豪鬼メモ

一瞬千撃

KZ ZS10 pro購入

いろいろ調べてからヘッドホン(イヤホン)を買ったという話。自分の需要とコスパを考えて、KZ ZS10 proを選んだのだが、なかなか満足しているので、推奨の言葉を書いてみたい。
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いきなりどうでもいい分類の話だが、頭部に装着する小型スピーカの総称がヘッドホンである。音を出す開口部を耳の穴に突っ込むイヤホンはヘッドホンの一種だ。とはいえ、一般的にヘッドホンと言うとイヤホン以外の耳たぶを覆うタイプのヘッドホンを指すことが多い。しかし、そういった狭義のヘッドホンを指すイヤホン的な名前はない。Wikipediaによると、狭義のヘッドホンは「耳載せ型ヘッドホン」と言うらしい。また、イヤホンは、耳の外側の突起に引っ掛けて固定するインイヤー型と、耳の穴の内部に突っ込んで固定するカナル型に分けられる。

私は、カナル型のヘッドホンが好きだ。音質に関して言えば、スピーカの大きさの制限が緩い耳載せ型の方が有利なのは間違いない。しかし、耳載せ型を装着していると30分もしないうちに耳が痛くなってしまう私だ。昔はソニーMDR-CD900STという耳載せ型ヘッドホンを気に入って使っていたが、音は良いにしても、長時間の装用は辛かった。今回の主な用途としては、コロナ禍の引きこもり環境で作業用BGMを延々と流すというものと、たまにやる英語のリスニングに使うというものだ。よって、ダイナミックなサウンドで感動を呼び起こすというよりは、むしろ聴き疲れしない範囲で高音質というものが求められる。そうなると耳載せ型よりはイヤホンの方が望ましい。また、インイヤー型とカナル型を比較した場合には、遮音性が高く小音量でも音源の機微を楽しめるカナル型の方が望ましい。

ヘッドホンを変換器によって分類すると、主にダイナミック型とBA型(バランストアーマチュア型)に別れる。前者の方がダイナミックレンジに優れ、つまり再生できる周波数の幅が広いらしい。後者の方が解像度に優れ、つまり音源の波形により近い音が再生できるらしい。ダイナミックレンジと解像度のトレードオフというのはカメラのセンサーの文脈でもよく議論される話だが、多くの物理現象を突き詰めるとそのトレードオフに行き当たるというのは面白い。私の用途から言えば、ダイナミックレンジよりは解像度の方が重要だ。よってBA型の方が望ましい。可聴域の限界に迫る高音や低音はむしろ減衰してくれて構わないし、それよりは人の声をはじめとする中音の機微を忠実に再現してほしい。BA型の変換器は補聴器の技術が元になっていて、人の声を再生するという点では、通常のスピーカの機構を小型化したダイナミック型よりも優れているというのは理解しやすい。

BA型はダイナミックレンジが狭いので、担当帯域を違えた変換器を複数個搭載することでダイナミックレンジを広げる工夫がなされている。ハイエンドの製品にドライバ3つ搭載とか5つ搭載とかいった宣伝文句が並ぶのはそのためだ。個人的にはダイナミックレンジをあまり気にしていないので、1ドライバであるソニーのXBA-100という製品を以前から使っていて、音質的にはこれで十分だと思っていた。しかし、1ドライバである割には7000円くらいで買ったのは割高だった気もするし、そして数ヶ月で断線したのにむかついた。今回は、その価格帯で、それよりちょっと高音質なものを選びたい。量販店で試聴してみると、確かに複数ドライバの製品は低音部や高音部の聞き分けがよいので、音楽を楽しむことを考えれば複数ドライバであることは良いことだろう。

