豪鬼メモ

一瞬千撃

M43広角レンズの比較検討

世田谷公園で広角短焦点レンズM.Zuiko 17mm F1.8を紛失し、西郷山公園でパンケーキズームレンズ14-42mm F3.5-5.6 EZを破損して以来、広角の写真を撮るにはボディキャップ魚眼BCL Fisheye 9mm F8を使うしかないという状況に陥っている。面白いレンズなんだが、魚眼だしF8固定だし実質ゾーンフォーカスしかできないしExif記録されないしボディキャップ扱いだしという変態的なアイテムなので、これだけというのはさすがに辛い。春ももうすぐだということだし、マイクロフォーサーズ広角レンズの購入を検討しよう。
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日常使いで便利なのは換算35mm付近の画角なので、2倍クロップのM43機で使うなら、実焦点距離17.5mm付近の単焦点レンズか、その焦点距離をカバーするズームレンズならば要求を満たす。その中で、よく写って小さくて安いものを探すことになる。候補として上がるのは、以下のものである。

  • M.Zuiko 17mm F1.8の再購入
  • M.Zuiko 14-42mm F3.5-5.6 EZの再購入
  • M.Zuiko 12mm F2
  • M.Zuiko 12-40mm F2.8
  • M.Zuiko 12-100mm F4
  • M.Zuiko 9-18mm F4


それぞれの写りがどうか把握すべく、Photozoneのレビューを見てみる。画面中央と端と四隅の解像度がLW/PHでまとめられていて見やすい。LW/PH(Line Width per Picture Height)はざっくり言うと画面垂直方向に何本線を引いた模様が視認できるかということなので、センサーの縦解像度で頭打ちになる。以下の表は16MPセンサーでの結果なので、画素の並びが4608*3456だとすると、3456くらいが上限値になるのかな。引ける線の本数で考えるならその半分が上限値になりそうなものだが、テレビの走査線の用語らしいので白線と黒線を両方数えるのだろう。

レンズ 中央 四隅 色収差
M.Zuiko 75mm F1.8 3150 2927 2789 0.16
M.Zuiko 25mm F1.8 2918 2407 2485 1.14
M.Zuiko 17mm F1.8 2832 2237 2134 1.87
M.Zuiko 12-40mm F2.8 (12mm) 3018 2621 2444 0.72
M.Zuiko 12-40mm F2.8 (25mm) 3039 2846 2655 0.38
M.Zuiko 12-100mm F4 (12mm) 2970 2378 2286 0.26
M.Zuiko 12-100mm F4 (25mm) 2901 2550 2433 0.22
M.Zuiko 14-42mm F3.5-5.6 EZ (14mm) 2573 2016 1748 1.11
M.Zuiko 14-42mm F3.5-5.6 EZ (25mm) 2475 2343 2386 0.63
BCL Fisheye 9mm F8 2559 2187 1000 2.16

参考までにM43最高のレンズと言われるMZ75を最初に載せたが、3150LW/PHという解像力は上限値に迫っているし、色収差が0.16ピクセルとほとんどないのもすごい。それに比べるとMZ25はだいぶ遅れをとっていて、MZ17はそこからさらに落ちる。MZ17は色収差も1.87とかなり悪い。単焦点なんだからもっと頑張れと言われてしまうのも仕方ない。便利だったけど、再購入はないかな。

それに比べると、MZ12-40はズームレンズなのに3018 LW/PHという解像力があって素晴らしい。ズームなのに単焦点レンズ以上に解像するのだ。MZ12-100も8.3倍の高倍率ズームでありながら同等の解像力を維持しつつ、色収差も低く抑えられている。双方とも大きいし重いし値段が高いという欠点はあるが、それだけつけていればレンズ交換不要になる便利さと写りを備えているのは魅力的だ。特に、現状でMZ25とMZ45を所持している私としては、MZ12-100が欲しくなる。25mmの半分以下の12mmから、45mmの2倍以上の100mmまで撮れることになるわけで、それ一本で旅行での風景写真にも子供達の運動会にも対応できるようになる。普段使いで家族の表情を主題にして背景をぼかして撮りたい時はF1.8であるMZ25とMZ45を切り替えて使えばよく、F4であるMZ12-100との住み分けも明確でよい。ただ問題は価格だ。実売価格125000円て、カメラ本体よりだいぶ高い。

17mm付近をカバーしているというだけなら安価なMZ14-42を再購入するという手もあるが、中央2573LW/PHの端2343LW/PHて解像力は、BCL0980にすら負けていることがわかってしまった。というかBCL0980がかなり健闘していて驚いた。四隅の解像力は終わっているけど、魚眼の四隅に注視することはないので全く問題ない。わざわざレンズを買い足すなら、ボディキャップよりは段違いに良い描写をしてくれないと。
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他の候補のレビューは残念ながら12MPセンサーでの測定値を掲載しているので、4000*3000の画素配置とすると3000が上限になって直接の比較ができない。ローパスフィルタが付いているセンサーだとすると上限値はもっと低くなるだろう。なので、MZ25よりも解像するとされているMZ45ですら2313 LW/PHしか出せていないのも仕方ない。

