豪鬼メモ

一瞬千撃

キットのズームレンズと単焦点レンズの比較

キットのズームレンズM.Zuiko 14-42mm F3.5-5.6 EZが意外によく写るという話を以前の記事に書いた。じゃあ単焦点レンズはもっとよく写ってもらわないと意味ないわけで、何が違うのかを把握すべく簡単に比較をしてみた。

二児を幼稚園に送った後に世田谷公園に寄った。特に何も考えず、D51機関車をズーム広角端14mmのF5.6でパチリ。ちゃんと写る。そして換算28mm画角は状況説明的な写真にはうってつけだ。でも,
もうちょっと引いたほうがよかったなこれは。
f:id:fridaynight:20151113090730j:plain


単焦点のM.Zuiko 17mm F1.8に変えて同じくF5.6でも撮った。もちろんこちらもしっかり写っている。そしてまたも寄り過ぎた。もっと引いてかつもっと絞った方がよかったな。
f:id:fridaynight:20151113090353j:plain

さて、画質云々を論じるには、同じ被写体を同じ構図と設定で撮って比較しないといけない。カメラから2mの距離にある看板をまずはM.Zuiko 25mm F1.8のF5.6で撮った。ちょっと樽型歪曲はあるが、文句なくよく写るレンズである。
f:id:fridaynight:20151113091341j:plain

同じものをMZ14-42mmの25mmかつF5.6で撮った。こちらもよく写るレンズだ。当ブログでは1600x1200で写真を上げているのだが、このサイズではMZ25mmとMZ14-42mmの解像度の違いを見分けるのは難しい。ただ、この時点で気づくのは、黒い文字に赤っぽい縁取りが見えるということ。色収差である。
f:id:fridaynight:20151113091437j:plain

等倍で画面中心付近を見てみよう。左がMZ25mmで、右がMZ14-42mmである。解像度の点でもMZ25mmに軍配があがるが、色収差の出方がやはり決定的に違うことが確認できる。
f:id:fridaynight:20151113185145p:plain

画面端付近だとこの傾向がもっと顕著になる。解像度の点でも色収差の点でも明らかにMZ25mmが優れている。単焦点レンズの面目躍如といったところか。
f:id:fridaynight:20151113185903p:plain

1mまで寄って同様の比較をしてみる。MZ25mmが上でMZ14-42mmが下。なお、両者ともAFで何枚か撮って最も解像しているものを選んでいる。やはり解像度の差というよりも色収差の出方で両者が区別できるな。
f:id:fridaynight:20151113091720j:plain
f:id:fridaynight:20151113091758j:plain

等倍で画面中心付近と画面端付近をそれぞれ見てみる。左がMZ25mmで、右がMZ14-42mm。なぜか2mmの例よりも差が小さいけれど、間違いなく区別できる程度には違う。
f:id:fridaynight:20151113191215p:plain
f:id:fridaynight:20151113191422p:plain

MZ25mmとMZ14-42mmの解像度の差は等倍で見ないとわかりにくいレベルであるが、等倍で見るとやはりMZ25mmがよく解像するということが、ここまででわかった。そしてMZ14-42mmの最大の弱点は色収差である。色収差がブログやSNSに上げるようなサイズの写真でも視認できるほどに残っている。E-M10の画像処理エンジンは色収差をデジタル補正で除去する機能が実装されているが、それでも取りきれないらしい。MZ14-42mmで撮った時にたまに感じられる「ぼやけてる感」「周囲に流れている感」「アクリル板越しに見ているみたいな違和感」というのは気のせいじゃなく本当にあるのだ。ダメ押しにブラインドテストをやってみてほしい。もうどちらがどちらか識別できるだろう。
f:id:fridaynight:20151113091917j:plain
f:id:fridaynight:20151113091950j:plain

家に帰ってテーブルフォトの比較もしてみた。メジャーを使って距離を測り、カメラ(センサー面)からの距離が50cmの位置にモルツの缶を置いて、そこにフォーカスを合わせた。奥のギネス缶とリンゴは70cmの場所に、花は100cmの場所に置いた。手前のカキは30cmと20cmの場所に置いた。上の例がMZ25mmで下の例がMZ14-42mm。
f:id:fridaynight:20151113100740j:plain
f:id:fridaynight:20151113101056j:plain

こういうシーンの場合、両者の違いは小さい。ブログサイズではどっちがどっちかわからないくらいだ。被写界深度内の被写体がごく一部だけなので解像度の違いがわかりにくい。またコントラストが高い被写体もないので色収差も目立たない。画面周辺がぼけているので画面端で顕著になる差も見出しにくい。ただし、等倍で中央の合焦部を見ると微妙に違うのがわかる。
f:id:fridaynight:20151113195656p:plain

ボケの形が綺麗か汚いかという議論もあるが、この例ではそれもわかりやすい。MZ25mmの例は輪郭部分が単調かつ漸次的変化をするのに対し、MZ14-42mmでは、いったん色が濃くなってから色相も乱れつつ薄くなっていく。うるさいボケというやつだ。
f:id:fridaynight:20151113200238p:plain

結論としては、単焦点レンズM.Zuiko 25mm F1.8はやはり画質の面でズームレンズM.Zuiko 14-42mm F3.5-5.6 EZよりも有利であると言えよう。少なくとも色収差、解像度、ボケ方においてMZ25mmの優位性は間違いない。これで写りが悪かったら自分のせいなのだと、ある意味安心して使えるのが最大の利点かな。単焦点かわいいよ単焦点

一方で、キットだしズームだしパンケーキサイズだし自動開閉である便利レンズのMZ14-42mmの画質もかなり健闘しているという評価をすべきだと思う。MZ25mmとMZ14-42mmの作例の弁別をブラインドテストされるとして、等倍で見るならば私は95%以上の確率で正解すると思うが、1600x1200とかだと80%くらいかもしれない。だって、冒頭の機関車の写真には何ら不具合は見つけられないのだから。いずれにせよ、単焦点もズームもそれぞれ長所と短所があるので、うまく組み合わせて付き合っていきたい。

Robinの作例に比べて自分のが解像していないように見える件についてだが、おそらく二つの原因がある。ひとつは、ピンボケか手ブレで、本当にちゃんと写っていないものを見ていただけだということ。明るいシーンでは、単焦点の明るいレンズで絞りを開いてピントを追い込んでから絞って撮ると、ズームの暗いレンズよりもピントを厳密に合わせやすいのではないか。これはマニュアルでもAFでも同じ理屈で効いてくる気がする。さらに、暗いシーンでは絞りを開いた方が手ブレも動体ブレもしにくい。もうひとつの原因は、Robinの作例の方がシャープネスが若干強い気がする。私もちゃんと写ってそうな写真でシャープネスを若干高くしてみたら、しっかりと解像感のある出力を得ることができた。