最近はBluetooth接続のヘッドホンが市場を席巻しているが、私は有線接続派だ。Bluetoothのコーデックによる音質低下や遅延に関してはそんなに気にしないのだが、接続が面倒なのと、充電を気にしないといけないのが嫌だ。そして、ジョギングの際にウォークマンとつなげて鳴らすと音がぶちぶち切れるのも嫌だ。作業用BGMとして使っている時間はPCを音源としてPCの前で聴く形になるので、有線で全く問題ない。ジョギング中に聴く時にも音が途切れないという点で有線の方が優秀だ。耳の上側に線を引っ掛ける「シュア掛け」をすればケーブルの摩擦音もほぼないし、本体もずれない。したがって、今のところ、古き良き有線の方が実用性が高い。

以上の経緯により、カナル型で、BA型で、できれば複数ドライバで、有線接続で、1万円以下のヘッドホンを探すという調査活動が行われた。アマゾンや価格コムでそれっぽい仕様の製品を調べてから各所のレビューを読み込む。仕様として良さげなものとして、WestoneのWST-W40-2019に目を留めた。BA型の4ドライバで有線接続にもBluetooth接続にも対応している。音質の評判も良さげだ。ただ、実売4万円ということで、予算を大きく超えている。そのくらいの金は出せなくもないが、コスパが悪い製品を買ってしまったら負け的な貧乏根性が邪魔をする。ていうかBluetoothユニットは、あれば嬉しいけど、それで値段が上がるようなら無い方が良い。

長く使えるものなんだから多少高くても良いと考える人もいると思うが、イヤホンの類は必ずしも長く使えるものではない。私の経験則としては、イヤホンは平均すると2年経たずに壊れる消耗品なのだ。席から立ち上がる際に椅子の肘掛けに引っ掛けて断線するかもしれないし、椅子のローラーに引かれて断線するかもしれないし、原因不明の劣化で断線するかもしれないし、ズボンのポッケに入れたまま洗濯してしまうかもしれないし、ふとした拍子に外れてコーヒーカップの中に落ちるかもしれないし、とにかく不意に壊れるものなのだ。よって、イヤホンに2万円は出したくない。1万円までのものを2年サイクルで入れ替えるのが既定路線だ。

代替品を検討したところ、KZ ZS10 proに行き当たった。これは4つのBAドライバと1つのダイナミックドライバというハイエンド的な構成ながら、実売5000円以下という価格設定だ。中国のメーカーなので、安かろう悪かろうという先入観がないでもないし、Amazonの商品説明の日本語も直訳調で怪しいものだ。しかし、各所のレビューサイトを見る限りは、評判は良さげだ。仕様の構成上で同等の他社製品よりもぶっちぎりに安いし、5000円ならば失敗してもまあ許せる範囲だ。有線接続の泣き所である断線についても、リケーブル対応ということで安心できる。1万円以下でリケーブル対応の製品は少ない。リケーブルで音質向上するという考え方には私は懐疑的だ。まともな評価が欲しい作り手だったら最初からまともなケーブルをつけるのが合理的だからだ。しかし、断線時にケーブル交換だけで済むというのはコスパの観点でメリットが大きい。似たような構成のCCA C12っていうのも評判が良いらしく迷ったのだが、KZ ZS 10 proの方が若干安かったのでこちらにした。

ということで、KZ ZS10 proを購入したわけだが、結論としては大満足である。解像度が良いというか、隣の部屋でなく同じ部屋の中で楽器が鳴っているような臨場感があり、また余計な誇張がなくて聴き疲れしない。人の声が聞きやすく、息遣いもよくわかる。iPhoneの付属イヤホンとかと比べると聞きやすさが段違いだ。小さい音量で音楽を楽しむことができ、今まで聞こえなかった音が聞こえる感じだ。また、大きめのイヤーピースをつけて耳の穴の奥にググッと押し込むと、ベース音などの低音もズンズンと感じられて楽しい。装着感も良く、ケーブルに耳掛け用のシリコンのパーツがついているおかげで、走りながら聴いてもずれない。これは良い買い物だった。なにしろこれで5000円以下なのだ。中国の製品はもはや安くて良いものになりつつあるということか。良いものは産地がどこであれ良いのだ。

