豪鬼メモ

一瞬千撃

ブロンプトンのリアスプロケットを換装

ブロンプトンのリアスプロケットを純正から換装して、各種の変速比の組み合わせの中から自分に最も合った組み合わせを探る旅。シマノカセットスプロケットを買ってバラしてブロンプトンに付ける遊びだ。


注意:以下は、外装2段または外装6段のブロンプトンに付いている2枚のリアスプロケットを交換する話だ。内装3段の場合は1枚のスプロケットを交換することになり、外装4段の場合は4枚のスプロケットを交換する余地があるが、それぞれの規格は外装2段および外装6段とは異なるので注意。また、フロントスプロケットが私のと異なる場合でもリアスプロケット換装はできるが、変速比はフロントとの組み合わせで決まるので、自分の環境で計算しなおすことが必要だ。

現状把握

私はブロンプトンの外装2段モデルに乗っている。デフォルトのギアはフロントが54Tでリアが12T/16Tの組み合わせだったが、フロントをO.Symetricの52Tに変えている。O.Symetricは非真円の形状であり、丁数は52Tでありながら、パワーゾーン(ペダルを踏み込む部分)は56T相当の重さがある。ケイデンスを考える場合には52Tとして計算し、重さ(トルク感)を考えるなら56Tとして計算するのが妥当だ。Stoneの50Tの非真円ギアも所持していて、そのパワーゾーンは52T相当の重さである。ギアの重さだけに焦点をあてることにして、それぞれのパワーゾーンでの仮想的な変速比と私の主観を表にする。なお、私の乗り方では、負荷が一定を超える登坂でだけ1速を使うが、それ以外の9割以上の時間は2速を使う。なので2速を1速より先に記す。

2速(12T) 1速(16T) 2速平地巡行 2速街乗り 1速登坂
デフォルトの真円54T 4.500 3.375 丁度良い やや重い 重い
O.Symetricの52Tのパワーゾーン(56T) 4.666 3.500 丁度良い やや重い 重い
Stoneの50Tのパワーゾーン(52T) 4.333 3.250 やや軽い 丁度良い 丁度良い

真円54TとO.Symetricの52Tの使用感はほぼ同じだ。双方とも、舗装が良好な平地を巡航すると、とても心地が良いトルク感とケイデンスになる。しかし、街乗りのストップ&ゴーでは、どちらも加速が鈍く、やや重いギアだと感じる。また、1速を使うほどの登坂になると、双方とも重すぎると感じる。一方で、Stoneの50Tは、平地巡行では軽すぎると感じるが、街乗りと登坂ではとても快適な重さだ。おそらく、私の普段使いで最適な変速比は、2速が4.4くらいで、1速が3.3くらいなのだろう。その場合、リアタイヤの外周が1.34mだと仮定すると、2速はペダル1回転で5.89m進み、1速はペダル1回転で4.42m進む重さになる。

真円54Tと非真円であるO.Symetricの52Tを比べると、O.Symetricの方が全体の丁数が52Tと少ないので同じ速度ならケイデンスが高くなるが、パワーゾーンのトルク感は56T相当で強い。結果として、同じ時間で多くの仕事ができるので、平地巡行の速度が上がり、街乗りでの加速感が向上し、登坂性能は向上する。多くの仕事をすれば疲労が大きくなるという代償があるので、体力の限界が走行性能を律する状況では、結局仕事量を同じにして運行することになり、損得はない。しかし、そうでない普段使いの場合、図らずして多め仕事をしてしまうので、走行性能が上がったように感じる。また、パワーゾーンの滞在時間が長くなるので、特にフラットペダルの場合、うまいこと漕げばペダリング効率が向上する可能性もある。私は非真円の乗り味が好きだ。

両方とも非真円であるO.Symetricの52TとStoneの50Tを比べると、Stoneの方が軽いので、街乗りと登坂で使いやすい。O.Symetricの方が平地巡行には有利だが、遠乗りする時も平地ばかりではないので、総じてStoneの方が使いやすい。しかし、楕円率1.1のStoneに比べて楕円率1.215のO.Symetricは非真円っぽい乗り味が強いので、O.Symetricの方が好みだ。O.Symetricが50Tだったら最高なのにと思うのだが、手元にあるのは52Tだし、そもそもO.Symetricの50Tは製品として存在しない。

