豪鬼メモ

一瞬千撃

VTR250で箱根ツーリング

バイクで走ると手が凍える季節が始まりつつあるが、快適期間の最後を味わうべく、今週はVTR250を借りて箱根方面をツーリングしてきた。トラス風フレームがVツインエンジンを包んでいるのがめっちゃ格好いいバイクだ。


125ccのモンキーとグロムを乗って、さらに先週のレブル250で250cc単気筒クルーザーバイクの乗り味がわかったところで、今度は典型的な250cc二気筒ネイキッドバイクのVTR250に乗ってみることにした。

VTR250は最も乗りたかったバイクだ。V型2気筒エンジン、通称Vツインエンジンを搭載しており、バンク角90度であることでピストンやバランサシャフトの運動に起因する一時振動と二次振動と偶力振動の全てを抑制できるという。振動が少なければ、乗り心地もよいし、各種部品の振動に起因する消耗も抑えられる。加えて水冷なのも、耐久性と静粛性に有利だ。以下の連続ツイートになぜVツインが優れているか図解されている。これを見たらそりゃVツインに乗りたくもなるというものだ。

さらに、シート高も755mmと低く、身長164cmの私にはちょうど良い。足つきすなわち停止時の安定性も乗りやすさの一部だ。シート高が高い方が走行時のバランスは取りやすいので、レブルの690mmほどに低いよりは、ある程度の高さはあった方がよい。停止時に右足でフットブレーキを踏んだ状態で左足の踵がべったりつくのが快適さの必要条件で、それを満たしつつ、低すぎないものを探る感じだ。となると、身長164cmの私にとっては、730mmから780mmまでくらいのシート高が狙い目となり、VTR250はドンピシャだ。シート幅などの、脚を垂直に下ろすのを妨げる要素も検討する必要があるが、その点でもVTR250は問題ない。Vツインエンジンは二つのシリンダが縦に並ぶので、横幅が細くなって足つきを邪魔しないのも利点だ。シート高740mmとさらに低めたVTR250 Type LDなるモデルもあるらしい。

乗りやすさと耐久性に定評のあるVTR250は中型二輪のカブとも呼ばれて、バイク便ライダーなどのビジネスユースでも支持されているそうな。一方で、初心者用のバイクだとか、面白味にかけるとか言わたりもするらしい。頑丈で乗りやすいのならそれに越したことないので、それで悪口言われるのはかわいそうだ。乗りやすいのに面白味を引き出せないとしたらそれは乗り手のせいじゃないか。それに、毎年何万キロも乗るバイク便ライダーというプロに選ばれているものこそ、玄人の乗り物だとも言える。外装も落ち着いていて、レトロ感にも未来感にも振っていないのに好感が持てる。タンクがキングコブラの頭みたいに横に太いので、ニーグリップしやすいし、馬の背に乗っているような頼もしさがある。タンデムシートの横には荷物用のフックがあり、またその近くにヘルメットホルダがあるあたり、日常の使い勝手を重視しているのが伺える。

残念ながら、VTR250の生産は終了されていて、今は新車は販売されていない。それもあるのか、HondaGoのレンタルでも扱っていなかったので、今回は819レンタルを利用した。それでも、VTR250を置いている店は少なく、わざわざ藤沢店まで足を運ぶこととなった。まあ箱根方向で走るなら都内の渋滞を回避できて好都合だ。現地に行ってみると、藤沢店と言いながら教習所だった。なるほど教習所がバイクレンタル業をやるのは合理的だ。