ちなみにイヤーピースは大中小の三つが付属していて私にはLが最も合っていて、音も聞きやすかったが、それでも走ったりしていると外れることがあった。そこで別のメーカーのXELASTECという奴を買った。KZ ZS10 proは開口部の軸が太いので装着できるか心配だったが、大丈夫だった。サイズはLがやはり自分には合っていた。それをつけると遮音性が上がり、そして外れにくくなった。XELASTECが使っているTPEとかいう素材は体温で柔らかくなるそうで、イヤーピースが耳孔内の壁に合わせて変形するらしい。その結果、触れる面積が広くなり、遮音性と装着性が向上するっぽい。実際につけてみるとその通りで、より小音でも聞き取りやすくなって素晴らしい。ピースと耳孔が密着する結果、コードが擦れた時のタッチノイズが伝わりやすくはなるが、気になるほどでもない。とはいえ、低音がガツンと来る感じは付属のイヤーピースの方が上なので、XELASTECをわざわざ買い足すほどでもなかったかな。

蛇足ながら、最近は作業用BGMでサントラをよく聴くようになった。特に頻繁に聴くのは、真・女神転生Deep Strange Journeyのサントラと、幼女戦記のサントラである。双方ともYouTubeでも聴ける。私は作業用BGMとしてはクラシック系の音楽を聴くのが好みで、ドヴォルザーク新世界よりとかをよく聞いている。しかし、クラシック音楽の音源の多くは、忠実性を重視していているのか、サウンドエンジニアリングの点では物足りない感じがする。録音として聞かせるためだけに合成されたゲームや映像作品のサントラはその点で優れていて、聞かせたい音がガツンと前に来るように調整されている。BA型の解像度とも相まって、聞きやすく、小音量でも楽しめる。あと、Eurogrooveのベスト盤もよく聴く。歌物は言語情報が脳に入ってくるので作業用BGMとしての適合性は下がるのだが、日本語でなければあまり問題にならない。

そもそも、作業用BGMというのは、作業の合間に集中力が切れて他の娯楽に手を出しそうな瞬間にその場で心をもてなしてくれるのが役目である。集中力が回復して作業に入った後には、もう音は不要であり、認知されるべきでないものだ。したがって、小音量で楽しめることが第一に重要なのだ。もちろん、小音量で楽しめる音楽は大音量でも楽しめるので、ジョギングの際などに大音量にして聴くのも楽しい。さらに蛇足ながら、幼女戦記は原作小説もアニメもめちゃ良いので、ぜひ読んだり見たりしてほしいところだ。

ヘッドフォンを変えるとそれに合わせてイコライザやサラウンドの設定をして遊びたくなる。変換器やドライバの癖によって周波数帯の出力に偏りが出てくるのをイコライザ設定で相殺もしくは強調できる。鼓膜のすぐ近くで発音されるので反響音がほとんどないというヘッドホンの音響特性を擬似的に別の環境に近づけるサラウンド設定も面白い。ただ、いろいろ試した結果、両方ともオフにするのが最も心地よいという結論になった。音源を作る時点でサウンドエンジニアが努力して最適なイコライザ設定やサラウンド設定を施しているのだから、それに対してさらに画一的な効果を上乗せしても、より良くなる公算は低い。音源に応じて設定すればより自分の好みには近づけるだろうが、そんな面倒なことはやっていられない。プロが現像した写真をレタッチしてもっと見栄え良くしようとするみたいなもんで、自己満足に到ることすら難しい。

カメラ趣味はどこに行ったんだという話。コロナ禍で出かけなくなったりして、家庭内のゴタゴタもあり、あんまり写真を撮らなくなったのが現状だ。まあ落ち着いたらボチボチ撮るかもしれないけども、子供も大きくなってきたのでそろそろネット上で調子こくのも面倒がありそうかな的な気もしている。音楽を流しつつ小説や漫画を読んでいる方が楽しい今日この頃だ。そういう時期があってもいいよね。