リアスプロケット換装

楕円率が1.215もあるO.Symetricの自然にケイデンスが上がる乗り味はめっちゃ気に入っているので、デフォルトの真円54TやStoneの楕円50Tに戻したくない。ならば、O.Symetricの52T(パワーゾーンは56T相当)は維持して、リアスプロケットを変えればいいじゃないかと思い立った。フロントをハイギアード設定にしつつリアをローギアード設定にするというのは、つけ麺の熱盛みたいなまどろっこしさがあるが、成り行き上仕方がない。フロントスプロケットを換装するよりはリアスプロケットを換装する方が安いとも言える。それに、最小のギアを大きくするのは、若干ながら機械抵抗を減らすことにもつながる。

ブロンプトンの外装2段モデルと外装6段モデルのリアスプロケットシマノの8速スプロケットと互換性があるので、分解可能なカセットスプロケットを買えばいろんな種類の変速比を試すことができる。車種やグレード別に様々な製品があるが、とりあえず定番のCS-HG50 8Sにした。現状で12Tと16Tのギアを持っているので、11Tと13Tと15Tと17Tが入っているセットが望ましい。所望のものがAmazonで3000円で買えた。さて、一気に沢山のギアを入手したので、O.Symetricと組み合わせた場合のそれぞれの変速比をきちんと把握すべく、表にしてみた。

11T 12T 13T 15T 16T 17T
パワーゾーン(56T)変速比 5.090 4.666 4.307 3.733 3.500 3.294
全周(52T)変速比 4.727 4.333 4.000 3.466 3.250 3.058

パワーゾーン変速比で、平地巡行の理想として想定した4.4に最も近いのは、13Tの4.307だ。登坂の理想として挙げた3.3に最も近いのは、17Tの3.294だ。てことで、私の理想に最も近いのは、2速を13T、1速を17Tにする組み合わせだ。2速13Tの4.307は若干軽すぎる嫌いもあるが、4.666と4.307のどちらを選ぶかというと4.307になる。12Tと17Tの組み合わせも捨てがたいが、まあとりあずは13Tと17Tで行こう。その場合、2速だとペダル1回転で5.77m、1速だとペダル1回転で4.41m進む重さになる。実際にはフロントスプロケットの全周は52Tなので、5.36mおよび4.09mしか進まないのだが、その分だけ次の入力を早くできるので、推進力は高まる。

シマノカセットスプロケットは、上3つのスプロケットは簡単にバラせるのだが、それ以外はピンで固定されている。このピンを外すのが結構面倒だ。まず、裏側にあるピンのカシメ部分をヤスリで削り取る必要がある。100均のダイヤモンドヤスリでOK。表面に飛び出たカシメ部分を平坦になるまで削る。でかいギアはブロンプトンでは使えないので、ぞんざいに扱って傷つけてしまったが、気にしない。

それから、カシメがあった部分に釘かポンチを突き立て、トンカチで叩いてピンを押し込む。反対側にピンが飛び出ることになるので、重ねた段ボール紙の上で作業すると良い。ピンが反対側に何ミリか突き出たら、ペンチでグリグリ引っこ抜ける。そうすると、個々のスプロケットとスペーサーが手に入る。並べると壮観である。

なお、カセットスプロケットトップギア(最小ギア)は「鍔付き」とかいって形が特殊なので、そのままではブロンプトンには使えない。私は11T-30Tを買ったのだが、11Tは使えないことになる。しかし、削れば使えるらしいので、わざわざ工具を買った上に5時間ほどの切削作業をした。まず、溝が下半分しかないので、元来の溝は削らずに、上半分にある鍔部分だけを削る。電動ルーターで荒削りしてから、手動のダイヤモンドやスリで仕上げる。めちゃくちゃ時間がかかる。さらに、一体化したスペーサーが厚すぎるので、それを60番の布ヤスリで削る。13Tとスペーサーの組み合わせの厚さと同じになるまで作業するのだが、これも気が遠くなる。


