豪鬼メモ

一瞬千撃

17mm F1.2の屋外実写

またサブスクリプションサービスを使って、オリンパスのM.Zuiko 17mm F1.2 Proを借りた。45mmと25mmのProレンズの時と同様に、外で見かけた適当なものを撮ってみた。最初の例は、ハチ公像をF1.2で撮ったものだ。犬の高さは85cmだそうだが、それを1.5mくらい離れた位置から撮っている。大人の上半身ポートレートと同じような距離感だ。他のProレンズと同様に、ボケの際がジワッと溶けて美しい。それでいて、ピントが合った部分の解像も良い。これはいいものだ。


喫煙所の脇で文字通り日陰の存在になっているモヤイ像のこともたまには思い出してあげてほしい。これもF1.2の例だ。像の高さが2.5mほどで、それを3.5mほど離れた位置から撮っている。ちょっと引き気味の集合写真の距離感と言っていいかな。この距離でも開放なら背景に小さいながらボケ感が出せて、しかも前ボケも同時に表現しやすいので、主要被写体が自然に引き立つ。少なくとも「ここにピントを合わせたんだから、着目するのはここだよ」という意図が伝わる程度には前後をぼかせる。そして、このレンズは小ボケ微ボケも美しいことが確認できる。

これもF1.2で、被写体から90cmくらいのところで撮っている。背景の玉ボケっぽいボケの縁がちゃんとボケている。

玉ボケであることが視認できるくらいの大きさだとSTFモードの効き具合も視認できるようになるのだが、このSTFの例も対してボケ感があまり変わらない。つまりレンズ元来のボケが良いということだ。

もっと寄って40cmくらいの距離でアセビを撮影。これもF1.2。ここまで大きくぼかしてもちゃんとボケの縁は溶けている。後ボケも前ボケも嫌なところがない。

この例だとSTFモードを適用するともっと滑らかになる。

近接撮影でF1.2の大ボケが綺麗であることと、それをSTF加工するとさらに良くなることを示す例をもう二通り挙げる。



換算35mm(実際には実焦点17mmなので換算34mm)という画角は自然な視野に近くて使いやすいとよく言われるが、確かに日常の風景を記録するにはちょうどいいと思う。M43のF1.2というボケ量も手前の人物を目立たせるのに十分だ。

換算30mm画角のLeica Summilux 15mm F1.7と比較しよう。同じ被写体を同じ位置から撮影して、どのくらい写る範囲が違うかを確認しよう。17mm、15mmの順に掲載する。焦点距離1.13倍の違いというのは意外にでかい。





撮影位置を変えて、主要被写体が同じ大きさに写るようにすると、15mmと17mmの差はそんなに感じなくなる。1枚目は17mm F1.2で2枚目は15mm F1.8であるにもかかわらず、印象がほとんど同じだ。背景のボケに着目すると1枚目の方が若干美しいけども、若干だ。M.Zuiko 17mm F1.2 Proも良いのだが、Leica Summilux 15mm F1.7がかなり良いこともわかる。

いずれにせよ、大きめの彫像を引いて撮るなら普通に望遠レンズを使った方が良いかも。45mm F2.8。


17mm Proに戻してF2.8。このヘラクレスは背後から見た方が格好いい。弓を引く際には前から見える大胸筋や上腕二頭筋ではなく後ろから見える僧帽筋三角筋上腕三頭筋に力を入れることになるが、その躍動感が表れている。私も彼のように背中で語る男になりたい。

国立科学博物館シロナガスクジラ。この距離でもF1.2だと微妙に前後がボケるかな。本当に微妙にだけども。開放でもきちんと解像するというところが重要だ。

天海大僧正の毛髪塔。開放かつ逆光で木漏れ日を撮るという、いかにも軸上色収差のフリンジが出そうなシーンだが、やはり出た。とはいえ、微ボケのハイコントラスト部分に出るフリンジは後処理で消せるので、実際にはそんなに問題ない。この条件でカラーフリンジが出ないレンズの方がむしろ珍しい気もする。どうでもいい話だが、坊さんに毛髪ってなんか違和感がある。

上野東照宮の門。F3.2。これは門自体を強調すべくもうちょい絞りを開けるべきだったか。

上野東照宮五重塔。開放F1.2だが、ちゃんと解像していて素晴らしい。

湯島天神。F1.2。手前の提灯的なやつにピントを合わせてあるが、背後がうっすらボケて心地よい。

神田明神。F1.2。主要被写体がもうちょい印象的なものでないと、ボケ味だけよくてもしょうがない例。

湯島聖堂。F1.8。湯島聖堂湯島天神は混同されがちだが、前者は孔子で後者は菅原道真が祭神だ。神田明神は大黒、恵比寿、平将門だそうな。

神田川を渡る丸の内線の電車。F2.8。もっと絞ってもよかったかな。

渋谷の人々。F2.8。この例も、どこに視線を集めるでもない構図なので、ちょい絞った。結果としてISO1000まで上がったけど。

パンチョの旨辛ナポをF1.2とF4で。近接撮影はボケすぎるので絞ることが多いが、開放の方が美味そうに見えることもあるっぽい。

近所の寺の仏像。F1.2。前ボケと後ボケで主要被写体を挟めると立体感が心地よい。

いつもの消火栓。F1.8。他のProレンズの同様の作例よりもボケが綺麗な気がする。大ボケより中ボケの方が美しいこともあるだろうけど。

駒場日本民藝館。F2.2。建築物を取るにはちょいと画角が狭い(電柱が入るからこれ以上引けなかった)。年輩の人ばかり来る博物館だと思っていたが、入ってみると意外に若者が多く来ていた。イルミネーションでもプロジェクションマッピングでもなく民芸品を鑑賞する彼ら彼女らに幸あれ。

民藝館の前にある彫像。F1.2。これは1m弱の距離で撮っていて、上半身ポートレートで開放なら背景と主要被写体がそんなに離れていなくてもボケ感が出せた。


まとめ。M.Zuiko 17mm F1.2 Proは素晴らしいレンズだ。開放F1.2からよく解像するし、ボケは美しく、軸上色収差が目立つシーンも少ない。ただ、写りはいいんだけど、この画角が久しぶりなので、まだあんまり使いこなせていない。彫刻や花を撮るには広すぎるし、風景を撮るには狭すぎると感じた。被写体から3mくらい離れて撮って日常生活を記録するって感じの使い方がしっくり来るはずなので、それを踏まえてもうちょい使ってみる。