レンズ 中央 四隅 色収差
M.Zuiko 45mm F1.8 2313 2147 2023 0.36
M.Zuiko 12mm F2 2499 2058 2050 0.57
M.Zuiko 9-18mm F4 (9mm) 2434 2109 1984 0.71
M.Zuiko 9-18mm F4 (12mm) 2409 2130 1966 0.63
M.Zuiko 9-18mm F4 (18mm) 2335 1889 1810 0.49

ここでわかることもいくつかある。MZ12の中央はとてもよく解像し、神レンズと言われるMZ45を凌駕している。ただし周辺はやや劣る。MZ12は他のレビューを見てもかなり評判が良いし、筐体がコンパクトで格好良いので、ちょっと欲しい。ただ、換算24mmて画角は普段使いにはちょっと広すぎるので、できれば14mmか17mmくらいの同等のレンズがあればいいなあと思うのだが、無い物ねだりである。MZ12は実売価格が64000円くらいとこれまたなかなか高い。

MZ9-18もかなり見所がある。換算18mmから換算36mmという、超広角から普段使いの領域までカバーする便利ズームでありつつ、中央は他のレンズと遜色ない写りをするっぽい。中央は解像するけど端と四隅はかなり落ちるというのは弱点だが、これは設計上の割り切りだろう。このコンパクトな筐体で超広角ズームを実現しているのは、M43規格ならではの製品だと思う。実売49000円というのも魅力だ。


MZ12やMZ9-18は色収差が比較的大きいレンズだという評判なのだが、上記の表では低く抑えられていることになっている。後処理で補正された画像での計測結果なのか、測定に使ったセンサーの問題でうまく色収差が検出できなかったのか、それとも他の原因なのか。例えばfourthirds-userで拾って来たMZ9-18のRAWファイルを開いてみると、やっぱり顕著な色収差が見られる。画面端近くになると赤や青のかなりひどい色ズレが見られ、同じく色収差で評判の悪いMZ17よりもひどい気がする。
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だだし、倍率色収差に関してはLightroomなどの補正機能でほとんど視認できないくらいに除去することができるので問題ない。よーく見ると色収差の痕跡が感じられはするのだが、そういう病的な反応を捨てて大らかに生きたいものだ。
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Photography BLOGやらImaging ResouceやらLensTipやらMirrorlessonsやらでのレビューを見ても、解像力や色収差について上述の数値から読み取れることと概ね一致している見解が述べられている。ここまでの検討によって、3つの選択肢に絞られた。

  • 125000円でMZ12-100を買って、それだけで過ごす。5年以上は他のレンズは買わない。
  • 64000円でMZ12を買ってしばらく過ごし、適宜17mm付近の単焦点も検討する。
  • 49000円でMZ9-18を買ってしばらく過ごし。適宜高解像の単焦点も検討する。

私の価値観と経済状況からすると、カメラ関係につぎ込んでいいのは年間で10万円くらいだろうか。20万円とかになると罪悪案を感じてしまう。レビューを見て回るのは好きだが、実際には買わないのだ。機材もほしいけど、それより遊びと食事と旅行と教育に金を使いたい。なので、限られた予算で満足度を最大化すべく、戦略的に買い物をすることが重要となる。

MZ12-100を買えば、画角や写りに関しての欲求はほぼ完全に充足し、他のレンズを買う必要はなくなる。もうレビューを見て回る必要もなくなる。しかし、この選択をすると、M43規格にベンダーロックされることになるのがちょっと気に食わない。レンズの性能が良くなりすぎると今のE-M10の16MPセンサーでは物足りなくなるから、カメラも欲しくなるだろう。でもそこで選べるカメラはオリンパス機だけだ。あと、レンズがでかくて重くて高価なので、いままでみたいに子供とアスレチックコースに登りながら撮るみたいなことはできなくなる。そういう場合はMZ25をつけることなるだろうが、じゃあ外したMZ12-100はどこに置くんだという話になる。ポッケに入る大きさじゃないから、カメラバッグかリュックを持って行動せねばならない。

その点、MZ12やMZ9-18は、ポッケに入る大きさなのがいい。カメラにはMZ25やMZ45をつけておいて、ポッケには広角レンズを忍ばせておく。そのまま木に登って、上で付け替えることもできる。MZ12の場合、写りには満足するが、画角で不満が出て他のレンズを買い足したくなるかもしれない。MZ9-18の場合、画角には満足するが、写りに不満が出て他のレンズを買い足したくなるかもしれない。いずれを買ってもまだ他のレンズを買う余力があるので、選ぶ苦労と楽しさはまだ続くことになる。あるいは、ある時点でEマウントなどの規格に移ることも現実的な選択肢として残せる。

悩ましい。レンズに125000円出すならばその後のカメラへの追加投資を踏まえてE-M5の後継機が買うに値するか見てからにしたい気もするが、そうすると下の子の入学式が終わってしまう。MZ12かMZ9-18で様子を見るのが無難ではあるが、後でいいカメラが出た時に後悔する気も。うーむ。君ならどうする?

OLYMPUS 超広角ズームレンズ M.ZUIKO DIGITAL ED 9-18mm F4.0-5.6

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