豪鬼メモ

一瞬千撃

ブロンプトンで東京湾一周の旅

今年最後のロングライドとして東京湾一周の旅をブロンプトンでしてきた。200km弱の行程だったが、小径車でも意外にいけるものだ。


琵琶湖一周はビワイチ、霞ヶ浦一周はカスイチ、淡路島一周はアワイチ、富士山一周はフジイチとか言われる。そして、東京湾一周はワンイチとか言われる。輪を使う趣味だからかどうかは知らないが、サイクリストは何かを一周するのが好きらしい。私もせっかく東京に住んでいるのだから、いつかはワンイチを完遂すべきと思っていた。そして先日、冬休みに入った勢いで、ついに敢行した。久里浜港から金谷港まではフェリーに乗ったが、その距離を抜くと199kmの旅であった。

今年の仕事納めを終えて、12月23日の朝、くそ寒いが快晴だったので、朝8時過ぎに家を出た。その時点では、まだワンイチに挑むかどうかは決めかねていた。普通に多摩川の丸子橋あたりまで行って読書に耽るという案もあった。事前に調べて大雑把な行程と距離は知っていたので、やるなら頑張らねばならないことが脳裏にあった。しかし、私は本来は頑張りたくないのだ。ノリに任せて走っていたらロングライドになっていたというのは大いにアリだが、予め目標を立てて頑張るのは気が向かない性質だ。なので、多摩川大橋を渡るくらいまでは、何も考えずに走っていた。

1号を南下して川崎を過ぎて鶴見川を渡って横浜に入る頃になると、いい感じに体が温まってきた。ここしばらくやっていたグリスアップなどのチューニングの効果で、乗り味も軽い。ここで、ワンイチを決めてやろうという腹になった。ならば、スタンプラリー的に各地の写真を取っておこう。まずは、みなとみらい21

横浜からは16号で南下することになる。何度も通った道なので特に感慨もないのだが、横浜市ってやたら広いなぁといつも思う。そして、ぼざろでお馴染みの金沢八景の神社で休憩。

さらに南下して、横須賀の三笠公園にて東郷元帥に拝謁。この三笠記念艦はかなり面白いのだが、さすがに立ち寄っている暇はない。半日で200km走るのだから、午前中にはフェリー乗り場に着きたいのだ。

横須賀からは134号に乗り換えて、久里浜港に向かった。久里浜は昔よく船釣りに来ていたが、フェリー乗り場はいつも通っていた道のそばにしれっとあった。乗るのは今回が初めてだ。ここまで75kmくらい走っただろうか。脚はまだ全然元気だ。

ロードバイクを持ち込んで乗船する際には専用のチケットを買って車やオートバイと同様に乗ったまま乗船するらしいのだが、折り畳み自転車は普通に手荷物として持って乗船できる。特に料金もかからないし、輪行袋に入れる必要すらない。片道900円で済むので結構気軽に使えるな。

12時15分の出航であった。自転車も人のロマンが詰まった乗り物だが、それ以上に船と飛行機はロマンがある。専門の技師が寄ってたかって整備して、これまた運行の専門家が滞りなく動かすのだ。そして、船の上から見る景色は新鮮だ。空気が澄んでいると対岸の千葉はとても近く見えるが、12kmくらいらしい。途中でカモメやらトンビやらがすぐ隣を一緒に飛んでくれるのが幻想的だった。

あっという間に、金谷港についた。所要時間は40分くらいかな。小さいながらも街であった久里浜とは対照的に、いい感じにひなびているのが千葉っぽくて良い。

ここまで来たら、もう走り切るしかない。東京を起点にした場合、帰りの方が距離が長く、125kmくらいだ。時間もないので、さっそく137号を走って北上を開始した。木更津までは、まじで田舎で、車通りも少なくて、海沿いを走れて、気分がいい。途中ですごい立地の住宅を見かけたが、ここに家を建てようと思った人の勇気に感服する。



木更津から先は、交通量がだいぶ増えてきて、もうど田舎って感じじゃない。長いオーバーパスを通り抜けるのが結構楽しいが、車がビュンビュン脇を抜けるので怖い。

途中、袖ヶ浦海浜公園の手前にある、通称「千葉のカリフォルニア」に寄ってみた。単にヤシっぽい街路樹が並んでいる道なのだが、SNS映えしたいオートバイ乗りに人気らしい。カリフォルニアって日本より広いのに、イメージがステレオタイプ過ぎる。ただ、東京湾横断道路も一望できて、ここでまったり休憩するのは気持ちがよかった。

