豪鬼メモ

一瞬千撃

モンキー125で奥多摩湖ツーリング

唐突にバイクに乗りたくなったので、バイクレンタルでMonkey125を借りて、奥多摩湖に行ってきた。実用的な性能を備えつつ趣味性全開の意匠を凝らしためっちゃ格好いいバイクだ。


オジサンの典型的な趣味といえば、釣り、写真、将棋、麻雀、各種模型などが挙げられるが、やはりバイクが鉄板であろう。普通二輪免許保有者の男女比は7:3で、バイクの新車の購入者の平均年齢は54.7歳ということなので、もはやバイクはオジサンの趣味どころか、爺さんの趣味と言っても過言ではない。さて、私も立派なオジサンであり、何事もなければいずれ爺さんにもなる予定なので、ここらでまたバイクに乗っておこうじゃないかと。実に20年振りのリターンライダーである。とはいえ都内のアパートに住んでいる身分でいきなりバイクを買うのはコストとリスクが高いので、まずはレンタルで乗って感覚を思い出そう。

話は逸れるが、なぜ急にバイクに乗りたくなったかといえば、スーパーカブという小説を読んだからだ。バイク乗りの女子高生が主人公のジュブナイル小説と思いきや、対象読者は思いっきりバイクオジサン達だ。実際のところは重度のバイク野郎である作者のエッセイ集を物語仕立てにしたような内容で、主人公の心情描写がいつのまにかバイク関連の蘊蓄になっていることが多々ある。そして、バイクに日常的に乗っていると人は成長するという信念が滔々と語られる。スーパーカブに乗り続けた主人公は最終巻ではカリスマ性まで帯びてきて、これ以上成長したらゴルゴ13ばりのプロフェッショナルになっちゃうだろうと私が思ったところで物語は唐突に完結する。その後に彼女がどうなっていくかわからないところが、バイクが与えてくれる自由を表現しているように思える。そして、おそらくそこまで付いてきた読者はバイクに乗りたくなっているであろう。というか、バイクに興味のない読者はそこまで付いてこられないだろうし、そこを割り切って書いているのがとても良い。

そんなわけで、スーパーカブでも乗ってみるかと一瞬思ったが、カブにはないクラッチレバーで半クラからギアを繋ぐ感覚が恋しくなってきた。125ccの原付二種でもクラッチレバーのある車種ということで、グロム125あたりが良さげだ。YouTubeでレビューやカスタマイズやツーレポの動画を見ても、面白そうだ。ただ、家の近所にはグロムの貸し出しをしている店舗がなく、似たような車種であるモンキー125があったので、まずはそれに乗ってみることにした。Honda Dream系列店がやっているHondaGo BIKE RENTALだと、原付二種が8時間レンタルで5000円ポッキリなので、ちょっと良い焼肉とかディズニーランドとかスキー場に行くよりもだいぶ安い。対人対物無制限補償の任意保険も基本料金に込みだ。たまに乗るだけだったらバイク買うよりもレンタルし続けた方が、いろいろな車種も試せるし、お得かもしれない。コロナ対策でヘルメット等の貸し出しは休止しているので、自分でヘルメットを持っていく必要があるが、メットと免許さえあれば気軽にリターンライダーになれるのは素晴らしい。

やっと本題に入るが、目黒区は学芸大学の近くの店舗でモンキー125を借りて、奥多摩湖まで往復で走ってきた。休憩を挟みつつ8時間めいっぱい走って、175kmくらいか。ガソリン代は590円だった。10:30貸し出しで18:00返却なので実際には7時間半しか借りられないのだが、ちょっと早めに店に行くと早めに乗り出せたりするっぽい。原付二種では自動車専用道路を使えないこともあり、都心の渋滞を抜け出すのに無駄に時間を食うのが難点だ。でも、自転車だと八王子くらいが限界だったのが、バイクだと奥多摩湖まで行けるのは爽快だ。自転車のように風を直接に感じつつ、体のバランスで挙動を制御する遊びをしつつ、見知らぬ道や施設に気軽に寄り道でき、それでいて自転車よりも行動半径が2倍以上になるのが原付二種というやつだ。長さが2倍以上ってことは面積は4倍以上になるわけで、機動力が上がる利点は大きい。