11Tの鍔なしは市場に流通してないっぽいので、こうして作るしかない。11Tはやたら重いので使うかどうかもわからないが、既製品が存在しないとなるとなおさら作りたくなるのが人情というものだ。11Tくらい歯車が小さくなると機械損失が大きいのだが、そもそもディレイラーとテンショナーの二つのプーリーが10Tな時点で、細かい効率を語るのはあまり意味がない。ロマンの11Tってことで。

リアスプロケット換装作業は簡単だ。まず、タイヤを交換する時と同じようにリアホイールを外す。リアスプロケットは外側にあるロックリングで止められているので、それをこじって外せば、スプロケットが外せるようになる。ロックリングの切れ目にラジオペンチを入れて広げつつ、できた隙間にマイナスドライバーを差し込んで、梃子の原理でグイっと持ち上げると外れる。

外したギアを新しいギアに置き換えつつ、外したのと逆順に部品をまた付け直す。1速ギア、スペーサー、2速ギアの順に入れて、最後にピンで止める。各々のパーツをしっかり奥まで入れるべし。ここで重要なのが、2速にシマノのギアを入れる際には、該当するシマノの1.85mmスペーサーを使い、元々のブロンプトン純正ギアを入れる際には、元々の1mmのスペーサーを使うことだ。そうでないとロックリングの位置が合わない。トップギア(11T)だけはスペーサーなしで使う。

外したロックリングを再び付けるのも厄介な作業になると思う。ロックリングの切れ目の片方をホイール側の軸に引っ掛けて、その部分を指で押さえつつ、反対側の切れ目をラジオペンチで広げて、軸に嵌める。結構力がいるし、力の入れ方にコツもあるが、何度かやればできるようになる。

そしてホイールを付け直せば完成だ。デフォルトの1速の16Tを17Tにするとチェーンがきつくなるが、フロントスプロケットを54Tから52Tに下げた時にチェーンのリンク数を102のままにしておいたので、今回はチェーンをそのままでできた。もしフロントを変えないでリアの1速を丁数だけ上げる場合には、チェーンを長くしないといけないかもしれない。2速のスプロケットは1速よりももともと小さいので、大きくしても小さくしても大丈夫だ。

1速を17Tにするとディレイラーと干渉するという噂もあったのだが、私の場合は大丈夫だった。ただし、ディレイラーの角度が若干2速方向に偏っていたので、17Tで1速に入れるとカチャカチャと接触音が鳴るようになったしまった。この問題は、ディレイラーの位置をペンチで1速側に微妙に傾けたら解決できた。クリアランスは17Tでギリギリみたいだ。18T以上は歯がフレームにぶつかるので私のモデルでは無理っぽい。(追記:刃先を少々削れば18Tを装着できた)

外装2段のリアスプロケットは外側からはほとんど見えないので、外見上はカスタマイズしたかどうかは全くわからない。なので、ギアの色とかはどうでもいい。BB換装とかもそうだけど、自分にしかわからないカスタマイズこそが趣味性の極みだと思う。ギアの換装が走りに与える影響は他の部品の比じゃないが。

走り心地

まずは2速13Tと1速17Tをつけて走ってみた。2速で走り始めたところ、当然ながら軽さを感じた。以前に比べて重さが12/13=0.923倍になっているだけなのだけれど、明らかに軽い。街乗りはやっぱり軽快さが命だ。加速感が良いので、信号などで止まってからの動き出しが小気味良い。非真円スプロケットは低速時の走行性能を向上させるが、変速比が丁度良いと尚更だ。以前の記事でも書いたが、小径車で100Wの動力で平坦な舗装路を走行するなら23.2km/hの速度で巡行することになる。1回転5.76mのギアでその速度を出すと、ケイデンスは69.3rpmになる。快適なサイクリングのケイデンスは70rpmくらいと言われるので、まさにドンピシャだ。

