豪鬼メモ

一瞬千撃

ブロンプトンのスタンドをアクリル棒で作る

ブロンプトンのキックスタンドの代用をアクリル棒で作ってみた。要は、ロード乗りにはお馴染みの「めだたんぼー」を自作するという話だ。以下の写真を見るとスタンド無しに自立しているようにも見えるが、よく見ると透明のアクリル棒がクランクアーム付近を支えている。これはブロンプトン以外の自転車でも使える。500円の出費かつ14.4gの重量増加で済むので、最安かつ最軽量の解決策だと思う。


ロードバイクにはキックスタンドをつけないのが多数派だ。理由はいくつかある。まず、キックスタンドの分だけ重くなるのが嫌である。そして、キックスタンドで立てても風などで自転車が倒れることがままあるが、それで自転車が壊れるのが嫌なので、専ら壁に立てかけることが多い。コンビニやカフェ等で短時間でも目を離すなら、基本的に柵などに地球ロックする。さらに、キックスタンドはなんかダサいという風潮がある。

ところで、自転車で遠くに出かけたら、自転車を入れて写真を撮りたいと思うことが多い。その際には自転車は自立していてほしいが、スタンドがついていないとそれはできない。そのために「めだたんぼー」という製品をとある個人が制作販売していて、それは透明のアクリルの棒を使った即席のスタンドである。透明なので写真に写っても目立たないし、40gと軽量なのが売りだ。素晴らしいアイデアだと思う。

さて、私のブロンプトンにもスタンドがついていない。ブロンプトンは後輪の部分だけ折り畳む「お座りスタイル」で自立させられるので、日常生活ではスタンドは不要だ。ただ、上述のように走行スタイルで写真に収めたい場合、畳まない状態で自立していてほしいということがある。なので、めだたんぼーを私も買おうと思った。しかし、めだたんぼーはシマノロードバイク用に設計されていて、クランクの中央のBBシャフト部分に10mmの穴が空いていないと使えないらしい。私のブロンプトンも含め、8mmの六角レンチでスクエアテーパーを締め込むタイプのクランクを備える自転車では、残念ながらめだたんぼーは使えない。棒の先っちょをヤスリで削るという手はあるがちょっと面倒くさい。どうせ面倒くさいなら、もう自分で作ってしまうことにした。ホムセンでアクリル棒を買ってきて、鋸で適当に切って、ライターで炙って曲げればできそうだ。

仕様を考える。まず、8mmの六角レンチが収まる穴に入るアクリル棒はどんなものか。一辺がAの正三角形の高さは√3/2*Aなので、対角8mmの六角形に含まれる6つの4mm辺の正三角形の高さは3.46mmであり、対角8mmの六角形の内接円の直径は6.92mmということになる。よって、直径10mmのアクリルパイプの先を潰して6.92mm未満にすればよさそうだ。直径6mmの棒をそのまま使うか、テープ等で接合部の直径を水増しするという手もあるかもしれない。私のブロンプトンのBBシャフトの地面からの高さを測ったら、280mmであった。ちなみに私のロードバイクRFX8のBBシャフトの地面からの高さは265mmだったので、意外にもブロンプトンの方がちょっと腰高だ。スタンドで傾けた状態で安定させるには車体を7度傾けるとしよう。そうすると、傾けた状態での地面からの高さはsin((90-7)/180*π)*280 = 277.91mmだ。スタンドは10度傾けるとすると、スタンドの斜め部分の長さは277.91 / sin((90-10)/180*π) = 282.20mmということになる。とはいえ、実際のところ、こんな計算は全く当てにしていない。作りながら微調整すればいいことだからだ。とりあえず333mmくらいに切ったアクリル帽の先っちょ15mmくらいを73度に曲げたものを作って、あとは実際に取り付けてみて長さを調整すればいい。

近所のコーナンプロで直径10mm(内径7mm)のアクリルパイプを買ってきた。1mで470円なり。材料はこれだけだ。それを鋸で切断して、333mmのパイプを3本作った。1mのパイプから3本作れてお得だ。

片方の端をライターで炙ってから、ゆっくりとペンチで潰す。ライターで炙る際には、パイプを回しながら満遍なく熱することと、温度を上げすぎないようにすることが重要だ。150度くらいで十分に柔らかくなるので、それ以上熱する必要はない。温度が上がりすぎると気泡が出たり燃えたりしてしまう。

もう一度炙って、平たくなったものを折り畳んで小さくする。さらに炙って、なるべく丸っこい形になるようにペンチで形を調整する。

さらに炙って、形を整えてから、自転車の実際に挿入する六角レンチの穴に押し込む。少しずつ回して押し込んで、六角形ではなくその内接円の形になるように努力する。とはいえ、挿入できさえすればいいので、形は適当でいい。

端から15mmくらいの場所を炙って、73度くらいに曲げる(下の写真では曲げすぎているので、後で少し戻した)。この作業はかなりゆっくりやることが大事だ。曲げた部分が平べったくなりすぎると強度が落ちるので、側面を手かペンチで抑えるのも良い考えだ。あとは、全長が280mmくらいになるように逆の端を切断すれば完成だ。私の試行錯誤の結果としては、立てる際の棒の角度は10度よりも垂直に近い方が安定すると思う。よって、曲げる角度は80度くらいにして、棒の全長はちょっと短めの278mmくらいにした。実際のところ、角度も長さも適当でいい。仕上げに、切断面を炙って柔らかくしてから、実際の使用状態で棒を立ててみると、切断面が最適な角度になる。

