豪鬼メモ

一瞬千撃

Rec Mountに任意の小物を輪ゴムでマウントする

Rec Mountは自転車やオートバイにスマホなどを載せるのに便利である。スマホは主にナビとして使うだろうが、ナビを使わない時にはマウントが空になっていて勿体無い。ナビが必要な際にスマホをいつでもマウントできる状態を保ったまま、普段は別の小物を乗っけられるなら嬉しいだろう。輪ゴム(TPUラバーバンド)を使うとそれが簡単にできる。


私は自転車につけたRec Mountには普段はコンパス(方位磁針)をつけている。腕につけるリストコンパスをハンドルに括り付けることも可能だが、そうするとハンドルが鉄製なので針が狂ってしまうのだ。詳細については以前の記事で紹介した。それで満足して運用していたのだが、よく考えてみると、小物を付けるだけならわざわざ本家のマウント用のアダプタを買う必要はないと思った。

コンパス以外にも、腕時計のバンドに括り付けるクリップオンのアクセサリは、径の小さい輪ゴムを使えばRec Mountに簡単に括り付けられる。実際のところ、天然ゴムでできた本物の輪ゴムは劣化が早いので、モビロンバンドやN's Bandなどのポリウレタン製のバンドを使うべきなのだが、ここでは便宜上それを輪ゴムと称する。私はN's Bandを東急ハンズで買った。この用途で使うなら、折径4cmのものが最適だと思う。

輪ゴム2本か3本を単一の輪として使う。マウントしたい小物のクリップ部分にこの輪っかをひっかける。

輪っかの中にRec Mountの土台を通す。この時、小物の上下は正方向にする。

小物を手前に少し引っ張りつつ、右か左に捻って上下を反転させる。

小物を奥に倒して、マウントに乗っける。これで完成だ。

こんなんで大丈夫かと思うかもしれないが、大丈夫だ。小物が50gくらいまでの軽いものなら、落ちないし、ずれない。輪に使う輪ゴムの本数を増やせば、それだけ強度と固定力を増すことができる。ポリウレタンは耐候性があり、数年使っても切れない。しかも数本同時に使っていれば、一部が切れたら交換することにすれば、走行中に全部切れて困ることはない。

この方法の素晴らしいところは、小物を手前にひっくり返すとマウント部が空くので、マウントを元来の用途でも使えることだ。よって、普段はコンパスや時計をつけて運用していても、ナビが使いたくなった時だけスマホをマウントできる。ひっくり返した状態でも小物は落ちないので、わざわざ外して保管する必要はない。小物は出先で外すと無くしてしまうのがマーフィーの法則だ。

マウントした小物がずれないのは、Rec Mountのマウント部の十字の突起にゴムが引っ掛かっているからだ。輪ゴムの力が十分に強いと、小物の底面とマウント部の表面を密着させる力が働くため、前後にも左右にもずれない。上下方向の振動が加わると若干揺れてカチャカチャと音が鳴ることはあるが、それで小物が外れるようなことはない。

てことは、似たような構造の台座を作って、それに小物を固定すれば、Rec Mountに何でもマウントできることになるということだ。もうアダプタを買う必要はない。Rec Mountのアダプタって、原価数十円で作れそうなのに1000円以上してやたら高いので、それを輪ゴムで代替できるのは嬉しい。アダプタをつけても、小物とアダプタをどうやって接着させるかを考えるのも面倒くさい。輪ゴムなら、かなり小さいものでも対応できるし、上述した簡単切替え機能の恩恵も受けられる。Rec Mountのマウント部は35mmなので、奥行きが40mmくらいまでのものなら付けられるだろう。

台座を作るのは簡単だ。会員証とかポイントカードとか診察券とかのプラスチックのカードで不要なものがあれば、それを材料として利用できる。防振性が欲しいなら、ホームセンターでクロロプレンゴムなどのシートを調達してもいい。材料を用意したら、適当な大きさに切る。マウント部に輪ゴムで括り付けるための要求仕様は、20mm程度の幅の帯に輪ゴムが通せるようになっていることだけだ。台座と小物をどうやって固定するかは自由に決められる。接着剤で付けてもいいし、輪ゴムで括ってもいいし、小物の引っ掛かりに台座をうまくはめてもいい。

