豪鬼メモ

一瞬千撃

プロテクトフィルタとスプレー塗料で擬似アポダイゼーションフィルタ

前回から続く擬似アポダイゼーションフィルタの実験である。プロテクトフィルタにスプレー塗料でグラデーションを描けるのではないかと思ってやってみた。結論としては、また失敗である。
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遮光板の紙にレーザーカッターで開口部を作る作業をしながら思いついた。開口部と同じ形でマスキングパターンを作れば、それ以外の部分にだけ塗料を塗ることができる。プロテクトフィルタにそのマスキングをつけて、遠くから塗料をスプレーする。マスキングパターンを少しずつずらしながら何度か同じ作業を繰り返せば、うまいことグラデーションが描けるのではないか。

厚紙で直径27mmの円に内接する12芒星を作って、その中心に直径10mmの円形の穴を空けた。中心の円と同じ形を10個ほど作って、それを芯にする。
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芯をプロテクトフィルタの裏面の中心に貼り付けておいて、そこに12芒星を差し込み、回転できるようにする。枠にはマスキングテープを貼っておく。
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ベランダにて、実際の吹き付け作業を行う。マスキングパターンをちょっと回してからスプレーを吹き付ける作業を繰り返す。
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完成。ちょっと濃すぎたかな?
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マスキングを外してみると、こんな感じ。あれ、薄っすらと黒が塗られているはずの部分が、なんか白っぽくなっているぞ。なんか嫌な予感が。スクリーントーンの時と同じ展開だ。スプレー塗料は黒色の液体だけではなく、おそらく定着剤であるところの透明の液体が多く含まれているのだ。
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ともかく、レンズにとりつけて、実写。むむ。やっぱ白い。中央の開口部は良いのだが、グラデーション部分を通過する光のほとんどは散乱光になっているっぽく、盛大なフレアが出てしまう。
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同一被写体で比較してみる。上がフィルタなし、下がフィルタあり。いちおうグラデーション効果は出ているのだが、コントラストの低下がひどすぎて、使い物にならん。浴室の中のようだ。
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せっかくなので都内を散歩していろいろ撮ってみたが、どうにもこうにもダメ。暗いのに白い。青被りしてるし、鬱な感じ。
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スプレーの作戦は全くの失敗と言わざるを得ない。スクリーントーンの時は剥がせば普通のプロテクトフィルタに戻せたが、今回はプロテクトフィルタ自体がお釈迦になってしまった。この失敗を書いておくことで、同じ轍を踏む人が一人でも減りますように。


おまけ。依然として最善である紙の48芒星フィルタに戻して、アスレチックを楽しむ子供達を撮ってきた。フレアは出るが、後処理で修正すれば普通に使える。上で作ったスプレーのフィルタの作例に比べると、目が覚めたように鮮やかだ。
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実際に使ってみるうちに、紙フィルタならではの効果も面白いなと思えてきた。ピント面にもうっすらとベールがかかったようになるのだが、それはシャープネス処理をかけても消えない。シャープネス処理によってピントがどこかははっきりとした写真になりつつも、全体のふわっとした印象は残るので、夢の中にいるような雰囲気が出る。単なる「ゆるふわ」ではなく、キリッとフワッとという感じかな。昼間の撮影は開放絞りだとシャッタースピードが間に合わないことが多いので、NDフィルタの代わりに紙アポダイゼーションフィルタを使うのは普通にありな感じ。

何度も来ているコースなので背景を入れる欲求は薄く、そういう意味では中望遠一本で一日過ごしてもストレスは少なかった。ただ、やはりE-M10のAFの合わなさには辟易する。特に望遠域での合わなさはひどい。被写体が動いていると全く合わないし、止まっていてもヒット率は半分くらい。E-M1IIとかE-M5IIIとかだとマシなのかな。


おまけ2。絞りブラケットでアポダイゼーション効果を再現する実験をやり直してみた。F1.8、F2.0、F2.2、F2.5、F2.8、F3.2、F3.5、F4.0、F4.5、F5.0、F5.6の11枚を平均合成する。ここまで細かく刻むと点光源の玉ねぎ模様もあまり目立たないし、ボケのスムースさは完璧になる。これをカメラで実装したらかなりセールスポイントになると思うので、ぜひやってほしい。
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さらに、フィルタ回転ブラケットという概念を考えてみた。紙フィルタで12芒星くらいの荒さだと回折がそんなに起きないのでコントラスト低下の問題が少ない。しかしボケは汚くなる。
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ならば、12芒星を少しずつ回転させてブラケット撮影をして、それを合成すれば、回折を防ぎつつもアポダイゼーション効果が得られるのではないか。手で少しずつフィルタを回転させつつ、12枚を平均合成するとこうなる。手で勘ぐって回しただけなのでムラがあるが、強い回折を起こさずに美しいボケが実現できそうだとわかる。
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比較対象として、紙の48芒星フィルタの例も載せておこう。ボケ味の点では実は紙フィルタも素晴らしいところまで来ている。
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ボケ味を改善しつつ画質劣化がないという点では、最強は絞りブラケットで、次点はフィルタ回転ブラケットだろう。紙フィルタの回折はいかんともしがたい。ふと思いついたのだが、12芒星フィルタが露光時に高速回転していれば、一回の露光で撮れて画質的にも満足なんじゃないだろうか。露光時に1/12回転すれば完全にスムースになるわけだから、同調速度1/200sを前提とすれば、秒速18回転で良いはず。マブチとかタミヤのモーターギアセットとレーザーカッターを組み合わせれば実装できそうな気もする。ただ、あまり写真や工作に時間を使うと家庭崩壊の危険が。

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