豪鬼メモ

一瞬千撃

MT-25で長野ツーリング

中型バイクMT-25を借りて、長野の東御市までツーリングしてきた。といっても、実家に帰省する足として使っただけなので、あまり観光はしていない。


Youtubeでバイクのレビュー動画が推薦されると、ついつい見てしまう昨今である。特にneo masatomu氏の自分用乗り換え参考レビューシリーズが面白くって、全部視聴してしまった。
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他の人のレビューも見て回った結果、中免で乗れる機種の中ではMT-03がいいんじゃねと思い始めた。シート高は780mmでギリギリ許容範囲だし、320ccの42馬力の割に車重167kgと軽めだし、最大トルクが9000回転と低めで出るから低回転の街乗りが得意そうだし、2気筒(180度パラツイン)なので単気筒よりは振動が優しそうだ。総じて乗りやすそうな仕様だ。定速燃費が41.6km/Lとそこそこ良いのも素敵だ。

先週末は急遽実家に帰省する予定が入ったが、ツーリング日和でもあったので、MT-03をレンタルしてみる絶好の機会と思った。が、東京近郊で借りられる全てのMT-03はその日程では予約が入っていた。そこで、たまたま利用可能であった兄弟車のMT-25を借りることにした。これはMT-03をボアダウンして車検を回避した弟分的な存在で、車検がいらないのが最大の売りだ。シート高は同じく780mmで、250ccの37馬力だが車重は変わらず167kgで、最大トルクは12000回転なので比較的高回転型で、180度パラツインなのは同じだ。総じて、パワーダウンしたMT-03だ。定速燃費は37.5km/Lで、なぜかここでもMT-03に負けている。

いずれ自分のバイクを持てる時が来るなら確実にMT-03の方を選ぶだろう。しかし、レンタルできるのはMT-25だけだったので、まずはこれに乗ってみることにした。何事も経験である。近所のバイク屋で借りた後に、ひたすら北東を目指す。高速でまっすぐ走るだけだとあんまり乗り味がわからないので、下道を選択した。環状七号、目白通り、17号、18号と乗り継げばいいだけなので、ナビを使わなくて道は簡単だ。

まず乗ってみて思ったのは、シート高780mmの足つきは私にとってギリギリだということだ。シートの一番前の細まっているところに座った状態で、やっと両足の母指球が付く。しかし、その状態だとタンクにチンチンが押されて痛い。ちょっと尻を後ろにずらすと、母指球がつかなくてちょっと不安になる。我慢できないことはないが、快適とは言い難い。自分のだったら絶対にローダウンする。

とはいえ、走り出してしまえば、とても運転しやすい乗車姿勢になる。尻を10cmくらい後方にずらして乗ると、シートがいい感じに幅広になっていて、しかも硬くも柔らかくもない絶妙な感触だ。また、やたら横に突出したタンクの淵に膝頭が自然に沿う形になって、勝手にうまいことニーグリップしてしまう。その状態だとつま先も自然に車体に沿う形になる。尻を後ろにずらすだけで、意識せずとも教科書的な乗車姿勢ができてしまうのだ。ギアペダルやブレーキペダルの位置も申し分ない。ハンドルの高さや体からの距離も丁度いい。ステアリングもアクセルワークもやりやすいし、いい感じに車体をバンクさせられる。惜しむらくは、乗車姿勢と停車姿勢に切り替える度に尻をスライドさせるのが面倒なことだ。いっそのことシートごとスライドしてくれればいいのに。

前回のレンタルで車重102kgのグロムを借りた後なので、乗り出してからしばらくは車重169kgは重く感じた。オートバイは自転車みたいな操作をしていては曲がらないということを改めて思い出して、逆操舵とニーグリでの荷重を意識し出すと、重さか苦で無くなってくる。曲がりにくいと感じさせる力は車重に由来する慣性力だけじゃなくてタイヤやクランクが回転することによるジャイロ効果もあるので、車重が軽くても下手な操作をすれば曲がりにくいのは然りだ。実際250ccで169kgは普通の車重と言うべきだろう。