藤沢から南下して西湘バイパスに入る。南に見える海を楽しみつつ、高速走行のレビューができるという算段だ。まあ高速道路ではないのだけれど。まずVTR250に乗って気づくのは、ギアが5段しかないことだ。5段目の4000回転でメータ読みで60km/h巡行になるのだが、それ以上の速度を出そうとするともう回転数を上げるしかない。7000回転くらい回すとメータ読みで105km/hくらいの巡行速度になるので、VTR250で高速道路を走っても問題ない。ネイキッドなので風をもろにうけるのは仕方ないところではあるが、80km/hで巡行するくらいなら問題ない。ただ、なぜ5段編成にしたのかは不思議に思う。私は4000回転くらいの音がするとギアを上げたくなってしまうので、幻の6段に入れようとすることがしょっちゅうあった。エンジンの性能としては7000回転でも8000回転でもいけるということなんだろうけど、私は回転数を上げずに穏やかに高速を走りたいので、そこは惜しいと思った。でも、30年の歴史の中で敢えて5段に落ち着いたのだから、それなりの哲学があるのだろう。普段は60km/hで余裕のある走りをして、飛ばしたい時は回転数上げて音や振動も含めて楽しめよということかな。どうしても低回転で走りたいなら、スプロケをロング方向に換装する手もあろうか。あと、クラッチレバーがやたら内側についてあって、どちらかと言えば外側にあるレブル250やグロム125のつもりで踏もうとするとスカることが何度もあった。ちゃんと股閉めて爪先を真っ直ぐ向けて乗れよとのメッセージが伝わってくる。

Vツインエンジンの振動の少なさは特筆すべきだ。低回転でも高回転でも体感の振動がそんなに変わらないのだ。ジッパーを高速に開けているような「ゔいーん」という音が低回転から高回転まで続いて、7000回転くらいまで回しても安心感がある。アイドリング時にも、単気筒と違って不快な振動が全くない。直角Vツインかわいいよ直角Vツイン。レブル250は加速時にちょっともっさりした印象だったが、VTR250はアクセルをひねると車重に合った加速をキビキビとしてくれて、早い軽いと思った。なかなか走りやすいマシンだと思う。ただ、低回転時のトルクは正直イマイチかなと思った。低回転で燃費走行しようとするとノッキングしやすいし、何度かエンストもした。いわゆる高回転向きのエンジンというやつなんだろうか。

小田原についてから、箱根ターンパイクに入った。ここは激しい上り坂での高速走行が楽しめる道だ。ここを最高速で走り抜けるにはVTR250は力不足だと思うが、ギアを適宜切り替えれば制限速度を超える速度は普通に出せる。そもそも峠を最高速で走り抜けたいとは普通の人は思わないわけで、VTR250の登坂走行性能は全く問題ないと言えるだろう。ターンパイクは景色の良い各所に駐車場が設けられているので、飛ばしたいであろう後続車に道を譲るついでに寄り道すると良い。


箱根についてから、芦ノ湖スカイラインに乗り換えた。この道は芦ノ湖相模湾が両脇に見下ろせる峰を縫う道で、西湘バイパスを超える気持ちよさだ。ターンパイクで高速走行には飽きてしまうのか、車もバイクもまったり走っている感じがして良い感じだ。むしろ、早く走りすぎてしまっては勿体無い。とか思いながら走っていたら、転けたらしいハヤブサを鬼の形相で押して歩いている人に遭遇してしまった。やっぱバイクは恐ろしい。下の写真のところは富士山がどーんと見える場所らしいのだが、あいにくこの日は雲で隠れてしまっていた。

芦ノ湖に戻って遊覧船を眺めたりして休憩してから、下道の県道732号で帰る。やたらグネグネした低速カーブが続き、行きに使った自動車専用道よりもむしろ楽しい。ここはVTR250の旋回性能を試す場だ。結論としては、VTR250は素直に曲がれてとても良い。もちろん車重の軽いグロム125よりは曲がりにくいのだが、その分、ちゃんとした操作を学ぶのにうってつけだ。曲がりたい方向に荷重することステアリングを切る余地が生まれるが、それだけでは曲がらない。ニーグリップで荷重を車体に伝えて内側に傾けることでセルフステアが起こる。VTR250は浅めのキャスター角(25.3度)に小さめのオフセットの設定なので、トレール量(96mm)がとりわけ小さいわけではないが、ハンドル操作が軽い。オフセットが小さめなことで、車体の傾きに対する反応が敏感になり、セルフステアでハンドルがググっと動くのをよく感じさせてくれる。そして、それを押し返して旋回性能を落としているのは他ならぬ自分だということに気づかされる。だからこそ、ニーグリップ荷重と同時に曲がる方向に顔と上半身を向けてセルフステアを邪魔しないようにしないといけない。カーブを曲がる操作に入る瞬間の荷重を上半身から始めるのではなく、尾骶骨をカーブ内側に倒し込む意識で始めるのかコツかなと思った。と同時に、逆ハンドルできっかけを作って車体を傾け始める。あとは体幹でそのまま倒し込めば自分の上半身とバイクも内側に自然に傾いてくれる。それらが全て決まると思った通りのコーナーラインで曲がれる。別に早く走らなくても、リーンウィズで綺麗に曲がれるとそれだけで嬉しくなる。

