豪鬼メモ

一瞬千撃

オリンパスM.Zuiko 17mm F1.8レンズ購入

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換算34mm画角

OM-D E-M10を買ってからキットレンズのM.ZUIKO 14-42mm f3.5-5.6 EZのズームレンズを使ったが、いまいちパッとしない写真が多かったので、1週間ほどでM.Zuiko 25mm F1.8を追加購入した。35mmフルサイズ換算50mmの標準画角を持つということで、単焦点ではあるが多目的に使えるし、画質も満足するものであった。特に子供たちの顔や上半身をアップで撮るのにうってつけなレンズである。


しかし、換算50mmは自分の自然な視野よりちょっと狭く感じることが多く、もうすこし広く撮りたいということが多くあった。子供の全身を入れたい、テーブルの向こうに座る二人を同時に収めたい、店先の全体を入れたい、主要被写体だけでなく背景を説明的に入れたい、などなどである。被写体から離れて撮ればいいという話もあるが、状況がそれを許さないことも多い。子供から離れようとしてもすぐ引っ付いてくるし、食事中にいきなり立ち歩いて撮影するのも変だし、路地や歩道が狭くて引けないことも多い。

そう思うと、換算30mmから換算35mmくらいの画角が調度良い。iPhoneAndroid端末の多くのカメラがだいたいこの画角である。これにドンピシャなレンズとして、換算34mm画角のM.Zuiko 17mm F1.8を購入した。画角を正確に言うと、水平画角55.8度、垂直画角43.3度、対角画角70.0度くらいらしい。換算50mmだとそれぞれ39.5度、30.2度、48.4度ということなので、それに比べるとだいぶ広い。実際使ってみると、自分の自然な視野よりちょっと広い画角なので、日々の生活で撮りたいと思ったものはだいたい撮れる。主要被写体を大きく撮りたかったり、余計なものが映り込むのが嫌な場合は、寄れば良い。主要被写体が自分の子供や食事や商店である場合、寄れないという状況はほとんどない。

ということで、常用レンズの座はMZ25mmからMZ17mmにあっさりと交代した。MZ25mmのせいで換算50mm画角に慣らされていたので、MZ17mmを買った当初は画角が広すぎるように感じたが、慣れるとやっぱり使いやすい。とはいえ、広角レンズで寄って撮る(被写体が画面周辺部にかかる)とパースペクティブ歪みが強く出るとか、広角だと被写界深度が深くなるので背景をぼかして被写体を分離するのが難しいといった性質があるので、MZ25mmの出番もちゃんとある。MZ25mmをつけている時は一歩引く感じ、MZ17mmをつけている時は一歩寄る感じ、という標語を唱える日々である。一方で、キットレンズの出番はほぼなくなった。ズーム操作をしている暇があるなら一歩寄るか引くかした方が早いので。

オリンパスエバンジェリストRobin Wong曰く、換算35mm画角は中途半端で、ポートレートを撮ろうとすると歪むし、風景を撮ろうとすると狭く、ありふれた写真しか撮れないので好みではないとのこと。まあ、そうなんだろうけど、逆に言えば日常生活のありふれた写真を撮るには丁度いいんじゃないかな。俺にとっては換算28mmは広すぎてパースペクティブ歪みに違和感があるし換算50mmは狭すぎて被写体が切れることによる失敗が多いから、やっぱ換算35mm付近が好きだ。

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画質

MZ17mmの画質に関しては、各所のレビューを見ると賛否両論である。中央の最高解像度がMZ45mmやMZ25mmに比べると低く、周辺の倍率色収差が大きいというのが主な欠点らしい。一方で、周辺の解像度はMZ25mmよりも高く、ボケが滑らかであるとのこと。ボケの良し悪しはわからないが、周辺解像度の優位性についてはePhotozineのレビューにある解像度グラフを見れば確認できる。パナソニックのSummilux 15mm F1.7も検討したのだが、そのレビューを見る限りでは、MZ17mmよりもそちらがいいとは言いがたい。値段と画角やカメラ本体と同メーカーであることを考えるとMZ17mmの方がよさげだ。MZ25mmのレビューを見ると中央解像度はそちらの方がかなり高いことがわかるが、周辺までの安定性ではMZ17mmに分がある。でも他の計測サイトだとSummilux 15mm F1.7の方が高解像度だったりもするので、判断に困る。

個人的に気になったのは倍率色収差である。Robin Wongの作例を見ても、MZ17mmの倍率色収差が大きいらしいことはわかる。建物の窓枠に赤や青の縁取りが出ていて、まるで水槽の中を覗いているようだ。色収差が大きい写真を見ているとなんだか気持ち悪くなってくる。ただし、E-M1やE-M10から導入されたTruepic 7なる画像処理エンジンでは、やっと他社並に倍率色収差のデジタル補正を実装したそうで、この問題は解決されるかもしれないと考えた。それで見つけたのがこのレビューである。期待通りに、新エンジンでは倍率色収差はほとんど視認できない程度に補正されることがわかった。倍率色収差が解消されると周辺の解像感も上がるのでいいことずくめだ。もちろんRAW撮りして後で補正することもできるが、やはり基本JPEG撮りな俺としてはカメラ側で補正してくれるのは嬉しい。よって、購入に踏み切れた。