実例として、腕時計を取り付ける方法を紹介する。みんな大好きチープカシオの代表作F-91Wである。近年の物価高騰前は980円で買えたが、今は1540円に値上がりした。それでも廉価品の範疇だろう。それでいて、防水であり、月差30秒以内の精度で、電池が7年も持つ。デザインもダサいようで一周回って格好いい。軽くて薄いのに頑丈なので、自衛官消防官などの現場プロがG-Shockの代わりにこちらを使うことも多いそうな。これをバイクに付けるのが昔流行したらしいが、今回はこれを自転車にマウントしてみよう。

まず、F-91Wのバンドを外す。バンドはピンで止められているので、横から細い棒を差し込んで押し出す。押し出す方向はバンドに書いてある。押し込む棒はゼムクリップとかでOK。バンドを外したら、ピンを元に戻す。

台座を設計する。筐体にあるバンド用のスリットに台座をひっかけて固定する方式を採る。材料にはプラスチックのカードを使うが、ラジオペンチで曲げればかなり自由な形に加工できる。F-91Wのバンド用スリットは18mmなので、台座の幅は必然的にそうなる。また、二つのバンド用スリットの間隔は35mmなので、そこで折り目を入れる。折った部分は縦方向に壁を作り、2.5mm程度の厚みを作る。その壁がスリットに触れるところで、さらに折り目を入れる。折り目の先が1mmほどの爪になり、バンドのピンをひっかけて固定する。寸法は大体でOKだ。帯の幅は17mmでもよく、壁の高さは3mmでもよく、爪の長さは1.5mmでもよい。試行錯誤しつつ調整すべし。

実際の台座は、古いポイントカードをカッターで切って作った。そのままだとちょっとダサいので、マジックで黒く塗った。裏はもろヨドバシだ。台座の端に一つの輪ゴムを三重にして括って、その逆側の端には3本の輪ゴムをひっかける。

輪ゴムをひっかけたまま、爪部分をF91Wのバンドのスリットに通して、台座とF91Wを固定する。プラスチックのカードを折り曲げただけなのに、意外に強固に固定される。いったん嵌めると、結構力を入れないと外れなくなるので、ちょっとやそっとの衝撃では外れない安心感がある。

あとは、クリップの時と同様に、台座とマウントを固定する。コンパスの時と同様に、上下正方向、前後逆方向で取り付けてから、左右に捻って、奥に折り畳む。そうするとマウントの上に鎮座する。これだけだと振動でばたつくので、台座の上端に括り付けてある三重のゴムをマウント部の上の突起に引っ掛ける。これで四点支持になるので、一切ばたつかない。ゴムの力はそれなりの固定力を持つので、走行してもぶれたり落ちたりしない。

これで完成。めっちゃダサ格好いい。腕時計のバンドをそのまま使ってハンドルに巻き付ける方法とは一味違って、真ん中につけるとなんかサイクルコンピュータみたいな雰囲気が出る。むしろ、古のフラッシャー自転車の雰囲気があり、昭和の魂が燃え上がる。

スマホマウントに切り替える際にはこんな風になる。往年の超合金変形合体玩具みたいで格好良くないだろうか。

F91Wは7年も電池が持つし、軽くて丈夫で防水だし、盗まれる心配も少ないので、自転車につけっぱなしにするのにうってつけだ。ボタンを押せば光るので夜でも時間が見られる。普段時計をしない私としては、通勤の際に時間を確認しやすいのが便利だ。スマホをいちいちポッケから取り出すのも面倒だし、時間を見るためだけにマウントするのも面倒だ。また、F91Wはストップウォッチとしても使える。ストップウォッチとして使う場合、時計を腕につけていると両手離し運転をしないと操作できないが、マウントしていれば操作しやすい。タイムアタックインターバルトレーニングをしたいけどサイコンまでは必要ないとかいう場合にはストップウォッチがあると便利だろう。