小田原に戻ってからまだ時間があったので、湘南台にも寄った。ここの展望台のパノラマ風景は本当に良い。前に来た時は自転車でヒーコラしながら登った(というか最後は根を上げて押して歩く屈辱すら味わった)丘陵だが、バイクだと楽ちんだ。バイクに乗ると、今度はまた自転車に乗りたくなるから不思議だ。ところで、前輪が細めだからか、サスが硬めだからか、VTR250は路面の凹凸を素直に乗り手に伝えてくる。ほんのちょっとした畝とか轍とかでも踏んだら感じるので、よく言えば機敏な感覚だし、悪く言えば不安にさせられる。路面の状況を把握するのは大事なことだろうから、慣れたらそれがむしろ安心につながるのかもしれない。

今回借りたVTR250は、古めの車種でもあり、スマホホルダがついていなかった。仕方ないのでナビを使わずに走ったわけだが、それがなかなか良かった。ナビの画面があると、そちらを見てしまって景色を十分に楽しめないことがあるからだ。ナビがない場合、標識や看板を頼りに走行することになるため、必然的に周囲の風景をよく観察することになる。景色を堪能したり、思いもよらぬ発見や寄り道をする余地が生まれる。ただ、道を間違える頻度が高まり、また到着時刻の自己予測が全く当てにならないという問題がある。実際、今回の旅では、欲を出して最後に江ノ島に寄ったのが仇になり、混雑に巻き込まれた上に道を2回も間違えて、返却時間に間に合わなかった。20分遅れて遅延料金1900円も取られた。ぐぬぬ。良し悪しだな。

VTR250のシートに関しては、乗っている間の操作しやすさという意味では問題ないが、正直あまり体に優しくないものだった。スポーツバイクにありがちな後方が上り坂になっている形状になっているわりに、上半身があまり前傾しない乗車姿勢なので、結果として尻が少しずつ前に押される形になる。長時間運転していると、チンチンが圧迫される感じになるし、尻が上下垂直方向に揺さぶられて、肛門に負荷がかかる。足腰の負荷は筋力や気合で耐えられるが、チンチンや肛門への責めはいかんともしがたい。実際のところ、家に帰ってから軽いイボ痔になっていたのに気づいた。痛い。乗り方に慣れていないだけかもしれないけれど、ちょっと凹んだ。一般人はレースほどの加速度で走るわけじゃないから、シートに傾斜を設けるのって無意味だと思う。

恒例の燃費チェック。今回は168km走って、6.45Lのガソリンを消費した。1006円だった。ガソリンがやたら高くなってるな。燃料消費率は26.04km/Lということになる。これは正直言って燃費が悪いと言いたい。VTR250の燃費は良い方だという話も聞いていたが、山間部を走るとそんなもんなのかな。水冷かつDOHCなら低燃費になりやすいとも聞くが、二気筒かつショートストロークなので仕方ないところなのかな。この点はちょっと残念だ。

総評としては、VTR250は乗っていて楽しいバイクだ。個人的にはグロム125で既に満足していたので、わざわざ車重を重くして燃費やその他の維持費を悪化させてまで加速や最高速を向上させると考えると、VTR250の比較優位性は小さい。高速道路や自動車専用道路に乗れるのは利点だが、別に乗らなくても幸せにはなれる。ただ、直角Vツインの快適さと旋回操作のしやすい筐体は、また乗りたいと思わせてくれるものだった。排ガス規制とやらでVTR250は廃番になってしまったが、同じコンセプトの車種が、燃費や環境性能を向上させてまた復活してほしい。足つきが良くて振動が少なくて旋回しやすくて燃費もそこそこ良い250ccネイキッドって売れると思うんだけど、どうだろう。むしろその150cc版を求む。別に早く走りたいわけじゃなくて、気持ちよく気軽に走りたいのだ。