この写真は、ちょっと気に入っている。当家が2年前まで住んでいた家のすぐ近くなのだが、別に街並みを撮りたいわけじゃない。画面中央付近に見える自転車に乗った母娘が、マンションの谷間から差す西日に照らされた瞬間を捉えていて、なんか日常の一瞬を切り取った感があっていいなぁと。幼子を運ぶ母親の姿はなんとも愛おしくはないだろうか。実は家族で出かけた際に私が歩いているのに妻と子に自転車で先に行かれてやるせなくシャッターを押した写真なんだけども。この現像設定は前回までで述べたAdobe for Olympus設定であり、Adobe Standardがもともと軟調な上にShadowsを持ち上げているので暗部の視認性が上がっている。日陰が暗いことを表現しつつも、実際にそこにいたら見えるであろう道や建物の風景がきちんと視認できるという、ちょうど良いバランスがとれている。やはり長期保存するデータを作るならこれがベストな設定だろう。手動で調整するならもうちょいShadowsを上げたいところだけど。
ところで、Camera Calibration ProfileのNaturalをベースに調整するのは諦めたと以前に書いたが、うまく調整するとなかなか味のある絵を作れることもわかった。以下の設定である。もちろんオリンパスのRAWファイル限定だけど。まず、Camera CalibrationのProfileをNaturalにすると、コントラストが高すぎるのでContrastを-20くらい下げる。それでもシャドーとハイライトがきついので、Highlightsを-20、Shadowsを+30する。それでもシャドーとハイライトがきついので、Whiteを-3、Blackを+3する。そうすると全体的なコントラストが整って見易い感じの画像になる。オリンパス用のプロファイルは全体的に赤っぽい感じなので、それを相殺すべくCamera CalibrationのShadow Tintを-3して暗部を緑かぶりさせる。結果的に、なんかフィルム写真っぽい雰囲気になる。フィルム写真を眺めることがほとんどないので、想像で語っているけども。ともかく、Shadow Tintの-3という設定がミソで、これより強くすると違和感があるし、これより小さいと効果がわからない。
もうちょいわかりやすい例を出してみる。口にとろろ昆布をつけて喜んでいる子供。まずはAdobe for Olympus設定。当然、見易い。
そして、Olympus Natural軟調緑被り設定。暗部が締まってメリハリがあるわりに、ダイナミックレンジが広くて視認性が高いし発色も派手。レトロかつポップな感じがして、これはこれで好ましい。
他の例も見ていこう。Adobe for Olympus設定とOlympus Natural軟調緑被り設定の順で並べる。
Olympus Natural軟調緑被り設定でコクがある感じになるのは、緑被りの効果よりも、コントラスト調整の癖によるものだと思う。Naturalのプロファイルは、やたらコントラストが高くなるのだが、それに対してHighlightsやWhiteを引き下げてShadowsやBlackを上げていることで、特徴的な効果が発生するのだ。Contrast設定でヒストグラムを両端に寄せつつ、HighlightsとShadowでまた中央に寄せるというのは、矛盾しているというか、結局元に戻るだけじゃないかとも思うわけだが、そうではない。ヒストグラムの中心は嫌って両端方向に逃れようとするが両端も嫌うので、中庸の範囲でうまいことばらける結果が得られる。Clarityを上げても似たような効果が得られはするのだが、色が変になったり陰影が強調されすぎて立体感がおかしくなったりしやすいので、Contrast/Highlights/Shadowsの組み合わせを工夫した方が所望の絵が作りやすいと思う。
Adobe Standardのデフォルトと、それに対してContrast=+15、Highliths=-30、Shadows=+30という調整をした絵を並べてみるとよくわかる。調整後の絵は、中間階調のコントラストが上がりつつも、ハイライトやシャドーの部分の辛辣さが取れて優しい感じになって視認しやすくなっている。
Adobe Standardのデフォルトと、Contrast/Highlights/Shadows調整、そしてOlympus Natural軟調緑被りの順で並べる。Olympus Naturalのコントラストがめちゃくちゃ高いことがわかる。調整してこれだもの。
最初の例に話を戻すが、手で調整して現像するなら、私はこういう絵を好む。人間の目のダイナミックレンジはカメラのそれを遥かに超えるらしいが、その上でさらに記憶は瞳の絞りを変えながら観測した多数の画像のHDR合成で構成されるのであるから、コントラストが高い撮影環境の光をそのまま記録するというだけでは、直感に反する絵がでてきてしまう。冒頭で挙げた2枚の絵は、記憶と照らし合わせて考えると、変な感じがする。日陰だからって夜みたいに暗く描くのは逆に違和感があるのだ。カメラのセンサーが受光した光の強さそのまま再現するディスプレイなど全く望めない現状では、シーンに合わせた非線形のトーンカーブを採用するのが最善だ。何が正しいのかなんて論じるのは無意味で、どういうのが好きかという問題。そして、私はこういう絵が好きだ。
閑話休題。Contrastで中間調のコントラストを上げつつ、HightlightsとShadowsで両端を整えてあげると、コクがあってまろやかな絵を簡単に作ることができることがわかった。何事もやりすぎると破綻するけども。ていうかLIghtroom使いやすいなー。Olympus Viewer+ImageMagickで頑張ってた今までの苦労は何だったんだ的な。まあホテルとキャンプ場を比べてもしょうがないんだけども。
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