このマウント方法は接着剤を使わないので、いつでも元の腕時計に戻せるのも利点だ。ゴムで小物と台座を固定する方法はかなり自由度が高く、小物の方に何か引っ掛かりがあればかなり多くのものに適用できるだろう。たいていの腕時計は同じ方法でマウントできるはずだ。スマートウォッチをつけたりしても面白いだろうが、高いもの、重いもの、壊れやすいものは止めておいた方がいい。

私は、平日の通勤では時間の把握が大事なので時計をつけて運用して、週末のサイクリングでは見知らぬ道を開拓したいのでコンパスをつけて運用している。週末は時間に追われずに行動したいので、むしろ時計は無い方がいい。Rec Mountの良いところはマウントする機材を自在に切り替えられるところだが、輪ゴム方式でも同様の利点がある。Rec Mount純正の接続部品だとマウント部より小さいような小物は対応できないので、輪ゴム方式を考案する必要があった。

なお、以前の記事でも述べたが、コンパスをつける場合、Rec Mount側を改造する必要がある。レバーの部品を外して、ネジをステンレスの皿小ねじM5に変えるのだ。鉄製の部品が近くにあるとコンパスの精度が出ないからだ。コンパスはSuuntoのClipperがオススメである。ここまでの写真に出てきたYCMのインサートコンパスを使った製品(原価50円以下)は精度がイマイチなのと、ベゼルが回転しないのと、蓄光(夜光)ではないという欠点があるからだ。SuuntoのClipperは2000円以上するが、おそらくまともに使えるリストコンパスの中では最安値だ。

せっかくなので、回転ベゼルの使い方をおさらいする。回転ベゼルは必ず回転しないポインタと組み合わせて使う。針が動く方式のマップコンパスは多くの場合で針の下に赤い矢印がついているが、それがポインタだ。リストコンパスは多くの場合で四隅のどこかに矢印や三角形がついているが、それがポインタだ。自転車にリストコンパスをマウントした場合、ポインタが斜め手前に位置して使いにくいので、それは無視する。あたかも自転車の前方がポインタであると意識する。私は真正面がわかりやすいように自前でポインタを付け足した。マウント部にシールを貼って線を書いただけだ。

地図を見て目的地の方角を確認したなら、ベゼルを回転させて、その方角とポインタの位置を合わせる。例えば135度(南西)に行きたいなら、ポインタが真正面にあるとみなして、135度が真正面になるようにする。

この状態で、文字盤の北(内部的には磁石のS極)とベゼルの北が一致するように、自転車を方向転換する。両者が一致した状態では自転車が目的地に向いていることになる。磁北の偏角を考慮して厳密に言えば、東京近辺では磁北は真北より8度くらい西にずれているので、文字盤の北がベゼルの352度(5度の目盛り1つ弱左)に一致する状態にする方が良い。

逆に、今自分がどの方向を向いているか知りたいならば、ベゼルを回転させて、文字盤の北とベゼルの北を一致させる。その時にベゼルの正面の目盛りを読めば、現在の方角ということになる。この際にも偏角を考慮するなら、ベゼルの352度と文字盤の北を一致させる。

腕時計もリストコンパスも、元来の設計通りに腕につければいいと思うかもしれない。しかし、普段時計を身につける習慣がない私は、高い確率で忘れてしまうのだ。自転車につけっぱなしにすれば、その心配はない。また、時間を見るのも方角を見るのもスマホでできるのだが、スマホをずっとマウントしているのは格好悪いし、盗難やら電池切れやらの心配をするのも面倒だ。マウント機構がついているのにスマホをマウントしていない状態なら、そこに時計やコンパスがついていた方が収まりがいい。

まとめ。Rec Mountに小物をマウントするには、輪ゴムを活用すると良い。クリップがついた小物なら、それに輪ゴムを装着してそのままマウントできる。腕時計やそれに類する腕にバンドで付ける小物であれば、適当な台座に輪ゴムで結束した上で、その台座をマウントすればいい。この方法だと、小物をつけた状態でもそのスマホ等をマウントするのに切り替えられるのが良い。台座は不要なカード類を切ったり折り曲げたりすれば簡単に作れる。スマホ用にマウントをつけたはいいが、普段の通勤通学や散歩的サイクリングではナビは必要ないのでマウントが空いてしまっている人は、ぜひとも時計やコンパスをつけてみて欲しい。