私の地元に近い多摩湖(山口貯水池)は何度も訪れているが、奥多摩湖(小河内貯水池)は今回が初めてだ。東京都の最果てにあり、さらに先に進むと山梨県内にも侵入できてちょっと達成感がある。周遊道路のカーブの連続はちょっとしたワインディングロードの趣だが、怖いので安全運転に徹した。それでもリーンウィズとか考えながら体重移動して乗るのは結構楽しい。車体と自分を傾けて曲がるのが醍醐味なのだが、路面が湿っている状態でマンホールの蓋を踏むのだけはちょっと恐ろしい。奥多摩湖自体の散策は時間がなくてできなかった。途中で見かけた長い浮き橋だけ渡ってみたが、ふかふかして面白かった。

モンキー125の感想を一言で言うなら、「楽」だ。小さく軽い筐体のおかげで足つきや取り回しがよく、座布団みたいにフカフカのシートのおかげで長時間乗っても尻や腰が痛くなることもない。一般道の流れに乗って走るのに十分なパワーがありつつ、スピード違反で捕まるほどの速度は出せないので、安心安全に走れる。

今回借りた2020年モデルの4段変速ギアは乗りやすかったが、5段になった最新モデルも乗ってみたいと思った。ギアを変えるのって面倒に思う人も多いだろうが、ギアを変えつつ円滑な加減速を追求するのは楽しい。カーブの美しいラインを追求するのと同程度に楽しい。自転車と違って自分でペダルを漕がないバイクの運転においては、特に直線走行中はむしろ暇なので、流れに乗った状態で4速のまま走り続けるよりも、時に4速と5速を切り替える余地があった方が楽しい気がする。デフォルトではメーターにクラッチインジケータがないというのは少し残念かな。今回借りたやつは後付けのクラッチインジケータがつけられていて、それはめちゃ役立った。基本的には段数を数えながら乗るが、たまに忘れた時に調べる方法がないのはちょっとイラつくから。あと、クラッチといえば、停車時に何度もクラッチペダルを踏んで1速に入れたつもりがニュートラルになっていて発車時に空ぶかししてしまうことが何度もあった。停車中にギアを変えにくいのは構造上仕方ないにしても、ニュートラルに入っているくせにNランプが点灯していなかったのが気になる。個体差なのか、整備不良なのか、そういう仕様なのか。

単気筒なので振動が大きめというレビューも各所で見かけるが、ひどいという程ではなかった。3時間くらい連続で乗ると確かに少し手が痺れる感じがするが、言われてみればそうかなというくらいで、耐えられるかどうか心配するようなものではない。燃費は噂ほど良くなかった。スペック上では70km/Lらしいが、今回の走行では48km/Lだった。奥多摩の坂が悪いのか、都心の渋滞が悪いのか、私の体重が重すぎるのか、半クラで回す癖がよくないのか。とはいえ250ccクラスの車種よりも圧倒的に燃費は良さげなので、お財布にも楽な車種であることは間違いない。

下の写真の後ろに写っているYamaha MT-01のエンジンの排気量は1620ccらしいけれども、乗れるだけで凄いと思って、ライダーのオジサンを尊敬の眼差しで見てしまう。自分だったら街中の交差点で普通に曲がる自信もない。そのようなモンスターを自在に操ることは、気難しい馬を乗りこなすような達成感があるのだろう。それと比べるといかにモンキー125が小さいことか。ポニーみたいでかわいいくらいだ。自転車に乗れる身体能力があれば原付二種は誰でも乗れるくらい簡単なので、初心者やリターンライダーはここら辺を借りて練習するのがいいと思う。

モンキー125の見た目に関していえば、ずんぐりむっくりしているのが、ダサかっこいい感じで良い。昔の50ccモンキーの面影だけ残しつつも、乗りやすさを備えた普通のバイクって感じだ。アップマフラーなのでうっかり触ったら火傷しそうとも思ったが、別に熱くはならなかったし、そもそも二人乗りできないらしいのでうっかり触ることもそうそうないだろう。でも、アップマフラーだからライダーの耳の近くで排気音が鳴ってうるさいのかとも思ったが、普通に静かで気にならなかった。4速で巡航している時には、風やタイヤの走行音にかき消されてエンジン駆動や排気の音がほとんど聞こえないくらいだ。排気音が好きなライダーも多いらしいが、私は静かな方が好きだ。

ともかく、久しぶりにバイクに乗って楽しかった。また暇を見て乗りに行きたい。バイクは体力的には楽すぎるので、体が鈍ってしまうのが心配だ。自転車とオートバイは同程度の頻度にするのが理想かな。8時間レンタルだと、片道2時間半乗るような場所を目的地にすると現地での行動時間が少なくなってしまうので、片道2時間弱の範囲にするか、24時間レンタルにするかを考えるところだな。原付二種なら24時間にしても+1000円の6000円で済むのだが、自分のアパートにバイク置き場がないのがきつい。