豪鬼メモ

一瞬千撃

中望遠修行

子供たちが大きくなってきたので、中望遠画角のレンズを使うことが増えてきた気がする。ところで、レンズの焦点距離と画角の関係を以前の記事でまとめたが、なんでその計算になるのかを今一度振り返ってみる。
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上の図において、黄色い箱がレンズで、水色の板がセンサーだ。レンズ内で光が収束する位置がそのレンズの焦点であり、そこに絞りが置かれる。センサーから焦点までの距離が焦点距離である。画角の対頂角は、焦点とセンサーの両端を結んだ三角形の焦点側の角なので、それを計算すればいい。で、焦点からセンサーに垂線を下ろすとその線の長さはもちろん焦点距離であり、垂線とセンサーの接点からセンサーの端まではセンサーの長さ(または幅)の半分であるから、それらの比のアークタンジェントで角度がわかるので、それを2倍すればいい。つまり、atan((censor_length / 2) / focal_length) * 2 が画角になる。あとは180/πでラジアンを度に直す。よって、水平17.3mmのM43センサーに焦点距離45mmのM.Zuiko 45mm F1.8をつけると、atan((17.3 / 2) / 45) * 2 / (180/3.14) で21.7度とわかる。ちゃんと中学出ておいてよかった。

センサーサイズが変わっても同じ画角を得るには、上図の三角形を相似にしないといけないので、センサーサイズの比率に応じて焦点距離も変えることになる。したがって、センサーサイズの対角長がフルサイズに比べて半分になるM43センサーにおいては、フルサイズと同じ対角画角を得るには焦点距離も半分にせねばならない。同じ画角と同じF値を前提とすると、絞り開口部の直径は焦点距離F値で割ったもので、錯乱円の直径は開口部の直径と焦点距離に比例するので、つまり錯乱円の直径は焦点距離の二乗に比例する。一方でセンサーが小さくなることによる画像の拡大率は焦点距離に比例する。したがって、撮像面に占める錯乱円の半径の割合は、焦点距離に比例することになる。ややこしいが、要は、同じ距離の被写体の撮像全体に占めるボケ量の比率は焦点距離に正比例してF値に反比例するだけなので、センサーサイズは考慮しなくていいということ。レンズの焦点距離F値だけでボケ量は決まり、その焦点距離の選択にセンサーサイズが影響する。つまり小さいセンサーだと同じ画角で焦点距離が短いレンズを使う分、それに比例してボケにくくなるというわけだ。


ということで、フルサイズ換算90mm画角だが焦点距離45mmであるところのM.Zuiko 45mm F1.8をM43カメラにつけて撮った画像は、焦点距離90mmでF1.8のレンズをフルサイズカメラにつけて撮った画像よりも、焦点距離が半分なので、ボケの直径が半分になる。でも、経験的にはボケが足りないって思うことはほとんどない。ボケたくないから絞ることはよくあるけど。まあフルサイズを使っていないからそう思うだけかもしれないけども。で、この例はカメラから60cmくらいのところの花を撮ったものだが、M.Zuiko 45mm F1.8の最短撮影距離である50cmに近い近接撮影といえようか。そうなると、F1.8では花弁の主要部分を深度内に収めるには浅すぎる。なのでこれは絞ってF2.8で撮っている。
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この例も同じように最短付近だったと思うけど、F4まで絞っている。そうしないと花糸と花弁の全体を深度内に収められないし、後ボケが花であって花に囲まれている情景であることがわからなくなってしまうから。
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この例は最短ギリギリだったと思うが、F5.0に絞っている。スタバのロゴとKindleのロゴを同時に収めたかった。この例ではそもそも背景がないので、Kindleや後ろの本まで全体を深度内に収めたかったのだが、暗くて手ブレする状態だったのでこれ以上絞れなかったのだ。仮にフルサイズで同じ被写界深度を得るにはもう二段絞る必要があるので、こういう暗いが絞りたいシーンでは小センサーの方が利がある。
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人物だとどうか、これも最短付近で、F2.8。背景がないので分離も何もないのだが、被写界深度は十分に浅い。
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これは、3mくらい離れた「快適距離」からF2.8で撮ったもの。子供に視線を集めるには背景をもうちょいぼかした方が効果的なので、これは開放F1.8にすればよかったと思っている。ただ、構図上、主役が明確なので、そんなにボケにこだわらなくても、日常のスナップ写真のキーパーとして十分に成立していると思う。背景に映った絵本の表紙とか子供の絵とかが後で懐かしいかもしれんので。
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近接撮影だと大きいボケが得やすい一方、ちょっと離れた被写体で大きなボケを得るのは難しい。被写体距離が離れるほど被写界深度が深くなるから。この例の鳥は3mくらい離れてて、F3.5で撮ったが、できればもっとF値を低くして背景をぼかして鳥だけを分離したかった。レンズはまだ余力があったのに、E-M10のシャッタースピードが足りなくて絞りをこれ以上開けられなかった。この事態は枚挙にいとまがない。
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この例は、100mくらい先の被写体で、F2.8だけど、背景が無限遠クラス(1000m以上)に遠いので、特に問題なく分離できている。二つの塔を深度内に収めるためにちょっと絞った。どうでもいいけど、これを見る度に、乳首つまんでひっぱられちゃったみたいで痛い気分になる。
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この例は、あざとい構図な割に失敗感がひどい。島にフォーカスを当てて手前はぼかすつもりだったのだが、やはりシャッタースピードが足りなくてF2.8までしか開けなかった。手前の旗にフォーカスするか、思いっきり絞ってパンフォーカスにした方がまだマシだったかな。
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この例は先ほどの失敗を踏まえてか手前にフォーカスしているのだが、やはり同じ理由でF4.5より開けなくて中途半端な写真に。しかも島が倉庫に隠れてるのもダメだな。桟橋の柵に登ってせいいっぱい高さを稼いだのだが、力及ばず。
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これもF2.8より開けなかった例。この距離感だと、ヨットと島を分離するにはM43のF1.4とかでも足りないかも。フルサイズのF1.4ならあるいは。お、やっとここでもっと大口径だと嬉しいことがあるかもという例を出せた。
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これはF4.0の例。これはパンフォーカスを意図してこの絞りにしているのだが、その割りには島が船にかぶっててイマイチ。これも柵に登ってせいいっぱい手を伸ばして背伸びして撮ったんだけどね。電柱に登るとかすれば所望の構図になっただろうけど、外国でそれをやる勇気はなかった。
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近所にあった三輪車。3mくらいでF2.8。視線を集めつつ、主要部分が深度内に入っていて、適切。基本的にF2.8で撮っときゃ問題ないことが多いので、絞り優先でユーザ設定に登録している。ていうかこの三輪車かっこいいな。これで小旅行とかしたらめっちゃ楽しそう。
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まとめると、テーブルフォトや花撮りやバストアップポートレートのような距離感だと、M43のF1.8でボケ量に困ることはあんまりない。より遠距離で撮る場合にはもっと絞りを開きたくなることがあるのは確かだ。ただし、カメラのシャッタースピードが2段分くらい足りなくなることがよくあるので、レンズだけ大口径でもだめ。NDフィルタ持ってくか、最高SSが1/8000秒で基準感度がISO100の機種にするか、1/16000秒以上の電子シャッターを使うか。まあ、構図がダメだと多少絞りを開けて背景と分離できたとしても大して良くならないので、カメラや大口径レンズを買う前に腕を磨いて、あと一脚とリモートテザリングで高さを稼ぐとかいろいろ工夫するのが先かも。