Adobe Lightroom Classic CCの近頃のバージョンでは、プリセットがlrtemplate形式からXMP形式に変わっている。さらに、デフォルトのプロファイルがAdobe StandardからAdobe Colorに変わった。既存のプリセットは自動的にXMPに変換されるしAdobe Standardプロファイルも継続して利用できるが、今後のメンテナンス性を考えるとそろそろプリセットの棚卸しをして、Adobe Colorを元にしたXMPを作り、そのバックアップを作っておくのが懸命だろう。
詳しいことはAdobeのブログに書いてあるのだが、Lightroom Classic CC 7.3からいろいろ変わってはだいぶ使いやすくなっている。カメラキャリブレーションの一部として隠れキャラっぽく存在していたプロファイルが「現像の出発点」として前面に押し出され、誰しもがそれを意識して使うようになっている。まさに現像設定のテンプレートとしての位置づけた。まずは好みのプロファイルを選んでから、それに微調整を掛けて追い込んでいくという立て付けだ。
デフォルトのプロファイルとして導入されたAdobe Colorが、今までのAdobe Standardとはかなり趣が違うというところにやや戸惑う。コントラストが高くなって、暖色の色合いや幾つかの色のつながりが良くなっているそうな。実際の適用例を見てみよう。上がAdobe Standardで、下がAdobe Colorの適用例だ。プロファイル以外のパラメータは全てデフォルト。
ひと目で分かるのは、Adobe Colorはコントラストがかなり高いということだ。緑道の地面の日陰の部分に着目すると、Adobe Standardの方ではテクスチャが視認しやすいが、Adobe Colorの方がそうではない。そして、よく見ると、赤成分や黄成分の彩度がかなり高くなっているのもわかる。左にある赤い未や黄色い葉っぱを見ると違いがわかる。Adobe Colorは被写体に関わらず広い範囲の写真の見栄えを良くすると上述のブログで述べられているが、まあ確かにコントラストと彩度が高い方法に味付けるとABテストで勝つ傾向にはありそうだ。ただ、個人的には、コントラストが高すぎるのはそんなに好きじゃない。どちらかというと軟調で、シャドウからハイライトまで視認性が良い写真が好みだ。芸術作品ではなく、思い出の付箋を作っているので、より記録的な、情報量の多い写真を仕上げたい。
軟調気味な仕上がりがいいならAdobe Standardを継続して使えばいいし、用途に応じてAdobe NeutralとかAdobe LandscapeとかAdobe Portraitとかを切り替えるのも良い考えだ。しかし、ここは敢えてAdobe Colorを出発点にして、自分好みの調整パラメータを探っていこう。万人受けを狙っているであろうデフォルト設定を出発点とすることで、自分の好みの世間的な位置づけが明確にできる。今後乗り換えが発生する際にも、知見が多そうな場所を基準にしておくのは有利だ。Adobe Colorで暖色の色味が良くなったというのには私も同意するところで、Adobe Colorの例を見てからAdobe Standardの例を見るとなんだか青っぽくて生気が足りないような気すらしてくる。
Adobe Colorを出発点として、まずコントラストを調整していく。シャドウもハイライトも中央に寄せたいので、以下の調整を行う。そうすると、地面のテクスチャがずいぶん見やすくなる。
- Highlights: -25
- Shadows: +25
- Whites: -5
- Blacks: +5
- Clarity: +5
次に気になるのは、空の青がマゼンタ被りしていることだ。この傾向はAdobe ColorでもAdobe Standardでもその他のプロファイルでもだいたい共通して見られる。というか、長らくOlympus機のカメラJPEGやOlympus Viewerの現像例に慣れている私が、空色がもっとシアン寄りになっていないと落ち着かないだけだ。よって、Calibrationを以下のように調整する。これによって、「The 空色」って感じの空が描画される。この話は以前の記事でも述べているが、Adobe Colorを基準にしたことで調整値が変わっている。
- Red Primary Hue: -2
- Red Primary Saturation: -3
- Green Primary Hue: +4
- Green Primary Saturation: +1
- Blue Primary Hue: -6
- Blue Primary Saturation: +3
私が出発点とするプリセットとしてはここまで述べたものを保存しておけばよさそうだ。これを豪オリンパスと呼ぶ。それをベースに作例ごとに露出やコントラストや色味を微調整することになる。ちなみにこの例だと露出を+0.3してから、CalibrationのBlue Primary Saturationを+30くらいするとよさげだ。日陰部分の視認性を上げるために露出を上げると空が明るくなりすぎて彩度が落ちるのだが、それをBlue Primary Saturationを上げて補うというのは定番の技だ。Blue Primary Saturationは青系の色にだけ利いて肌色にはあまり影響しないので、人物が写っている写真で調整しても違和感が生じにくい。そういう意味ではプリセットとして登録してしまってもいいくらい便利。
いくつかの作例の現像例をAdobe Colorデフォルトと豪オリンパスの順で並べて比較してみよう。
コントラストに関してはやはりAdobe Colorのデフォルトのままだとほどんどの作例で硬調すぎる嫌いがある。空の色味に関しても豪オリンパスの方がかなり良い。ただし、黄色系の色でちょっと赤みが強すぎる感が出ることがある気もする。そのあたりの調整は今後の課題だ。
以下、全て豪オリンパスをベースに露出とコントラストだけ調整。空でも葉っぱでも花でも人肌でも大体のシーンで色味が私好みになる。とはいえ、あくまでプロファイルもプリセットも出発点に過ぎないから、切り替えたり微調整したりはしたくなるのだけれど。
ところで、プリセットの格納場所が ~/Library/Application\ Support/Adobe/Lightroom/Develop\ Presets/ から ~/Library/Application\ Support/Adobe/CameraRaw/Settings/ に変わっていた。CameraRaw以下に置くのはLightroom以外のアプリケーションでも同じプリセットを使えるようにするための工夫なのかな。
せっかくなので、ここで作った豪オリンパスと、以前作った豪クラシッククロームや豪プロビア等のXMPプリセットファイルをここに置いておく。きっとなにかのやくにたつから。