豪鬼メモ

一瞬千撃

開発作業と椅子と尻

頭脳労働者諸氏が家に籠もって仕事をするようになって早数ヶ月、その末席に連なる私も、自室の椅子に座って一日中作業をするのが日常になった。環境の変化によって多かれ少なかれ体調を崩す人もいることだろう。腰痛とか肩こりとか頭痛とか鬱とか。私の場合、痔になった。その原因と対策に関するメモ。


経緯。個人的には、仕事はオフィスでやる方が好きだ。家族や訪問者などによる中断も入らないし、同僚と気軽に相談や雑談ができるし、画面もキーボードもオフィスの方が使いやすいし、ネットも早いし、飲み物も飲めるし、場所を切り替えることでメリハリがつくし、自転車通勤による適度な運動も望ましい。なので、コロナ禍がまだ序盤の頃に出社の是非を自分で選択できた局面では、全て出社を選択していた。しかし、コロナ禍が本格化したあたりでオフィスが完全閉鎖になり、全従業員はテレワークの体勢に移行した。私も自宅で作業せざるを得なくなり、ノートPC上の端末からリモートログインして作業することとなった。

リモートログインして作業するスタイルには以前から慣れているので、それは全く問題ない。キーボードにも画面にも実はそれほど拘りはない。問題は、椅子である。私はアーロンチェアという高級椅子を使っている。それは座っていてかなり楽で、長時間作業していても疲れない。座面も背もたれも、体重をかけると良い感じに湾曲して、面で支えてくれる。湾曲してくれる分、支える面積が広くなり、どこかに負担が集中することがないのだ。高いだけあって素晴らしい椅子だと思う。

問題はここからだ。座っていて楽な分、長時間ずっと座りっぱなしで作業をしてしまう。腰も肩も首もほとんど疲れない。しかし、数ヶ月経ったある日、ふと気づいた。作業をしていると、肛門にピリッと痛みが走る瞬間がたまにあったのだ。そして、その頻度は日が経つにつれて増えていき、座って作業している間はずっと痛くなり、さらに、座っていない時にもずっとずきずきとした痛みを感じるようになった。しまいには痛くて眠りにくい事態にまで悪化した。原因をいろいろ探ったのだが、いまのところ、アーロンチェアで長時間の作業をしていることが原因であろうと考えている。

根拠がある。まず、実際の感覚として、アーロンチェアに座ると肛門が下に押し出されるような力を感じるのだ。座面が半球の底のように湾曲し、そこに左右に割れた尻を載せている状況を想像されたい。以下の図のようになる。
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座面が凹面であることにより、左右の尻の肉には外側斜め上方向に引き上げられる力が働く。一方で、下に支えのない中央部には、そこには肛門やその他重要器官が位置するのだが、下に押される力が働き続ける。尻の筋肉が左右に広げられた結果、括約筋やその周辺の筋肉による支持も弱まってしまう。結果として、肛門には常に外に押し出す方向に力が加わることになるのだ。これが数時間なら問題ないだろう。しかし、数ヶ月続くとどうだろう。肩や腰が疲れない分、1日10時間とか普通に座り続けてしまい、その負荷が蓄積するだろう。肩や腰は優遇されているのに、肛門だけは虐げられ続ける。それがアーロンチェア。Anal health matters.

もう一つ原因と考えられるのが、Tシャツとトランクスだけを身につけて作業していることだ。自宅だし、暑いので、つい脱いでしまう。ジーパン等の強い生地で尻が覆われていれば左右に割れる力を緩和してくれるはずだが、トランクスではその能力はない。その結果、アーロンチェアの凹面尻割り効果をもろに受けてしまうのだ。


それに気づいてから、椅子を変えた。中華料理屋で使われているような、円形で平坦な座面に足が三本生えた安い丸椅子に。背もたれもなく、30分で疲れる椅子だ。長時間座っていると、肩も腰も痛くなる。座面が硬いので、太腿も尻も痛くなる。さらに、ちゃんとズボンを履いて作業をするようにした。敢えてジーパンだ。暑いが、大切な肛門を守るためなので仕方がない。

数日やってみると、予想通り、肛門の痛みが嘘のように消えた。この丸椅子の上で長時間作業するのは正直言って辛いのだが、そもそも長時間作業をしすぎだったのもよくない。それらを改めたら痔が直った。おそらくアーロンチェア以外の柔らかめの椅子でも同じ問題に悩む人はいそうだ。もし思い当たったら、椅子や座り方を変えてみるといいかもしれない。

ここ数年、立って作業をする同僚をよく見かけるようになったが、それには一理あると思い始めた。長時間楽に作業ができる環境を整えるのではなく、短期集中で終わらせる決意と行動力を養うという選択肢もあるということだ。てことで、さすがに丸椅子は辛いので、立って作業するための机を買おうかなと考え始めている。あるいは他の椅子やバランスボール等の導入を検討してみてもいいだろう。