重さを測ってみたら、14.4gしかなかった。中空のパイプなのが奏功して、かなり軽量に仕上がった。定番のミノウラのキックスタンドは160gで、本家めだたんぼーは40gなので、14.4gは快挙だ。

実際に取り付けてみると、ちゃんと自転車の重さを支えることができた。本家めだたんぼーは直径は10mmと同等だが中が詰まった棒である一方、この自作のものは中空だ。しかし、ホムセンで双方を比べた限り、強度はほとんど同じだと思う。

ならば、もっと細くても大丈夫なのかもと思って、6mmの棒でも作ってみた。しかし、残念ながらブロンプトンの重量を支えることはできなかった。形状が同じであれば強度は断面積に強く相関するので、直径10mmの強度と直径6mmの強度の比は100:36くらいと考えてもいいだろう。6mmが耐えられないのは仕方ない。中空だと実際の断面積は100mmよりも小さくなるのだが、中空円は中空じゃない円にかなり近い強度が出せるっぽい。

前輪ブレーキを固定する輪っかは100均の結束バンドで適当に作った。マジックテープを使っても良いが、結束バンドの方が小さくまとまる。必要十分なブレーキ(かなり弱めで良い)が利く大きさにしてから、接合部を接着剤で止めてしまえば、以後間違って縮めてしまうことはなくなる。大きさを決める際には、最初は大きめにして、少しずつ絞めながら何度も試すと良い。そうすると、ブレーキを少し握り込めば外れるし、同様にまたつけることもできる。結束バンドの製品は長め(25cm)が良い。その方が太くて強いからだ。

で、実際に外で使ってみた。期待通り、遠目だと棒がほとんど目立たない。結束バンドによるブレーキの固定を省いても水平な場所なら何とか自立させられるが、手抜きして倒れても悔しいので、念の為使った方がいい。ブレーキの固定をちゃんとしてあげると、キックスタンド並みには安定するので、写真を撮るくらいなら安心してできる。そして、透明なのが奏功して全然目立たない。流石めだたんぼーだ。




なお、柔らかい土の上で使うと棒が地面にめり込んでしまうので、その際は硬めの場所を何とか探すか、石などを棒の下に敷くのがよい。また、ブレーキの固定を省く場合、棒の接地点を前後させることで前後方向のトルクを微調整できるので、うまいこと安定する位置を探すことになる。

本家めだたんぼーは棒が二つの部品に別れていて収納性を向上させているが、その機構は面倒だし重量増になるので割愛した。私はブロンプトンのフレーム部分に加茂屋の輪行袋を入れているのだが、それと一緒に差し込んでしまえば長くても収納できるし、走行時にガタつくこともない。結束バンドも輪を潰してから棒の横に差し込めばいい。

そのままでロードバイクにもつけてみたら、普通に使えた。ロードバイクのBBシャフト穴は直径10mmくらいなのでブカブカなのだが、自転車の自重で棒が固定されるので、問題なく立つ。ブカブカが気になるなら接合部にテープを巻いて調整することもできる。ドロップハンドルでも長めの結束バンドを使えばブレーキを固定できる。

ぶっちゃけ、こんなものは木の枝でもいいくらいの単純なものだ。サイクリングの行き先で実際に木の枝で自転車を立てたこともある。しかし、丁度良い木の枝を現地で探すのって意外に大変だ。全長が28cmくらいであり、先っぽが曲がっていてボルト穴に食い込む形状になっていて、10kgfくらいの荷重に耐えられる必要がある。いい感じの森の中にいてもこれを探すのは数分では済まない可能性が高く、サイクリングの時間が勿体無いことになる。なので、自立した自転車の写真を撮るかもしれないと思ったなら、自作めだたんぼーをフレームに忍ばせて置くのは悪くない考えだ。

これからの季節だと、桜と一緒に撮る時に活躍するだろう。木の幹に立てかけて撮るのとかだと、自転車がほとんど視認できない状態になってしまう。それよりは、自転車を手前、桜を奥にして、その間の距離をそこそこ開けた方が良い。そうすれば、自転車が主役であることが明確になるとともに、背景の桜がぼかせる。桜や紅葉などは花弁や葉の一枚一枚を楽しむものではなく、集合状態としての色合いを楽しむものなので、アップで撮るのではなく、背景に入れてぼかしておいたほうがむしろ美しい。

まとめ。直径6mmのアクリル棒をホムセンで買って、切って曲げれば、ブロンプトン用のめだたんぼーのようなスタンドが簡単に作れる。自作すればかなり軽量に仕上がるので、走行性能を阻害することもない。フレーム内に入れておけば荷物も増えない。これはかなりうまくいったと言えるのではないか。3本作ったが1本しか使わないので、残り2本は誰かにあげよう。といっても身近にブロンプトン乗りがいないので、どっかのイベントにでも行った時にお近づきの印として渡すとかかな。