袖ヶ浦から千葉を越えて船橋あたりまでは、16号をずっと走ることになる。横浜から横須賀に向かうのも16号であるから、16号ってば大環状線(閉じてないけど)なのだ。京葉工業地帯の中核を占める工場群を横目に見ながらひたすらまっすぐ進む。風景はあまり面白くないのだが、道がやたら良いのが特徴的だ。真っ直ぐだし、舗装の凹凸が少なくて円滑だ。よって、20km/h超えの速度でずーっと走っていられる。

千葉を過ぎたところで日没になってしまった。冬は日が短い。スタンプラリー的に千葉の名所を訪れようと思っていたが、あんまり詳しくないのと、日没に追われて焦ったのもあり、単に走り抜けてしまった。なので、申し訳程度に、途中にあった俺ガイルでお馴染みの稲毛陸橋に登ってみた。

幕張を過ぎたら、湾岸道路やらのやたら工業化された道を暗い中で走ることになる。この辺りの道で嫌なのは、左分岐が自転車のことを全く考えていない設計になっていることだ。直進しようとすると左分岐を横切ることになるので、その前に右レーンに入ることになるのだが、それって道の真ん中を走ることになるわけで、車がビュンビュン走るなかでそれをやるのはマジで怖い。自転車も軽車両なので必要とあらば右レーンだって走らねばならないが、車との速度差があまりにも大きいので慎重と勇気を要する。特に夜だと神経削られまくりだ。怖いので写真を撮る隙もない。

江戸川と荒川を渡って浦安を過ぎたら、やっと東京に戻ったことになる。懐かしい感じすらある。この辺でもオーバーパスを多く渡ることになるのだが、その登りで、足が売り切れつつあることに気づいた。ワンイチは基本的に平坦基調なのでずっと52T/11Tの重いギアだけを使って走っていたのだが、それが終盤で仇になった形だ。とはいえ、あとちょっとなので、適宜ダンシングをして乗り切った。

特に必要もなかったのだが、スタンプラリー的な意味で、日本橋に寄ってみた。規範的なコース設定だとここを起点とするのがわかりやすい。

都内はもう消化試合的な感じで、だらだら流して走って帰った。湾岸道路の殺伐とした風景から、銀座や六本木の光の洪水に入ると、都市の温かみを感じる。歩行者がいるというだけで心強い。渋谷も通ったが、やはり懐かさを感じる。東京出身てわけでもないのだが、故郷のような気すらしてくる。旅は故郷の良さを教えてくれるというし。

家に着いたのは20時半くらいだった。つまり12時間で199kmを走ったことになる。ブロンプトンで1日で走った距離としては私の最長記録となった。200kmブルベの制限時間が13時間半らしいので、それなら行けそうだということは分かった。と同時に、あと100kmを同じペースで走らにゃならない300kmブルベは今の私と車体の能力では困難だろうとも思った。脚が売り切れた状態で100km走るのは地獄だろう。そうならないためには、軽い登りでも中程度に軽いギアを積極的に出して脚を温存する必要がある。フロントダブル化が中途半端なのを是正してまともなシフターをつけるのが良さそうだ。もっと言えば、ドロップハンドルやビンディングペダルを導入する方が効果的だろう。そこまでやるとブロンプトンのお気軽なコンセプトからは離れてしまうけれど。

ロングライドするならもっと重いギアがあると望ましいと思っていたが、今の設定で丁度良かった。道の状態が良くて高速巡航状態になると52T/11Tでケイデンス70くらいで走っていたので、52/11 * 1.340 * 70 * 60 / 1000 = 26.6km/hくらい出ていたと思う。空気抵抗を抑えて脚を温存したいなら25km/h以上は出すべきじゃないので、ケイデンス70でも速すぎるということになる。もっと重いギアにするともっと速くなるが、もっと疲れてしまうので、ロングライドに最適ではない。もちろん下り坂ではもっと踏んでもいいのだが、下り坂はむしろ脚と尻を休める時間にした方がいい。純正の54T/12Tでも同じような変速比なのでロングライドに丁度良いと思う。

まとめ。ブロンプトンでも東京湾一周は普通にできる。フェリーの旅も快適だ。200kmくらいの旅になるが、それくらいが1日で楽しく走れる限界だろう。東京湾一周は距離は長いが、上り下りがあんまりないので、脚への負担は比較的小さいと考えられる。ブルベ的な距離感のロングライドに入門するには丁度良いコースだと思う。