まだ買って1週間ほどで200枚くらいしか撮っていないが、実際に倍率色収差が気になる写真はほとんどない。等倍でよーく見るとちょっと残っているのもあるけれど、そのくらいよく探さないとわからないレベル。解像度に関しては、正直よくわからない。MZ25mmとMZ17mmの解像度の違いを知るには、開放絞りでものすごく厳密にピントを合わせることが要求されるが、面倒だしそんな腕もないので、両者合格点ってことでいいかなと。今のところ、MZ17mmの写りに全く不満はない。キットレンズで見られる周辺の流れがほとんど感じられないので、安心して使える印象である。

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スナップショットフォーカス

スナップショットフォーカスとは、鏡筒のリングを手前に引くと距離指標が現れて、それを見ながらマニュアルフォーカスができる機構である。買う前はそんなの使わないよと思っていたが、これがなかなか使える。

E-M10では、遠くの風景を撮りたい時にオートフォーカスだとなかなか無限遠に合わせづらく、合焦マークが出ても実際にはやや手前にピントが来ていて微妙にピンぼけ写真になることが多い。コントラストAFは正確だって聞くけど、少なくとも無限遠に関して言えば意外にそうでもない。空気遠近法で遠景のコントラストが失われるとか、不可避な原因があるのかもしれない。いずれにせよ、遠景を撮りたい場合には拡大表示やピーキングしながらマニュアルフォーカスを使うはめになるのだが、スナップショットフォーカスでその苦労が軽減される。絞りをF5.6とかにして、距離指標を見ながらを無限遠にピントを合わせればいい。F5.6における被写界深度の後端が無限遠の位置になるように調節すると、無限遠被写界深度に入れつつもできるだけ手前にも被写界深度を伸ばすパンフォーカスが実現する。遠景だけが重要であればピントの中心を少し無限遠側に寄せればよい。簡単かつ確実にパンフォーカスが実現できて、失敗がないというのが素晴らしい。

暗すぎてオートフォーカスが働かないときにもスナップショットフォーカスが活躍する。先日、夜に羽田空港の展望テラスに行った時がまさにそうで、1mにピントを合わせてから目測で子供と1mの距離をとって撮影していた。夜だと開放絞りにせざるを得ないのでピント合わせがシビアになるし、距離の目測はなかなか難しいのだが、こんな暗闇でもなんとかそれっぽい写真が撮れるだけでありがたい。

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絞りのスイートスポット

上述のレビューの解像度グラフを見てわかるように、F4からF5.6のあたりで解像度が最高になる。それより絞ると小絞りぼけで解像度が低下しはじめるので、パンフォーカスで風景を撮る場合でもF5.6より絞らない方がいい。実際のところ、F5.6でパンフォーカスにすると、だいたい4mくらいから無限遠までが被写界深度に入るので、それより絞る必要はないことが多い。ピント面の画質よりパンフォーカス性を追求したい時はF8まで絞ってもいいけど、そこまでかな。

個人的には、F5.6の後端の目盛りを無限遠ぴったりに合わせた上で、実際にはF6.3に設定することが多い。そうすると、余裕を持って無限遠被写界深度後端に入れつつ、前端を3m近くまで持ってくることができる。ピントの中心を完全に無限遠に合わせない方が奥行き感が出るので好きだ。

逆に近くにピントを合わせて背景をぼかすような写真も撮れる。その際には絞りを開けることになるが、開けすぎるとやはり解像度が下がるので、F2.8くらいにするといいっぽい。F2.8未満だと、MZ25mmと同様に、軸上色収差が目につくことがあるので注意すべきである。個人的には、わざわざ広角レンズを使っているのだから背景もボケつつも視認できる状態で収めたいことが多いので、F2.8で十分なことが多い。近くといっても、このレンズは最短撮影距離が20cmほどなので、マクロ的に使うのは苦手。マクロコンバータ(E-M10の予約キャンペーンで貰った)をつける手もあるけど。

話を戻すと、F2.8からF5.6の絞りにしていると、このレンズもMZ25mmと並んで解像する写真が撮れる。特にF5.6パンフォーカスで風景撮りをすると快適である。パンフォーカス的な写真はより焦点距離の長い25mmでは撮りにくいので、17mmの便利さが引き立つ。一方、近くを撮るときは、F2.8くらいにしてAF(+タッチシャッター)でパシャパシャ撮るのが快適である。近くを撮っても背景がほどほどに入るし、ほどほどにボケるので、スナップ写真には最適だ。

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フード

専用フードが別売りで、6000円もするそうな。調べたところ、エツミのインナーメタルフード46mmというのが使えて、ケラレもないらしい。こちらもAmazonで3000程度と安くはないが、専用フードよりもコンパクトでつけっぱなしでも邪魔にならないので購入。つけてみるとなかなか格好いい感じがしなくもない。キャップをつける部分に37mmのフィルタも付けられるので、ついでにCPLフィルタも買った。なお、MZ25mmでも同じフードが使えて、ケラレもない。ついでに言うと、37mmのフィルタはキットレンズにそのままつけられるので、お得である。

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まとめ

M.Zuiko 17mm F1.8を買ったのは正解であった。画角的にしっくりくるし、機能も画質も十分だ。M.Zuiko 25mm F1.8と合わせると、自分のニーズの95%は満足する。スナップショットフォーカスが意外に使える。ただ、実売40000円って高いよね。

追記:気に入っていた本レンズだが、紛失してしまったので、Leica Summilux 15mm F1.8に買い換えた。そちらも使いやすいレンズである。レビューはこちら