豪鬼メモ

一瞬千撃

意外に楽しい魚眼レンズ

電器屋の期限切れになりそうなポイントが8000円分余っていたので、1000円ほど足してオリンパスのフィッシュアイボディーキャップレンズBCL-0980を買ってみた。魚眼レンズであり、かつパンケーキレンズよりも薄いボディキャップとして売られているものだ。やたら小さい割には意外によく写り、そして予想外に楽しいレンズである。

左が今回のBCL-0980で、カメラにつけているのがM.Zuiko 17mmで、右が魚眼でないボディキャップレンズのBCL-1580。
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BCL-0980をカメラに装着するとこんな感じ。まさにボディキャップ。
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このレンズではオートフォーカスが使えず、ちっこいレバーを使ったマニュアルフォーカスをしなければいけないのだが、基本的にはパンフォーカスの位置に合わせておくとほとんどフォーカスのことを考えなくていい。主要被写体が1m以上離れているようならとりあえずパンフォーカスでOK。フォーカスピーキングを使って微調整するよりもパンフォーカスの方が確実である。それで適当に撮っても意外によく写るから驚く。最近接でレバーが止まる他に、パンフォーカスと無限遠の位置で若干のクリック感があり、それらの設定が簡単にできるようになっている。
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最近接で20cmまで寄れる。近接だとピント合わせが難しいが、ピントがちゃんと合わせられればちゃんと解像した写真が撮れる。
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近めの被写体に厳密にピントを合わせるのは難しい。近接側にレバーを持ってくるとたいていこんな風に前ピンになってしまうのだ。1mくらいのところにもクリックがあればいいのだが、ないので、勘でやるしかない。そしてだいたい失敗する。ポートレート的な距離にはあまり向いていない。
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もし人の顔を最近接で撮ると、直観よりかなり寄らないといけない。そして写りはこんな感じになる。逆に言えば、この顔が撮りたいのでなければ、最近接にレバーを合わせるべきではない。
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パンフォーカス設定で人を撮る場合、3mか4mくらいの距離で撮ると失敗が少ない。この例だと1mくらいなので、ちょっと後ピン気味かな。
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パンフォーカスや無限遠に合わせて街中をパシャパシャ撮り歩くのがこのレンズの醍醐味であろう。消失点が同時にいくつも感じられるのが新鮮である。まあ、撮っている本人は面白くても、他人が見たら単に歪んだ不気味な写真を量産しているだけかもしれないが。
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水平線や道路などの目立つ直線が画面中心付近を通るようにすると、歪みが目立たなくなるというのが魚眼を使う上でのコツらしい。逆に歪曲を生かした写真を撮るには直線を画面端に持ってくることになる。
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巨大な建物を近くから見上げて撮ると、なんか広々して自己満足感が高い。
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ちなみに同じ撮影位置からMZ17mmで取るとこんな感じで、ちょいと迫力が足りない。
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階段とかも下から撮ると、高さが強調されてよい。見知らぬおじさんがエンヤの如し。
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この構図は、あんまり面白くないな。何が主役なのがわからんので。
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奥行きを強調するとこんな感じ。ワープしそう。
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解像感の違いを見るために、MZ17mm、BCL-1580、BCL-0980で同じ景色を撮って比べてみる。当然ながら、MZ17mmが最もよく解像している。それに比べてBCL-1580はダメダメだ。そしてBCL-0980は、BCL-1580に比べるとかなりマシだということがわかる。
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ビルの上から東京の街を展望してみる。窓ガラス越しなので解像感が落ちているし画面下方に映りこみもあるのだが、広々とした雰囲気は伝わるかな。
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頑張れば夜景も撮れる。F8と暗いレンズなんでブレないようにするのが大変なのだが、ガラスにカメラをくっつければ手持ちでもいける。焦点距離を入力しておけばE-M10のボディ内手振れ補正も効くし。
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手前に主要被写体を入れつつ巨大な背景を収めるというのが最もダイナミックな写真になると思うのだが、なかなかそういう構図を見つけるのが難しい。なにせ広角すぎて他人がめっちゃ写り込むのだ。「そこの奥さん、3秒でいいからどいてくれー」などとつい思ってしまうわけだが、そんなエゴイズムは口が裂けても言えないし。
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むしろ他人を積極的に前景に拝借するという試みもできよう。この例ではピント合わせに失敗ちゃったけども。
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やはり素直に風景を撮ってみた方が成功率が高い。秋の空は綺麗だなぁ。
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キャップのおまけでレンズがついてくるというコンセプトの製品の割には、よく写るし、いろいろ遊べて楽しい。画質の面では、色収差が目立つのが最大の欠点ではあるが、それなりに見られるという評価ができると思う。これは買ってよかった。魚眼なのに対角画角が180度ではなく140度(水平画角112度、垂直画角84度)なので、物足りないという人もいるだろうが、むしろその方が私のような初心者には使いやすい。180度もあったら指や足先が写り込みまくっちゃうし、窓ガラス越しの風景も撮れないからね。

魚眼レンズで撮った写真は被写体が激しく歪むので敬遠されがちなわけだが、それも立体から平面への射影法のひとつに過ぎないのだ。魚眼レンズによる写真を見た時の違和感って、正角図法であるメルカトル図法を見た後に正距方位図法とかその他の図法を見た時の違和感と似ている。要は慣れていないだけなのだ。どの射影法が優れているわけでもなく、目的や嗜好に合うかどうかの問題。逆に、魚眼の写真ばっかり見ていると、きっと普通の写真の方に違和感を感じるようになるのだろう。

被写界深度についてだが、理論的には、無限遠にピントを合わせても70cmくらいまでは被写界深度内に入るらしい。焦点距離が9mmでF値が8で許容錯乱円が0.015mmのレンズの過焦点距離は 9 + (9 * 9) / (8 * 0.015) = 684mm なので、68.4cmにピントを合わせれば被写界深度の後端に無限遠が入るはずだ。逆に過焦点距離にピントを合わせると被写界深度の後端にギリギリ無限遠が入るので、前方被写界深度を含めて考えると被写界深度が最大になる。よって、パンフォーカス撮影の際のピント位置は過焦点距離に置かれることが多い。となると、BCL0980のパンフォーカス設定のピント中心は、70cmくらいということになりそうだ。その場合、32cm以遠は深度内となる。しかし、実感としてはもう少し遠くにあるような気がする。ピント中心は少なくとも2m以上、3mか4mくらいなような気もする。このあたりは実写を比較してみないとなんとも言えないけど。ここは実感の方を信じて、仮にピント中心が3mとすると、50cm以遠が深度内となる。いずれにしても、やはりほとんどの場合でパンフォーカスでいけそうだ。主要被写体が10mより遠いような場合にはパンフォーカスと無限遠の間くらいに合わせた方が良い結果にはなりそうだ。逆に近接側はピント合わせが難しすぎるのであまり使わないだろう。