ImageMagickの量子化ビット深度について以前の記事で述べたが、そこで16ビットと32ビットの挙動が同じだったことが疑問だったので、もう少し調べてみた。結論としては、-gammaオペレータが32ビットに対応していないのが原因である。代わりに-levelオペレータのガンマパラメータを使うと、16ビットと32ビットで違いが出るようになる。
続きを読むImageMagickのビット深度と画質劣化
写真のレタッチでよく言われるのが、加工すればするほど画質が劣化するという話である。画像処理の際の画質の劣化は量子化誤差に起因する。多くのレタッチソフトは各チャンネルの情報を16ビットで持つため、何か処理をするたびに、各ピクセルの各チャンネルの計算結果を0から65535までの16ビット値に丸めることになる。そういった操作を何度もやるとその誤差が蓄積されるというわけだ。例えば、20%グレーの値は13107だが、それにガンマ補正0.84をかけるとすると、(13107 / 65535)^(1/0.84) * 65535で 、9646.42になる。これは実際には9646に丸められて保持されるので、-0.42の誤差が発生する。65535分の-0.42なんて誤差は小さいようにも見えるが、この誤差は以降の演算で増幅されていく。
同じ問題がファイル保存形式のビット深度でも発生する。例えばJPEGは8ビット固定なので、画像処理の結果をJPEGに書き出すと、JPEG圧縮による劣化を無視したとしても、8ビット量子化の誤差が画質を大きく劣化させてしまう。しかし、ファイル保存形式の量子化誤差は、RAWから最終出力までの画像処理を同一ソフトウェアで一気にやってしまえば回避できる。ファイルに書き出すにしてもTIFFやPNGなどのビッド深度を指定できる形式にして16ビットやそれ以上のビット深度を選べばよい。
続きを読むモノクロ写真はカラーフィルタを当てるのが楽しい
モノクロ写真の醍醐味のひとつは、表現意図に応じた露出設定や加工をすることで被写体の陰影を引き立てられることにある。そして後処理でコントラストを上げると印象的な画像に仕上がることが多いという話を前回の記事に書いた。今回は、カラーフィルタの選択についてちょっと探ってみたい。
白と黒の間の輝度の濃淡だけで全てを表現するモノクロ写真なのに、カラーフィルタを適用するとドラスティックに印象が変わるという逆説的なところが、ちょっとしたエンジニアリング魂を揺さぶらないだろうか。白黒フィルムで撮影するのであれば撮影時につけた物理的なカラーフィルタの効果やフィルムの感光スペクトルの特性を後から変えることはできないが、デジタルのカラー画像をグレースケールに変換する過程においては、無限の種類のフィルタを後処理で適用しながら、表現意図に応じた最適な効果のものを選択できる。しかもフィルムの場合はフィルタによって減光率が変わるので露出の調整が面倒になるらしいが(やったことないので詳しく知らないけど)、後処理でやるならそういった調整は全く必要ない。カラー写真がうまくとれていさえすれば、そのポテンシャルを生かしたモノクロ画像が得られる。
続きを読むモノクロ写真のいいところ
写真撮影が趣味の人のいくらかはモノクロ写真を好んで撮るらしい。一般的なデジカメだとカラー画像を撮影してからグレースケール変換をかけて最終出力を得ているわけで、情報の質という意味でモノクロ写真が優るということはありえないのだが、でもやっぱりモノクロ写真ならではの良さを求めてその変換を行うようだ。色がないおかげで陰影に意識が集中するので立体感が堪能しやすいとか、色がないおかげで実際はどんな色だったのかを想像させる余地が生まれるとか、まあとにかく色を捨象するという一歩進んだ抽象化を選択しているということらしい。なんか格好いいので私もやってみたくなる。
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