豪鬼メモ

一瞬千撃

スクエアテーパーのクランクアームのボルトが緩む問題の対策

古めの規格の部品を使っているブロンプトンなどの自転車は、BBのスクエアテーパーにクランクアームを差し込んで、ボルトで締め付けて固定する方式を採っている。長年使っていると、このボルトがすぐに緩むようになってくることがある。この問題に簡単かつ効果的な解決を見出した。スクエアテーパーにアルミホイルを巻くのだ。


スクエアテーパーとクランクアームを圧着すべく締め付けるためのボルトをコッタレスボルトというらしいが、こいつが緩んでくることがある。締め付けても50kmも乗ればまた緩んできてしまう。緩みを放置しているとクランクアームが外れてしまって走行不能になる。出先でこれが発生すると結構つらい。原因としては、以下の4点が考えられる。

  • ボルトのねじ山が馬鹿になっている
  • スクエアテーパーのねじ溝が馬鹿になっている
  • スクエアテーパーが摩耗して細くなっている
  • クランクアームの溝が摩耗して穴が太くなっている

私はこの問題が最初に発生した時に、ボルトが緩まないように締め付けを非常に強くしたが、それがむしろ良くなかった。それによって、ボルトのねじ山がさらに馬鹿になったし、おそらくテーパー側のねじ溝も破損した。その後、緩むペースがさらに早くなって、10kmも乗るとガバガバになってクランクが外れかけるようになった。その状態で乗るとテーパーとクランクアームが擦れて両者の摩耗が加速する。つまりボルトが緩む原因の全てを増幅させてしまっていた。

問題を解決すべく、BBブラケットとコッタレスボルトを新しいものに変えた。以前と同じものの新品を買っただけだ。ブロンプトンの場合、BBはシェル幅が68mmでテーパー長は118mmか119mmのものを選ぶべきだ。ボルトはM8*15mmのものを選ぶべきだ。

新しいものを装着したが、問題は解決しなかった。相変わらず10kmも乗ればボルトがガバガバになってしまった。したがって、残る原因は、クランクアームの溝が摩耗しているということだ。しかし、クランクアームは高い部品なのでおいそれとは買い替えたくない。私はスギノのショートクランクRD2を使っていて、これがかなり気に入っているのだ。というかスギノのクランクアームって4.5万とかするの何でなの。
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ねじ山とねじ溝が正常であることを前提とした場合に、それでもなぜボルトが緩むのかを考察する。それは、スクエアテーパーが摩耗するか、クランクアームが摩耗するかで、両者の間に隙間ができるからだ。私の場合、最初に締め込み過ぎた時にクランクアームの穴が圧力でほんの少し変形したのだと思う。隙間があると、スクエアテーパーとクランクアームの接合部が奥か手前の一点(実際は三次元なので線)になってしまう。

そうなると、ペダルを踏み込んで力をかける度に、スクエアテーパーがクランクアーム穴の中で微小なスリコギ運動をすることになる。結果として、ボルトに対してクランクアームの回転方向とは逆方向の回転トルクがかかる。コッタレスボルトは左右とも正ネジなので、スリコギ運動によって右クランクはボルトを締める方向にトルクがかかるが、左クランクはボルトを緩める方向にトルクがかかる。よって、左クランクのボルトをいかに強く締め込んだとしても緩んできてしまう。右クランクのボルトが一定より緩まないのを不思議に思っていたが、この説明で納得できた。ペダルのボルトみたいに左だけ逆ネジにすれば良いのにとも思うが、今さら各種の規格を変えるのはコストが高すぎるので、将来的にもこの構造は変わらなそうだ。というか、スリコギ運動は各所の摩耗や変形を早めてしまうので、たとえボルトが緩まないとしても許容できない。