平地巡行性能は、やはり落ちた。ケイデンス70rpmで運行すると、以前は24.3km/hの速度だったが、それが22.5km/hにまで落ちることになる。サイクリングロードや幹線道路をそれなりの30km/hで走ろうとすると、93.2rpmとかまで上げることになり、なんかブロンプトンっぽくない走りになってしまう。最高速度の継続性も多少落ちた。40km/hで走行する際のケイデンスは114rpmから124rpmに上がったが、フラットペダルと私のへぼいペダリングスキルの組み合わせでは、10秒も続けていられない。

登坂性能は上がった。通勤途中に現れる勾配5%程度の坂は2速シッティングで登り切れるし、7%程度の急坂でも1速シッティングで何とかなる。まぼろし坂で急坂の登坂能力も試した。結果としては、1速のダンシングでないと登れないのは変わらないが、以前より明らかに楽になった。1速のパワーゾーン変速比が3.5から3.294に下がったのが奏功して、ダンシングで勾配29%に打ち勝って加速するのに死力を尽くす必要はなくなった。それでいて、全周変速比は3.25から3.058まで下がったので、ケイデンスを高めてデッドゾーンでの登坂抵抗による速度低下が緩和された。

スラローム走行もやってみた。連続スラロームの合間の切り返しでは一漕ぎで加速する必要があるのだが、ギアが軽くなったことによってやりやすくなった。Stoneの楕円50Tで味わった軽快感が戻ってきた感じだ。変速比4.3から4.4くらいの重さがスラロームにはちょうど良いらしい。それより軽いと速度が出ないし、それより重いと疲れてしまう。

O.Symetricの楕円52Tとリア12Tの組み合わせで、省エネ走法による20km/h程度の巡行が快適であるという話を前の記事で書いた。それはリア13Tにしても当てはまる。ケイデンスは12Tの時より少し上がってしまうが、速度を維持するために必要な一漕ぎでの加速がさらに小さくなるので、漕ぐというより足を運ぶだけで巡行できる。

1速の17Tは、明らかに16Tより使える。2速の休むダンシングでも登れない坂でだけ1速を使うので、その際には16Tのパワーゾーン変速比3.5では重すぎると感じることがある。17Tのパワーゾーン変速比3.3ならば、大抵の坂ならシッティングで行けるし、激坂と呼ばれる坂でもダンシングで登り切れる。通常の2速と安心の1速という使い分けだ。

以上を鑑みて、日常使いでは13T/17Tの組み合わせは最善だと結論する。元の12T/16Tよりも良い。最高速よりも加速感が大きい方が幸せに寄与するからだ。どうしても速度を出さねばならない場合は高ケイデンスで頑張ればよい。ロード乗りには対抗できないが、それは潔く諦める。ただし、休日に遠出するなら12T/17Tという組み合わせの方がいいかもしれない。郊外ではストップ&ゴーは少ないので、加速感はそれほど重要じゃない。速度を追求するというより、脱力して低いケイデンスで巡行すれば、ギアが多少重くても楽に進める。平日と休日で切り替えてもいいかもしれない。リアスプロケットの交換は慣れれば15分くらいでできる。当面は休日も13T/17Tの快適さを満喫しようとは思うが。

その他の設定

せっかく11Tや15Tのギアも手元にあるので、その二つを組み込んだ剛脚設定も試してみた。パワーゾーン56Tで2速の11Tだと、変速比5.09、ペダル1回転6.82mとなり、40km/hの速度を105rpmで維持できることになる。普段使いには向かないが、これはこれで結構楽しい。平坦で無風で舗装状況が良ければ、小径車なのにロードバイクみたいに早く走れる。街乗りでも、246の三茶から大橋までのゆるやかな下りとかだと、原付より速く駆け抜けられる。1速が15Tというのもなかなか面白い設定だ。デフォルト設定だと基本的に2速で走るというスタイルだったが、2速を11Tにすると重すぎるので1速を使う割合が増える。その際にも、適度な重さがあってチンタラした走りにはならない。たいていの坂なら、1速のダンシングで切り抜けられる。急坂は15Tでは歯が立たない。以上を鑑みると、主に幹線道路を通って遠くまでいくサイクリングには、11Tと15Tが向いていると思う。

