最近買った広角単焦点レンズLeica DG Summilux 15mm F1.7だが、やはり日常のスナップ写真を撮るのに使いやすいのでちょくちょく持ち出して使っている。遠近感に違和感を覚えない程度に広い画角と適度なボケが実現できるレンズだ。開放F1.7でもピント面から数メートルも離れると背景を大きくぼかすことはできないが、それでもスマホの写真よりは大きくぼける。視線誘導の強制力は大きくないにしても、ピントがどこに当たっているかで主要被写体と背景を識別できる程度には効果がある。
被写体が近ければ大きくぼける。ふんわりとしていてボケ味も綺麗だと思う。後ボケに関しては、錯乱円の境界付近で光量が漸減することで、周囲と溶け込むような効果が出ていると言えそうだ。
後ボケの境界光量が漸減する設定の代償として逆に前ボケの境界光量は漸増して汚くなるのが一般的らしい。確かに比較すると後ボケの滑らかさに比べて前ボケはざわついた印象になる気もする。ただ、前ボケも二線ボケやリングボケと認識されるほど目立つことは少ないので、絶妙な調整と言えるのかも。
この例だと前ボケと後ボケの傾向がよりわかりやすいかな。後ボケの溶けた感じに比べると前ボケは鎌状の輪郭が感じられる。普通、特にスナップ写真用途では、主要被写体を手前に置くことが多いので、前ボケの円滑さを犠牲にしても後ボケを綺麗にするという設計は合理的だと思う。この例だと、ピント面の前のパープルフリンジとピント面の後のグリーンフリンジの傾向もわかるが、そこは惜しいところだ。
スナップ写真の典型として、主要被写体から1メートルばかり離れて撮ったシーンを想定してみる。その場合に絞り値を変えることでどういう効果が出るのか。まずはF1.7開放。主要被写体も含めて画像全体のクッキリ感はないが、背景が比較的大きくボケるので主要被写体に視線を誘導する効果が大きい。雰囲気のある写真とか形容されることが多そうだ。
F2.0。開放F1.7からすると半段(log2(2.0 / 1.7) * 2 = 0.4689段)ほど絞った計算になるが、ボケ量としてはほとんど変わらない。ただ、等倍で見ると主要被写体がよりシャープになっているので、絵のバランスとしては開放よりもF2.0の方がよさげ。
F2.8。このレンズのスイートスポットとも呼べる絞りで、解像とボケ量のバランスがもっとも良いと思う。もちろんそのバランスは被写体によって変わるものだけれども。
F4.0。中央も端も含めて画面全体の解像が最高になる絞りだが、この例の場合には周辺の解像はどうでもいい。背景も十分に視認させたい場合にはこの絞りでもいいかな。
F5.6、F8.0、F11.0を続けて載せるが、絞るに従って背景がくっきりしてくる。F11にもなると何が主要被写体なのかわからなくなって不自然というか、目が混乱してしまう。
前の記事でも述べたが、Summilux 15mmの欠点は軸上色収差である。それはボケの輪郭にカラーフリンジとなって出現することもある。拡大するとよくわかるが、絞りを開き気味にすると、玉ボケの内側に紫色の滲みが出て、玉ボケの外側に緑色の滲みが出る。この問題はF2.8でだいぶ軽減されて、F4.0でほぼ目立たなくなる。
色収差は後処理で消すこともできる。Lightroomのdefringe補正をかければこの通りほとんど視認できなくなる。副作用を避けるためには補正対象範囲を絞るマスクを指定することになるのが面倒だけど。
同じ部分をグレースケール変換してみると、ボケの陰影は滑らかであることがわかる。もし色付きがなければボケ味に関しては開放F1.7の方がF2.0より滑らかで良さげ。
このレンズをつけていると、日中だと軸上色収差の問題によく出くわす。ボケの一部にカラーフリンジが出たところで拡大して見ないと気づかないことも多いし、気づいたとしても後処理で消せるが、気になるっちゃあ気になる。なので、神は細部に宿るとか言いたいタイプの人はF4以上に絞るといい。ホリスティックな視点で眺められる人にはF2でも全然OKかな。間をとってF2.8とかどうでしょう。
ということで、スナップ写真にはF2.8あたりが美味しいことが多い。なので、私のE-M10はユーザ設定で、電源を入れた時にAモードで絞りF2.8になるようになっている。電源を入れたらあとは被写体の位置にピントのカーソルを合わせてシャッターを押すか、急いでいる時は背面液晶のタッチシャッターで撮れば、多くのケースで満足のいく写真が残せる。所作に余裕がある場合には、撮影意図に合わせて絞りを調整するけども、それでもF2.8が起点になっていると期待値最小の手順で完了する。
せっかく大口径の単焦点レンズを持っているのにF2.8に絞るのは勿体無い気もする。しかし、F2.8でも、ほぼ同じ画角(換算29mm画角)のiPhone8よりは遥かに大きくぼけるのだ。iPhone8のレンズの実焦点距離は4mmで絞りはF1.8固定なので、1.8 * 15 / 4で、ボケ量はSummilux 15mmのF6.75に相当する。なので、F2.8でもスマホでは撮れない絵が撮れていると言える。フルサイズ機の同一画角のレンズを基準とするとF5.6相当のボケ量しか得られない計算にはなるが、デフォルト値としてはそれで十分だと思う。開放F1.7に開けばフルサイズのF3.4程度にはボケることになるわけで、フルサイズでも廉価なF3.5-F5.6やF4通しのズームレンズには張り合えると言えなくもない。実際、この例のような上半身ポートレートの距離感ではF1.7のボケは十分で、むしろ被写界深度を大きくするためにF2.8に絞れば良かったとすら思う。
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