車体の見た目に関してだが、まずフロントフェイスがロボットみたいなのが特徴的だ。昔ながらの丸目ライトの方が私の好みには合うが、慣れるとロボット顔も悪くないと思えてくる。次に、無駄に横に張り出しているように見えるタンクが目立つ。しかし、上述したように、このタンク形状は機能美の結果なので、それに気づくと好きになる。その他の部分は、そつがない。高級感があるわけでもないけど、安っぽいと感じさせる部分もない。エンジンのアンダーカバーの造形とか、スイングアームの末端の形とかもそつがない。総じて、普通に格好いいバイクだと思う。

動力性能に関してだが、これもそつがない。低速トルクに不足を感じることはなく、発進も加速もしやすい。ギア比も直感的で、1速から6速までリニアに切り替えていける感じがする。パワーバンドも細くなく、4速でずっと街中を流せる。6速の4000回転でメーター読み60km/hくらい出るので、低回転を維持する燃費走行もやりやすい。高速走行時のパワーも十分で、メーター読み100km/hは普通に出せるし、頑張れば120km/hもいける。70km/hを超えるとエンジンの振動が感じられるが、手が痺れるってほどではなく、単気筒の振動よりもだいぶマシだ。プールの更衣室にある水着用の脱水機の振動に似ている。70km/h未満の速度域だと振動はとても優しく、好感が持てるエンジンだ。パワーダウン版の位置付けのMT-25でこのように十分満足のいく能力なのだから、パワーアップ版のMT-03はさぞ素晴らしいのだろうと期待が高まる。

さらに特筆すべきは、ギアが非常に入りやすいことだ。他の車種のレビューでギアがニュートラルに入りにくいという声をよく聞くし、私が今までに乗った車種でもニュートラルに入りにくいものは多かったが、MT-25はめっちゃニュートラルに入る。実際、ニュートラルに入れる操作をほとんどミスしないのはこれが初めてだ。他のギアへのチェンジもやりやすく、スコスコ入る。おかげで、ノークラッチシフトアップもやりやすく、3速から上へのシフトアップは基本的にノークラッチでやるようになった。ギア操作のストレスがないと、ストップ&ゴーが多い街中の運転がかなり楽になる。

湯の丸高原までの峠を通ってみたが、ワインディングも走りやすかった。ビビリな私は高速なコーナリングなどせず、むしろ低速すぎて失速で転けそうな曲がり方をするが、遅いなりにトルクとバンク角を調整しながら思い通りのライン取りができるのは気持ちがいい。

帰りは関越自動車道を使ったが、快適に走れた。段差を乗り越えた時だけはちょっとひやっとするけど、高速走行に必要なパワーと直進安定性は十分で、特に不満はない。下手にもっと速度が出せてしまうと逆にあぶないかもしれない。

東京に着いてから、燃費チェック。今回は390.6km走行して、11.25Lのガソリンを使った。よって、燃料消費率は34.72km/Lだ。特に燃費が良いというわけじゃないけれども、250ccクラスの中では良い方なのではないか。

まとめ。MT-25は素晴らしいバイクだった。私にとって足つきが最善とは言えないが、走り出した後の乗りやすさに関しては全く文句がない。パワーの出方も変速操作もハンドリング操作も直感に沿うものだ。VTR250やCB400SFもそれぞれ良かったけど、MT-25の方が乗りやすい。自分にはグロムで十分と思っていたけれど、やっぱり中型もいいな。MT-25でこれなのだから、同じ筐体でエンジンパワーに優るMT-03はさぞかし素敵なんだろうと期待する。近いうちに機会を見つけて乗ってみよう。ただ、足つきの点ではVTR250やCB400SFやグロムの方が断然良いので、悩ましいところだ。

というか、日本人の身長は男性170cmの女性158cmくらいなので、間を取ると164cmくらいで、まさに私の身長なんだけども、それで足つきが悪いバイクがほとんどってのは、業界としてどうなんだと。日本市場を主軸にしていないからとか、女性を念頭に置いていないからってのはあるんだろうけど、それにしても足つきの悪いバイクが多すぎる。でかいバイクがたくさん売られていても全然いいんだけど、小さいバイクも作ってくれと。車高低くてよく走るバイクがもっとあったら、新規ユーザを開拓できると思うんだがなぁ。とりあえず低めに作っておいてハイシートで高く調整できるようにしたっていいじゃないか。