ワイドレシオ方向に振って、高速走行の11Tと登坂の17Tという組み合わせでも走ってみた。最初はこれは乗りにくいと思った。平坦な幹線道路を2速で快走していても、ちょっとした坂になった途端に重くなるので1速に落とさねばならない。その際の空回り感と速度低下が激しくて、心理的に疲れる。坂を登り切ってから2速に上げると、今度はいきなり重くなって肉体的に疲れる。ただ、慣れるとこれも面白い。多少辛くても重いギアで回し切る訓練をして、どうしてもダメな場合だけ軽くするというマインドセットで走ればいい。11Tと17Tの比率はロードバイクのフロントの50Tと34Tの比率に違いので、フロント変速だけでロードバイクに乗っているようなものだ。円滑な変速とは言い難いが、許容範囲な比率で最もコースの潰しが利く設定だとも言える。

オランダみたいに坂がほとんどない地形だったら、クロスレシオ方向に振って、11Tと13Tとかいう設定にしてもいいかもしれない。日本でも、東京の東側とか大阪の西側とか名古屋の西側とか京都の洛中とかは坂があんまりないので、それで便利に生活できるかも。基本的には1速の13Tで走って、好条件が揃ってスピードが乗った場合だけ11Tを使う。しかし、自分の環境には合わなかった。東京の西側では、武蔵野台地とそれを削る河川のせいで、どこに行くにも登坂は不可避だ。渋谷なんて谷底だし。

あるいは登坂に全振りして、15Tと17Tとかもありうる。箱根峠とかヤビツ峠とかそれで登ってみたい。その場合、フロントはStoneの楕円50Tに換装して、パワーゾーン52Tで1速の17Tだと、変速比3.05、ペダル1回転4.09mとなる。箱根峠は平均勾配5%の最大勾配13%、ヤビツ峠は平均勾配6%の最大勾配12%だそうなので、主に2速で漕いで、やばいとこだけ1速にする運用でなんとかいけそうな気がする。なお、ヒルクライム用のロードバイクだと変速比が1.2くらいの軽いギアがあり、700Cタイヤのロードバイクの外径が2.1mだとすると、1回転2.55m推進の重さになる。ブロンプトンで多少努力しても、ロードバイクの登坂性能には敵わない。フロントを32Tとかに下げれば対抗できるけど、そしたら平地巡行性能が壊滅的になってしまう。

ここまで変速比を考えていたら、3段化して11T/14T/18Tとかの設定にすることも頭によぎった。あるいは4段化して11T/13T/16T/20Tとかにしたら最強だろう。しかし、2023年より前のモデルでは外装3速以上は難しい。1速に大きなスプロケットを使うと、フレームと干渉するからだ。11T/13T/16Tの3速とかならできるだろうけど、あまり実用的な意味がない。2023年以降は外装4段モデルが導入されたので、それに伴ってフレームの幅を広げたらしい。宝くじに当たったらTラインの外装4速買おう。宝くじ買わないので当たることは絶対にないのだけれど。ともあれ、性能を追求しすぎると金がいくらあっても足りない。現行フレームかつ2段変速の範囲に自分を制限し、当面は数千円でできる貧乏カスタマイズを楽しむことにする。というか、素人は細かい設定を詰める前にトレーニングして脚力や心肺能力を向上させるべか。

