豪鬼メモ

一瞬千撃

AIノイズリダクションの実力

オリンパスの現像ソフトOM WorkspaceにAIノイズリダクション機能が追加されていたので、その能力を試してみた。LightroomのノイズリダクションとOMのノイズリダクションとの比較もしてみた。ノイズリダクションが必要な典型例として、E-M5M3のISO6400で撮った夜景の作例を扱う。ベースラインとなるのは以下に挙げるLightroomのデフォルト現像だ。ノイズリダクションはオフである。


続いて、Lightroomのノイズリダクション20、40、60の例。私は基本的に40までを使うことにしている。ノイズを完全に潰す必要はなく、ディテールが残っている方が好みだ。むしろ、ノイズが多少残っているくらいの方が暗いシーンだったことが伝わって良いと思う。等倍でアップロードしているので、別タブで開けば等倍の画質を確認できる。




基本的に私はLightroomしか使わないのだが、たまにはOM Workspaceも使ってみる。これがデフォルト現像の例だ。カメラ現像のデフォルトとほぼ同じ絵のはずだ。

続いて、OM WorkspaceのノイズリダクションLow、Standard、Highの例。これもカメラ現像の対応する設定と同じ絵のはずだ。私はカメラ内現像ではLowを使うことが多い。こちらもディテールとノイズ消しが良いバランスになっている。




そして、今回の本命である、AIノイズリダクションである。ディテール重視とノイズ消し重視があるので、その両方をレベルStandardでかけてみた。Lowだと効果があまりなくてHighだとやりすぎなので、基本的にはStandardを使うべきだ。



ディテール重視とノイズ消し重視を比較すると、ディテール重視の方が私の好みだ。で、そのディテール重視は、OMのNR Highばりにノイズが消せていながら、OMのNR Standardばりにディテールが残っているので、ノイズが強いシーンではNR Standardの代わりにAI Standardを使うとより幸せになれると言えそうだ。しかしながら、タンクの縦線が潰れているのがわかる通り、AIを使ってもディテールが潰れすぎてしまう嫌いがある。AIの名を冠しているのだから、潰れたディテールを再描画して復元してくれることを期待したが、そこまでの能力はないらしい。詳しいアルゴリズムはわからないが、単にピクセル平均化とアンシャープマスクの適用する場所や強度を選択的にしているって感じの挙動に見える。悪くはないが、期待ほどではない。

比較しやすいように、すべての例で同じ場所をトリミングした例を並べてみた。暗いところと明るいところをそれぞれ比較しよう。どれが望ましいかはケースバイケースということになるが、やはりLR40とOM Lowがバランス良いんじゃないかなと思う。画像を別タブで表示して等倍で見てみてほしい。



OMとLRの癖を全体的な傾向として比べた場合、OMの方が暗部がぼんやりと明るくなる傾向にある。暗い場所ではノイズ込みで平均化すると明るくなるという素直な実装だとも言える。一方で、LRは暗くなる傾向にある。暗い場所のノイズは明るいというのを逆手に取っているアルゴリズムであると感じる。私は暗部が締まったメリハリのある画像が好きなので、どちらかと言えばLRの挙動を好む。ディテールの残し具合もLRの方が上であるように感じる。

で、詳細に見てきた後に何だが、ここで真打登場だ。LightroomのAI denoiseを使ってみよう。等倍で見ていただければわかるが、別格に処理がうまい。サイドバイサイドで比較するまでもなく、これが一番だ。

暗部のノイズを完全に消し去っておきつつ、高周波の部分(タンクの縦筋)も塗りつぶさずに模様を残している。高周波の部分を等倍で見ると、「書き換えました」感があるが、元画像を知らなければ違和感がない程度にはなっている。AIに期待するのはこういうことだ。M43のISO6400の画像がこんなに綺麗になるなら、夜景もバンバン撮れるじゃないか。

LightroomのAI denoiseはISO6400の作例ようにザラザラな場合でも効果覿面だが、ISO800の作例のように薄らノイズが乗っているだけの場合でも、とても綺麗な絵が出てくる。左が補正前、右が補正後だ。



シャドー部分に着目すると、画質の違いがよくわかる。ちゃんとガラスの表面がツルツルに描写されている。おそらく薄汚れたガラスもツルツルにしてしまう副作用があるのだろうけども。



なお、ノイズが減ると。JPEG画像のサイズも激減する。細かい模様が多い高周波の画像より大雑把な模様の低周波な画像の方が圧縮しやすいが、ノイズは典型的な高周波成分なので、それが無くなるとJPEGの圧縮アルゴリズムがとても効率的に働くようになる。上述の例だと、補正前のファイルサイズは7.9MBで、補正後のファイルサイズは5.1MBだ。よって、ノイズが目立たない画像だとしても、とりあえずAI denoiseをかけておくというのは実用的に価値がある選択になる。

AI denoiseも凄いのだが、同じくPhoto-Enhanceメニューから選べるSuper Resolutionも凄い。たとえば、以下の通常現像例を処理するものとする。

元画像の中央の投げ釣りおじさんの部分を等倍で拡大すると、以下のようになる。

Super Resolutionをかけると縦と横に2倍ずつ引き伸ばされて、解像度が4倍になる。画像全体はでかすぎてアップロードできない。で、上掲と同じ部分を等倍で見ても、引き伸ばしたかどうかわからないくらい解像している。カメラの機能で超解像デジタルズームとかがあるけども、そういうのとは一線を画す圧倒的な画質だ。A1とかの大判に印刷するためにハイレゾ撮影しなくても、このSuper Resolutionで十分なことも多いんじゃないかな。

まとめ。OM WorkspaceのAIノイズリダクションの実力を試してみた。NR Highくらいノイズを消して、NR Standardくらいディテールが残っているので、強めのノイズリダクションをかけたい時は便利だと思う。ただ、劇的に画質が上がった感じもしないので、AIノイズリダクションを目的にしてOM Workspaceに乗り換えるほどではないかな。それに比べると、LightroomのAI denoiseは圧倒的にすごい。ISO6400の作例がISO800の作例よりも綺麗になるし、ISO800の作例はISO 200の作例よりも綺麗になるんじゃないかな。課金しても良いならこちらを選ぶべきだろう。