豪鬼メモ

一瞬千撃

夜景でSTFモード

夜景で手持ちSTFモードを使うとどうなるか試してみた。夜景といっても展望台から遠くのビル群の明かりを撮ったりはしない。ボケの概念がなくては意味がない。そうでなく、普通に夜に街の景色を撮るとどうなるかということだ。結論としては、撮るのは苦労するが、良い絵が出る。前ボケや後ボケがジワッと滲んだ、味のある絵が。
f:id:fridaynight:20220321203421j:plain


夜の街と言えば銀座ということで行ってみたが、コロナ禍のせいだろうか、人が全然居ない。夜の街が打撃を受けているとは聞いていたが、ビル一本丸ごと看板が消えているのを見ると、予想以上の事態だなと。
f:id:fridaynight:20220321205035j:plain

夜や暗所などの光量が少ない場所で写真を撮ろうとすると、二つの課題が持ち上がる。シャッタースピードが遅くなることと、ISO感度が上がることだ。まず、シャッタースピードが遅くなる件に関してだが、動体を止めて撮るのを諦めて、むしろ積極的に動体ぶれをさせて撮れば、楽しく撮影ができる。以下の例はSTFとは関係なくて、F8固定のBCL0980レンズで撮ったものだ。シャッタースピードが0.5秒とか1秒とかになると車や人はブレブレになるが、それらが主要被写体じゃないなら、問題ない。
f:id:fridaynight:20220321181737j:plain
f:id:fridaynight:20220321183030j:plain

本記事の上から2枚目の例でも道路の真ん中にゴミ袋を持った人が歩いているが、ブレブレに写っている。夜にSTFモードをやることの利点の一つは、STFの合成による分身現象が、露光中の動体ぶれの巻き込まれてわからなくなることだ。昼のSTFの場合、シャッタースピードが早くて止まって写っている複数の陰影を合成することになる。複数枚で形状や場所が違うものを合成すると分身した感じになって気持ち悪くなる。しかし、夜の場合、合成前でも動体ブレで溶けているものを混ぜるので、大して変わらない。以下の例でもブレた人影が写っているが、ほとんど気にならないだろう。
f:id:fridaynight:20220321184532j:plain
f:id:fridaynight:20220321184101j:plain
f:id:fridaynight:20220321184901j:plain

夜撮りでは、ISO感度が上がってノイズが増えたりダイナミックレンジが狭まったりする課題もある。これに関しては、STFのための連写合成が良い方向に寄与する。連写合成するとノイズが減るため、結果的にS/N比が上がって、実質的なダイナミックレンジも上がる。露出補正で白飛びを防ぐように暗く補正して撮り、現像時に持ち上げると良い。持ち上げると増えるノイズは平均合成の効果で目立たなくなるし、AEブラケットのおかげで露出を上げたデータも混じるので、かなり「粘る」データになる。以下の例でも、いつものAEブラケットによるSTFモードの作法で、-1EVで撮った上に、+2EVくらい持ち上げて現像しているが、ノイズがほとんど感じられない。本当は暗所の部分は肉眼でもよく見えない状況だったが、路地奥の人影まで視認できる。伊達に7枚も合成してるわけじゃない。
f:id:fridaynight:20220321182512j:plain

明部と暗部の輝度さが大きい場合には、enfuseを使ったHDR合成の方が結果が良くなると思われる。明部の描画には暗く撮ったデータの重みを強くして、暗部の描画には明るく撮ったデータの重みを強くするからだ。とはいえ、以下の例がenfuseによる合成例なのだが、あんまり変わらないような気もする。理論的には良いはずなんだけども。
f:id:fridaynight:20220321182516j:plain

STFモードのボケが美しくなるという利点は夜でも生かされる。上に挙げた看板などの比較的遠景の写真でも微ボケが美しくなる効果は十分にあるし、以下の例のように近景を撮る場合でも背景ボケの美しさは生きてくる。E-M10だと7枚連写に1秒近くかかるので、人を主題にして撮るのは難しいが、最新のもっと連写性能の高い機種なら、飲んでいる人達ぐらいなら普通にSTFモードで扱えるだろう。LED等の点光源でバンディングが出る状況を探したのだが、見つけられなかった。背景のかなり遠くに点光源があり、手元のかなり近くにピント面がある状態を作らねばならないが、銀座や新橋には適当な題材が無かった。
f:id:fridaynight:20220321200342j:plain
f:id:fridaynight:20220321201852j:plain
f:id:fridaynight:20220321203454j:plain

おまけ1。ミスドで休憩。これもSTFモードの例だが、やっぱテーブルフォトには合う。これはF2.8を中心にした例だが、この例だとF4を中心にしてもよかったかも。
f:id:fridaynight:20220321190305j:plain

おまけ2。これはSTFモードの例ではないが、よく撮れたので載せる。25mmのF2.8のレンズで4m先くらいにピントを合わせているが、いい感じに背景と主要被写体が分離できている。M43のF2.8でも構図がきちんと作れればちゃんと立体感は出る。動体には適用できないが、この構図でもSTFで心地良い絵が撮れるということだ。主要被写体の周辺の背景だけは距離が空くように構図を作るのだ。主要被写体が4m先にあるこの構図でF2.8相当のボケで良いのならば、F1.8のレンズならF2.8を中心とした+-1EVのSTFモードで扱えることになる。もう1段くらい絞りを開けた方が良い結果は得られそうな気はするが、その場合でもM43でF1.4のレンズがあれば良いことになる。
f:id:fridaynight:20220321180540j:plain

おまけ3。虎ノ門ヒルズを見かけたので行ってみた。なんか小洒落ていて、私ごときが徘徊していると気後れしてしまう感じ。ドラッケンに出てくる巨人みたいなのがフィーチャーされているのは好感が持てた。同じコンセプトのオブジェがミッドタウンにもあった気がするが、関係あるのだろうか。
f:id:fridaynight:20220321172915j:plain
f:id:fridaynight:20220321172158j:plain

これはSTFモードで撮った例だが、さすがにここまで離れると、ボケ味という観点では全く意味がない。
f:id:fridaynight:20220321172643j:plain


まとめ。夜景というか夜の街撮りでもSTFモードは普通に使える。SSが遅くなって動体ブレが気になりにくくなるのと、合成でノイズが減るという二つの恩恵があるので、むしろ夜になるとSTFモードの利点は大きくなる。動体ブレは意図的だと言い張ればよいので、あと問題になるのは手ブレだ。これに関してはカメラの手ブレ補正と後処理のアラインメントにある程度期待しつつ、あとは根性。さあ君も、STFモードで僕と握手!