今回設定したパワーゾーン変速比の2速4.30と1速3.29というのは、デフォルト設定の2速4.50と1速3.37よりもかなり軽いもので、実際の使用感もそれに合致するものだ。そこで思ったのは、ショートクランク化も面白そうだということだ。私の身長は164cmなので、デフォルトのクランク長17mmから16.5mmにすると身長比10%の経験則による適合クランク長に近づくことになる。クランクを短くすると梃子の原理でペダルの移動距離あたりの仕事量が増えて、17/16.5=1.03倍になる(足がペダルに与えるトルクは97%になる)。するとペダルの重さは4.30*1.03=4.43相当と3.29*1.03=3.38相当になり、デフォルトの重さに近づきつつ、ちょっと軽めという私の好みは維持されている。軽くしてから重くするというのはマッチポンプのような所業だが、全てが相殺されるわけではない。非真円ギアによって自然にケイデンスが上がるのと、ショートクランクによってペダルの移動速度が減るのとで、高ケイデンス型の運用がしやすくなるという結果が残るはずだ。

11Tの顛末

わざわざ自分で削って作った11Tをもっと活用しようと思って、それと15Tをつけてサイクリングに出かけてみた。自宅から、目黒通り、綱島街道、1号、16号、鎌倉街道を経て鎌倉と湘南を巡る旅だ。フロント56T相当とリア11Tの組み合わせはかなり重めのギア設定なのだが、やはり幹線道路を走るには都合がいい。信号等で止まってからの走り出しは遅いが、そこで焦らずゆっくり走るのを意識する。引き足と置き足だけでじっくり加速する。そうすると無駄に疲れないので、結果的に最高速が上がる。これは、楽しい。一日走って最終的に疲れ果ててもいいサイクリングでは、そこそこ重いギアの方が楽しい。

そんなこんなで快調に進んだが、北鎌倉を過ぎたあたりで異変が起きた。突然、踏み込みが軽くなり、チェーンがが空回りしだしたのだ。なにかと思ってリアスプロケットの部分を見てみたら、2速の11Tのスプロケットが消滅していた。おそらく、割れて飛び散ったのだと思う。やはり、自分で削るのは強度の点で問題があるらしい。そりゃそうか。ロードバイクトップギアはものすごく負荷がかかるのを見越して鍔付きになっているわけで、そこを削ったら応力集中で破断するのも無理はない。11Tの鍔なしが製品化されていないのは同様の理由だろう。

出先で自転車が走行不能になるのはきつい。ペダルで駆動できないので、地面を蹴って進むしかない。もはや自転車でなくストライダーみたいになってしまった。やけくそになってストライダー走法で鎌倉、由比ヶ浜稲村ヶ崎江ノ島、辻堂まで走り抜けた。太腿と尻の筋肉が吊りそうになったが、初夏の景色はそれなりに楽しめた。辻堂からは電車で帰った。ブロンプトンの良いところは、出先で何かあっても気軽に輪行して帰れることだ。

残念ながら私の謹製の11Tは破壊してしまったが、遠出に11Tは使えるということがわかった。11Tでは重すぎる場合も15TでだいたいOKで、休むダンシングをすれば幹線道路の坂程度では問題ない。当然ながら、ギアが重いと、高速に走れるが、疲れも早まる。11Tだと平地ならゆっくりめに走っても25km/hとか出るし、しっかり踏めば30km/h巡行もできるので、走っていて気持ちがいい。街乗りでは疲れたくないし汗もかきたくないので11Tは向かないが、サイクリングでは1日の終わりに疲れ切っているくらいが理想なので、11Tはそれにうってつけだ。まあでも、壊れちゃったものはしょうがない。また作るのも面倒だから、どこかに売ってないものか探している。(追記:11Tの作成については後日再挑戦して記事にまとめた

まとめ

ブロンプトンにて非真円52Tのフロントスプロケットに合う2段のリアスプロケットは何か検討した。13T/17Tは普段使いに最高だというのが結論だ。遠出するなら11T/15Tが良いので、たまに切り替えてもいいかもしれない。純正はその間をとった12T/16Tなので、さすがブロンプトン社は分かっていらっしゃるというところか。その他の設定は汎用性があまりないが、やたら山とかやたら平地とかいった特殊な行き先の場合に11T/13Tとか15T/17Tとかを設定してみるのも面白い。3000円のカセットスプロケットを買うだけでここまで楽しめるのだから、ブロンプトン乗りはぜひリアスプロケット換装遊びをやってみてほしい。