豪鬼メモ

一瞬千撃

PLフィルタ

快晴の日が続いたのでPLフィルタを持ち出してみた。
f:id:fridaynight:20151128112753j:plain


調べてみると、PLフィルタの仕組みは大変面白い。電圧をかけた液晶の如く一定方向に規則正しく並んだ結晶構造により、特定方向に振動する光を遮断する。ところで、太陽光はランダムな方向に振動する光だが、青空の散乱光およびガラスや水面の反射光は一定方向に振動する偏光になる。そこで、PLフィルタの結晶構造を偏光と垂直になるように置くと、偏光のみが遮断されるようになる。結果的に、青空の散乱光やガラス等の反射光が消えて、あたかも空気や水がなくなってしまったかのような鮮やかな絵が出てくる(ことがある)。
f:id:fridaynight:20141006125641j:plain
f:id:fridaynight:20140914125320j:plain

青空の散乱光が偏光になる仕組みもかなり面白い。空が青い理由であるレイリー散乱の特性による。もしも地球に大気がなかったら、月面の風景のように昼でも空は真っ暗で、太陽だけが煌々と輝くだろう。しかし実際には大気が散乱光を出すので、太陽以外の方向も空色に明るい。太陽光が大気中の酸素分子や窒素分子に当たると、その光は吸収されつつも、当たった分子の電子を光の進行方向に振動させるらしい。その結果、元の光と垂直の方向に散乱光が発せられる。光は横波なので進行方向には発せられず、散乱光は垂直方向に近いほど強くなる。そして散乱光は元の光の進行方向にのみ振動する偏光になる。よって、太陽から90度の方向の空は最も偏光成分が多いということになり、PLフィルタの効果が高くなる。逆に言えば、太陽に面した逆光や太陽を背にした巡行ではPLフィルタの効果は薄い。さらに広角レンズだと、同じ画面の中で偏光除去が利きやすい部分と利きにくい部分が出てきて、空に色むらがでてくる。また、雲や曇り空の白さは、水滴などの光の波長より大きい分子によるミー散乱によるもので、その散乱光には偏光が少ないので、やはりPLフィルタの効果は薄い。使い所がなかなか難しいフィルタだ。
f:id:fridaynight:20141006125611j:plain

とはいえ、偏光のウンチクが頭の片隅にあると、青空を見ればPLフィルタを持ち出したくなるではないか。さて、多摩川公園を歩いていたら見晴らしスポットからいい感じの富士山が見えたのでパチリ。しかし、肉眼では見えるのに、写真に撮ると富士山がほとんど見えない。
f:id:fridaynight:20151128114231j:plain

うまいことに富士山は太陽から90度くらい方向にあった。そっとPLフィルタを取り出し、レンズの前に装着する。フィルタを回転させていくと、霞のなかから富士山が見えてきた。周りの木々の緑もより鮮やかな色合いになった。同じ風景を同じ時刻に撮ったとは思えないほど違うね。
f:id:fridaynight:20151128114241j:plain

PLフィルタの製品説明に、「コントラストが上がる」などと書いてあることがあるのだが、それは分かりやすさを優先して正確さを欠いている。明るいものに偏光成分が乗っている場合、それを除去するとむしろコントラストが下がるからだ。しかしそれによって全体のダイナミックレンジが小さくなってカメラのダイナミックレンジに収まるようになるので、主要被写体の視認性が上がるというのが実際のところだろう。葉っぱの反射光を除去する場合がその好例である。
f:id:fridaynight:20151128175314j:plain
f:id:fridaynight:20151128175326j:plain

PLフィルタを使うと「空がより青くなる」という表現も、あまり正確でないと思う。実際には空が暗くなるのだ。明度が高い空に対して使うと結果的に彩度が上がって青さが増したように見えることが多いが、すべての場合で鮮やかさが増すというわけではない。この例でわかるように、前景の被写体の明るさを保ちつつ、空だけを暗くすることができる。
f:id:fridaynight:20151128174652j:plain
f:id:fridaynight:20151128174706j:plain

空の明るさはそのままに、前景を明るくすることもできる。Aモードで絞りF5.6に固定して撮ったが、偏光を遮らない場合の露光時間は1/800秒であり、偏光を遮ると1/200秒に伸びた。結果として前景の岩礁からの光を4倍も取り込むことができたわけだ。
f:id:fridaynight:20151127112203j:plain
f:id:fridaynight:20151127112243j:plain

空や水面に対するドラマチックな効果を狙うのもいいが、植物などの表面のテカリをとって本来の色を引き出すのが面白いかなと。この例の赤い実は、PLフィルタがないとテカっちゃってこんなに赤く映らない。主要被写体がテカってたらPLフィルタのことを思い出すくらいでいいのかな。この例でもそうだが、テカリも立体感の一助なので偏光を完全に除去すると立体感が失われてしまう。なので、色出しと立体感の両立ができる程度にPLフィルタを回して効き具合を調整すべきなのだろう。
f:id:fridaynight:20151128132904j:plain

以前にも触れたが、M.Zuiko 17mm F1.8とM.Zuiko 25mm F1.8にエツミのメタルインナーフード46mmをつけると、フード前面に37mm径のフィルタがつけられて便利である。PLフィルタは手で回して結晶構造の向きを調整する必要があるため、この組み合わせは最適である。普通の襟巻き型のフードだとフィルタを回転させるのが大変である。そして37mm径のフィルタはインナーフードをつけない状態のM.Zuiko 45mm F1.8やM.Zuiko 14-42mm F3.5-5.6 EZにも使えるのでお得だ。フードの前にフィルタをつけるとフードの効果が減少するはずだが、太陽から90度近く離れた被写体を狙う場合にフードはあまり必要ないので大丈夫。
f:id:fridaynight:20151128160137j:plain

PLフィルタが偏光を遮断した結果として、遮断されなかった透過光は偏光になるという特性があるのだが、そうするとカメラ側のセンサーが誤作動することがあるそうで、その対策を施したCPLフィルターという製品を買うべきらしい。私はMarumiのCPL37mmという製品を買った。このフィルタは妙に青っぽい色をしているのだが、撮った写真が青っぽくなっているのではないかとちょっと気になる。Hakubaのやつとかはそんなに青っぽくないので、比較すれば特徴がわかるのかもしれん。

あと、E-M10は最高SSが1/4000しか出ないので、日中にF1.8で撮れないことがあり、そういう場合にはPLフィルタをNDフィルタ代わりに使うこともある。快晴の時はPLフィルタをポッケに入れておくと便利だ。だからっていい写真が撮れるってわけじゃないけどね。

Remove all ads