そこでさらに考えた。クランクアームの穴が太くなってしまっているのなら、それに合わせてスクエアテーパーを太くすれば良いのではないか。テープのようなものを巻けば簡単にできそうだ。なので、試しに工作用のマスキングテープをスクエアテーパーに一周巻いてからクランクアームを装着してみた。これは効果的で、10km走ると緩んできたのが、50kmは持つようになった。しかし、それでも50kmくらいで緩んでくる。またボルトを締め付けてから走り出しても、ペダルを踏み込んだ際に「ククッ」とクランクアームが軋む感覚があり、スリコギ運動が完全に収まっていないことが推察できる。

スクエアテーパーに巻き付ける物質は、もっと硬くて、弾力がないものであるべきだ。強い圧力をかけると変形してスクエアテーパーとクランクアームの隙間を埋める形状になるが、その状態で形状が固定して動かなくなるもの。クランクアームがアルミ合金なので、それに近い硬度であるもの。さらに、薄くて自在に曲げられて、スクエアテーパーの形状に沿って巻きつけられるもの。それは、アルミホイルに他ならない。

ということで、台所にあるアルミホイルを出してきて、工作をはじめた。といっても手順は至極簡単だ。まず、スクエアテーパーとクランクアームの接合部の幅(2cmくらい)の高さで折り返して四重に重ねたアルミホイルの帯を作る。

それを適当な長さに切って、スクエアテーパーに2周巻き付ける。帯の厚さや巻きつけ回数は摩耗状況に応じて適宜調整すべし。

アルミの帯が緩まないように片手でキツキツに巻き込み方向に力をかけつつ、クランクアームを装着する。その際にアルミが削れないようにそーっと奥まで入れるのがコツだ。その後、ボルトを普通に締め込む。規定トルクは35Nから50Nまでらしいが、私はトルクレンチを持っていないので、締め込み過ぎない程度に適当に締めた。左クランクだけやれば十分だと思ったが、左右差があるのも気持ち悪いので、右もやっておいた。余って飛び出したホイルはカッターで切って取り除けばOK。

アルミホイルの暑さが12μmだとすると、それを四重にして2周させたものが両端に来るので、12*4*2*2=192μmだけスクエアテーパーが太くなっていることになる。たった0.2mm、髪の毛二本分の違いしかないが、これが重要なのだ。規定トルクで締め込むことでホイルの層はいい感じに変形するはずだ。おそらく元々スクエアテーパーとクランクアームが接触していた部分の層は削れるか薄くなり、そうでない部分は厚さを保つので、隙間をうまいこと埋めてくれる効果があると期待できる。

これで実際に走ってみたところ、ボルトが全く緩まなくなったし、ペダルを踏み込んだ際の軋みも全く無くなった。既に300kmほど走ったが、全く緩む様子がない。軋みがなくなると、ペダルの踏み応えが硬質になって、乗り味もよくなる。ここ数週間の悩みが解決できて、めっちゃ嬉しい。嬉しくて無駄に長距離サイクリングがしたくなるくらいに。

余談なのだが、私のロードバイクにも付いているホローテック2のBBって別に抵抗が軽いわけでではない。むしろ、古い規格であるテーパーシャフト式のBBの方が抵抗は少ないと思う。チェーンを外してクランクを空回しした際に、ホローテック2のBBだとすぐ止まってしまうが、ちゃんとグリスアップしたテーパーシャフト式のBBだと30秒ほど回り続ける。では、抵抗が大きいにもかかわらず、なぜロードバイクのBBは新しい規格を採用したのか。それは剛性を高めたいからに他ならない。空回しした時の微々たる抵抗なんてどうでもよくて、ペダルから受け取った大きな力をいかに失わずにチェーンに伝えるかを重視しているということだ。そう考えると、スリコギ運動なんてさせている場合じゃない。
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まとめ。スクエアテーパーのコッタレスボルトが緩んでくる問題の原因として、スクエアテーパーとクランクアームのどちらかが摩耗して両者の間に隙間が出来ることによって発生するスリコギ運動が挙げられる。その場合、スクエアテーパーにアルミホイルの帯を巻いてからクランクアームを装着すると解決できる。隙間が埋められて、スリコギ運動が収まるからだ。