になるかもしれないが、柔らかいパッドで長時間圧迫され続けると血行が滞って長期的には損だ。Kappa Evo PASの硬さは最適なパランスの範囲内にあり、その範囲内であればどのサドルであっても大した違いはないと思う。

結局のところ、ロードバイクにおいてVT30CとKappa Evo PASのどちらがいいかと考えるに、僅差でKappa EVO PASに軍配が上がるかと思う。快適性はVT30Cの方が上だが、足の動かしやすさはKappa Evo PASの方が上であり、ロードバイクではその特性は重要だ。ペダル荷重の比率が大きくサドル荷重が低いロードバイクでは、パッドの硬さはそんなに気にならない。Kappaはむしろコンフォート系のサドルとして売られているのは私にとっては意外なことだが、パッドなしの軽量サドルに比べれば十分快適なものなのだろう。無印Kappaに比べると、会陰に優しい分だけ、Kappa Evo PASの方が明らかに良い。VT30Cよりも幅が狭いVT20Cと比べたら乗り換えたくなる可能性はあるが、現状ではKappa Evo PASで十分に満足しているので、それ以上を求めるつもりはない。コスパで考えればKappa Evo PASの方がVT30CやVT20Cよりも明らかに良い。

現状の全保有サドルの比較

現状で保有しているサドルの特徴を整理した。

  • ブロンプトン純正
    • やたら幅広。パッドが厚いが硬め。シェルは程よくしなる。
    • 脚運びはそれほどよくない。街乗り向き。
  • Gorix A6-1
    • やや幅広。パッドは厚くて柔らかい。シェルがやたらしなるので、スリットがある割に会陰が圧迫される。
    • 脚運びは普通。街乗り向き。
  • Ryet Aircode 3D Honeycomb
    • やや幅広。パッドが薄くて固い。シェルが全くしならず、縁が太腿に当たって痛い。
    • 脚運びは悪い。乗り心地が悪過ぎ。
  • Prologo Kappa
    • 幅は標準的。パッドは標準的厚さで硬め。シェルは程よくしなる。
    • スリットがないので会陰が痛い。脚運びは良い。ロードバイク向き。
  • Prologo Kappa Evo PAS
    • 幅は標準的。パッドは標準的厚さで硬め。シェルは程よくしなる。
    • スリットがあるので会陰が痛くない。脚運びは良い。ロードバイク向き。
  • Selle SMP VT30C
    • やや幅広。パッドは厚めでやや硬め。シェルは程よくしなる。
    • スリットが広いので会陰が全く痛くない。脚運びは普通。ロードバイクにも小径車にもいける。

尻の痛みについては、分類することが重要だ。その分類によって対処が異なる。

  • 太腿の付け根が圧迫されて痛い
    • サドルが幅広すぎるか、シェルが硬すぎる。→ サドルを替える。
  • 尻の皮膚が全体的に擦れて痛い
    • サドルのせいじゃない。→ 我慢するか、レーパンやパッド付きインナーを履く。
  • 会陰付近が痛い
    • サドルが会陰を圧迫している。→ サドルをスリット付きに替えるか、前にずらすか、前傾にする。
  • 坐骨付近が痛い
    • サドルが坐骨を圧迫している。→ 坐骨幅に適したサドルに替えるか、柔らかいパッドのものに替えるか、後ろにずらすか、後傾にする。
  • 尻の筋肉全体が凝った感じがする
    • 宿命。どんなサドルでもパンツでも起こる。→ ダンシングや休憩で適宜休ませるか、サドル荷重が低い乗り方をするか、筋肉を鍛えるか、我慢する。

以上のことを踏まえると、サドルの選定と設定でできる対策はすでにやり切ったと思う。あとは、適宜パッド付きパンツを利用しつつ、乗りまくって慣れるだけだ。サドル迷子から抜け出すために重要なのは、次の点を認識することだ。自分にとって相性が悪いサドルを良いサドルに替えれば、何らかの改善が見込めるだろうが、良いサドルを別の良いサドルに替えても改善は見込めない。

まとめ

PrologoのサドルKappa Evo PASを買って、ブロンプトンロードバイクで使用感を評価した。Kappa Evo PASは、無印Kappaと比べると、ブロンプトンでもロードバイクでも乗りやすい。Selle SMP VT30Cと比べると、ブロンプトンでは劣るが、ロードバイクでは勝る。もともとロードバイクにつける予定で買ったので、選定は成功したと言えるだろう。これで、ロードバイクに関しても、サドル沼から無事に卒業できたということにしよう。